第二話 できない子の隣

「私さ、不器用なんだよね。」

智香が珍しく弱音を吐いた。

文化祭の展示で使う模型。

接着剤で指まで固めている。

潤は小さく笑った。

「貸して。やるよ」

三秒。

パーツがわずかに整う。

智香が目を丸くする。

「え!?今どうやったの!?」

「慣れ、かな…」

嘘ではない。

慣れてはいる。

能力に。

その帰り道。

智香がぽつりと言った。

「潤がいてよかった。」

胸が、静かに温かくなる。

三秒の力よりも。

こういう言葉のほうが、ずっと強い。

 

第三話 体育祭の風

体育祭当日。

智香はリレーの選手だった。

完璧な彼女が、珍しく緊張している。

バトンが渡る。

走り出す。

速い。

でも——

カーブでバランスを崩した。

転ぶ。

世界が遅くなる。

(三秒)

靴底をほんの少し前へ。

体勢が戻る。

智香はそのまま走り切った。

結果は二位。

悔しそうにしながらも笑っている。

「転ぶかと思った!」

潤は何も言わない。

でも思った。

この能力、誰かの笑顔を守るために使えるなら。

悪くない。

そのとき城が言った。

「お前、なんか持ってるよな」

ドキッとする。

だが城は笑った。

「幸運の女神タイプ。」

潤は初めて、少しだけ笑った。