3人が息を切らして辿り着いたのは…あの広場だった。
そこで彼等が目にしたのは…
「…うそだろ?」
満開の桜の木。
それはあの焼け焦げてしまった、はなの桜の木だった。
「なんで桜が…」
もう10年以上も咲いていなかった桜の花が、今満開に…綺麗に咲き誇っていた。
その存在を、誰かに主張するように。
「はなっ!!はなーっ!!」
『相変わらず騒がしいぞ…雄輔。』
木の陰から、はなが姿を現した。
いつもと同じ、薄いピンクのワンピース姿で。
「お前…今まで何してたんだよっ。心配したんだぞっ!?」
『少し…眠っておった。…すまん。』
風が吹く度に、桜の花びらが宙を舞った。
『最後に見てほしかった…この桜が咲く姿を。』
「…はな?」
『3人のおかげで…いろんな事を知れた。…こんな変な人間もいるんだという事も。』
「何…言ってんだよ?」
『嬉しかった…3人に出逢えて・・・・。』
「……。」
『今度生まれてくる時は…人間になりたい。人間になって…3人と本当の友達になりたい。』
「友達だろっ!?人間じゃなくても…そんなの関係ねぇじゃんッ!!」
上地が怒鳴ると、はなは笑った。
その目からは…涙が零れ落ちた。
『つる兄…直樹…雄輔。・・・・・ありがとう。』
3人の耳に、鈍い音が聞こえた。
木の幹に、大きな亀裂が入っていた。
音は次第に大きくなっていく・・・。
「嫌だ…はなっ!!」
「雄ちゃん離れないと…っ」
「雄輔、危ないぞ…ッ」
ロープを潜っていこうとする上地を、2人は必死で止めた。
『3人に出逢えて…本当によかった。』
音の間隔が徐々に短くなり…もう限界だった。
『また…いつか・・・・ッ』
バキ……ッ!!
大きな音と共に、はなの大きな大きな桜の木は…土埃をたてて地面に倒れた。
「嫌だぁぁぁーッ!!!!」
しばらくすると、土埃が治まり視界が良くなった。
3人の目の前には、花を満開に咲かせた桜の木が横たわっていた…。
「…嘘だよな?なぁ…はな。」
話しかけてみても、返事は…無い。
上地はゆっくりと桜の木に近づきながら、語り続けた。
「海…まだ見せてねぇよ?写真、いっぱい見せるって約束したのに…」
「雄ちゃん…」
「他にもまだ…お前の知らねぇ事、たくさんあんのに・・・・」
「雄輔…」
木の幹に触れると…ひんやりと冷たかった。
この木に初めて触れた時に感じられたぬくもりが、そこには全く無かった…。
「なぁ…なんか言えよ・・・・ッ」
広場は静まり返っている…。
「はなぁぁぁー…ッ!!!!」
上地の頬を、涙が流れていった…。
東京への帰り道、車の中は静かだった。
3人はずっと、下を向いたまま黙っていた。
はなと一緒に、4人で携帯で撮った写真。
そこに写っていたはずのはなの姿が…消えていた。
まるで存在しなかったかのように。
不自然なスペースを残して…写真には、3人の笑顔だけが写っていた…。
-つづく-