第五話「セーブできないゲーム」

冬。

榊が言った。

「最近、健太を思い出せる時間が減ってる」

潤も頷く。

俺だけだ。

鮮明に覚えているのは。

つまり。

俺が最後の観測者。

白石が小さく言う。

「もし相沢くんが見えなくなったら、わたしは最初からいなかったことになる」

怖くなった。

俺は答える。

「ずっと見る。絶対忘れない」

白石が笑う。

安心した顔で。

そして言った。

「これで相沢くんも、本当の観測者だね」

その瞬間――気づく。

第一話。

出席を取ったときの“間”。

世界が止まったんじゃない。

観測者が俺に決まった瞬間だった。

帰り道。

夕焼け。

白石の影が、途中で途切れている。

俺は慌てて彼女を見る。

大丈夫。

まだいる。

だから目を逸らさない。

人生は、セーブできない。

やり直しもできない。

でも。

もしこの世界がゲームなら――

俺は観測し続ける。

白石琴乃が、消えないように。

たとえいつか。

次に消えるのが――

俺だったとしても。


【あとがき】

人は、見ているようで見ていない。

存在とは、誰かの記憶に残ることで初めて成立するのかもしれない。

あなたの隣にいる大切な人は、
ちゃんと観測できていますか?

それとも――もう、誰かを消してしまいましたか。