車の所まで戻ると、3人はスタッフに怒られた。
「勝手に動かないで下さいよーっ;」
「ごめんなさい…;」
機材を車から降ろし、さっそく撮影の準備に取り掛かる。
「つる兄…あの子が言ってた事、ほんとかな?」
上地はずっと、あの少女の事が気になっていた。
「さぁな…ほら、仕事仕事っ。」
頭のどこかで気にしながらも、3人は撮影に入った。
「本日の撮影は終了でーすっ!!」
初日の撮影を終えて、宿泊先の建物へ向かった。
ホテル代わりの公民館。
公民館の近くには、あの桜の木がある広場があった。
すぐ近くを通ったが、少女の姿は見えなかった。
夜…出演者やスタッフらが全員が集って宴会が始まる。
皆で騒いで、お酒もすすむ。
「オイラちょっと…」
上地がトイレへと席を立った。
部屋を出ると廊下は静まり返っていて、少し肌寒い。
「ふぅ……ん?」
部屋に戻っている途中、窓の外をふと見ると…あの木が目に入った。
やっぱり気になって…上地は1人外に出た。
桜の木のすぐ側まで来て、上を見上げる。
「……。」
『何の用だ?人間。』
「ぉわっ!?;」
気配もなく、突然自分の背後から現れた少女に上地は驚いた。
(び…びっくりしたぁーっ;)
『何の用じゃと聞いている。』
「いや…別に・・・・」
『用が無いのなら帰れ。…二度と近寄るな。』
「…え?」
初めて会った時の印象とは違い、少女は冷たく言い放った。
『人間なんて…大嫌いだ・・・・ッ』
「…どうしてそんな事言うの?」
『……。』
少女は黙ったまま、桜の木の裏側へ回る。
そして悲しそうに…木の幹を触った。
『人間は…平気で自然を傷つける。…とくによそ者は。』
「どういうこと?」
よく分からないまま、上地も少女と同じように気の裏側へ回ってみた。
「!!」
そこにあったのは…ラクガキ。
桜の木の幹に、直接掘り込まれていた。
正面から見ただけでは分からなかったが、ラクガキはかなりの数だった。
「酷い…誰がこんな・・・・っ」
『…お前のようなよそ者が、記念だ思い出だと言って残していった。』
「……。」
どうやらここに来た、心無い観光客達の仕業らしい。
『人間は皆同じだ…だから、わしは人間なんて…ッ』
「…ごめんな?」
ラクガキされた木の幹を、上地は優しく撫でながら…申し訳なさそうに言った。
「痛かったよな?…ごめん。」
『…何故お前が謝る?』
「だって…同じ人間だから。」
自分がやった事ではないのに…上地は辛そうに謝っていた。
『…変な人間だな、お前は。』
人間が嫌いだと言った少女。
上地を警戒して、冷たい態度を取っていた少女が…初めて笑った。
少し、困ったような笑顔で…。
-つづく-