(書く技術)
・理想的な考えの構成は、常にピラミッドを形作る。つまり、頂上に大きな考えが一つあり、それを小さな考えのグループが下で支えるピラミッドである。
・自分自身で自分の考えを明らかにしようとするプロセスもやはりピラミッド型を辿る。つまり、書き手が自分の考えをピラミッド構造に組み立てようとする作業は、自分が何をどのように考えているかをはっきりと意識しようとする作業に他ならず、同時に、読み手にとって分かりやすい文章を書こうとするステップに他ならない。
・人の考えを聞いたり読んだりする時、一緒に現れる考えを一つずつ一塊にしながら、それらの塊に論理パターンの意味づけを行う。この思考パターンは、「頭の中の要求」を満たすものである。頭の中の要求には、2つあり、①マジックナンバー7でストップせよ、②関連付けの論理を明らかにせよ。
・①マジックナンバー7とは、人間の頭が短時間で一度に記憶しておける事柄はせいぜい7つまでだということである。例えば9つのものを覚えようとした際に、9つをバラバラに記憶することは難しい。9つのものの塊を4つ、3つ、2つに分けることで、3つのグループを記憶すれば良くなる。さらに、それぞれ3つのグループから、4つ、3つ、2つのものを思い出せば良くなるため、はるかに容易に記憶に残すことができるようになる。
・②関連付けの論理を明らかにする。最も分かりやすい順序とは、まず全体を要約する考えを述べ、その後に個々の考えを一つ一つ説明していくことである。
・適切な文書構成かどうかは、それぞれのメッセージの関係が正しいピラミッド型になっているかどうかでチェックする。チェックに必要となる3つの鉄則は、①どのレベルであれ、メッセージはその会グループ群を要約するものであること、②各グループ内のメッセージは、常に同じ種類のものであること、③各グループ内のメッセージは、常に論理的に順序づけられていること。(基本的には、論理的な並べ方には4つの方法しかない。演繹の順序、時間の順序、構造の順序、比較の順序。)
・単に紙に向かって自分の考えをピラミッド型に並べようとするだけでは不十分である。まず、自分の考えを発見することから始める必要がある。ピラミッドの厳格な構造フレームに従えば、この発見プロセスをスピードアップすることが可能である。このフレームとは、①主ポイントと補助ポイント間の縦の関係、②補助ポイント同士の横の関係、③導入部のストーリー展開。
・ピラミッドの縦の関係は、質疑応答で繋がっている。一段上の層の疑問を一段下の層のいくつかの根拠によって支えられる。そのため、人に伝える際は対話形式で答えの理由づけを行っていくことで、容易に読み手の興味を惹きつけることができる。
・ピラミッドの横の関係は、一段上の層の疑問に対して、単に答えるだけでなく、論理的に答えることが必要である。すなわち、帰納的論理か演繹的論理か、どちらかの方法を用いて論理的に答えなければならない。
・導入部のストーリー展開は、まず導入部に伝えようとするテーマについて読み手がすでに知っていること、または知っていると思われることをストーリー風に語り、そうすることで読み手の持っている疑問をもう一度思い起こさせて、本文の中にその答えが書かれているという期待を抱かせる。物語には、「状況」が設定され、その中で「複雑化」が発生し、それが「疑問」を呼び起こし、あなたの文書がそれに「答え」を与える。
・トップダウン型アプローチは、以下の手順で進めていく。
①箱を一つ描く(これは、あなたのピラミッドの頂上にある主題である)
②「疑問」を書く(主題に対する読み手の疑問を想像する)
③「答え」を書く
④「状況」を明確にする(「主題」に沿って「状況」について記述する)
⑤「複雑化」へと発展させる(「状況」の中から読み手に疑問を抱かせるような状況の変化を記述する)
⑥「疑問」と「答え」を再チェックする
・ボトムアップ型のアプローチは、次の3つのステップに従って考えをまとめる。
①あなたが言いたいポイントを全てリストアップする
②それらのポイント同士にどんな関係があるか考える
③そこで結論を導く
・初心者への注意。
①まず、トップダウン型に考えを構成するところから始める。
②導入部を考える際には、「状況」をそのスタートポイントとして利用する。
③導入部を考えることを省略してはいけない。
④過去の出来事は常に導入部に書く。
⑤導入部の技術は、読み手が合意する事項に限定する。
⑥もし選べるのであれば、キーライン・レベルでは演繹法よりも帰納法を用いる。
・導入部はストーリー形式にする。読み手の雑念を追い払い、あなたの伝えようとすることに集中しやすくするための仕掛けとして、結論のない物語(ストーリー)にする必要がある。
・「状況」は、まず主題に関する記述から始める。すでに一般的に受け入れられている知識を説明することから始めるのが良い。
・「複雑化」とは、「問題」である。
・「状況、複雑化、解決」という構成は導入部に不可欠であるが、順序はその時に伝えたいトーンに合わせて変更することができる。
・導入部は2つか3つの段落で十分である。
・良い導入部を書くための理論。①導入部とは、知識を与えるためのものではなく、思い起こさせるためのものである、②導入部にはストーリーの3要素を常に含ませる、③導入部の長さは読み手の必要性と文書のテーマによる。
・良い導入句とは、単に読み手の関心を呼び覚まし集中させるだけはない。読み手の状況認識に影響を与えるのである。
・演繹的理由づけは、通常、三段論法の形で表現される。これは2つの前提(大前提と小前提)から結論が導かれる論証形式である。
・帰納的理由づけには、二つの重要な技術を習得する必要がある。①グループ化した考えを定義づける技術、②その中で不釣り合いなものを見極める技術。
(考える技術)
・文章を書き始めた際に陥りやすい間違いは二つあり、①関連性の薄いポイントを単に似ているというだけの理由づけで、そのまま箇条書きにしてしまう、②箇条書きの冒頭をあまり意味のない文章でくくってしまう。
・それぞれの箇条書きのグループが実際に関連性のあるロジックに基づいてグループ化されていることを確認し、次に、そのロジックの関連性が何を意味するのかを具体的に述べることで①、②の間違いは改善される。
・同じグループ内に配置した考えの正しい順序に並べる方法は3つあり、①プロセスやシステムを表すステップのグループは、常に「時間の順序」に従う、②全体を部分に分けたグループは、「構造の順序」に従う、③類似のもので分類したグループは、「度合いの順序」に従う。
・自分の考えを整理し、わかりやすく表現するためのテクニックは、①それぞれの行動をできる限り「具体的な」言葉で表現する、②グループ化を、「明白な」因果関係で構成する、③結果の記述は、一連の行動から「直接」得られるものを書く。
・①行動の考えを書く際には、実際に行動する自分自身の姿をイメージ化し、行動が完了した時点で得られる最終結果または得られるものが何であるかという観点に立ち、行動ステップを言葉に置き換える。これが自分の考えをクリアにする一番簡単な方法である。
(問題解決の技術)
・現在の結果と期待していたことを明確にすることで、その間にあるギャップ(問題)を定義することができる。つまり、問題を定義するために、3つの質問に答える必要がある。①今何が起きているのか?②今の何が好ましくないのか?③代わりに何を望んでいるのか?
・次に問題を分析するにあたって、データ収集から始めるという習慣は非効率的である。問題を分析する最も良い方法は、①いくつか仮説を設定する。②誤った仮説を捨て、正しい仮説を選定できるように、仮説の実験装置を考案する。③仮説を証明する明確な結果が得られるまで実験を繰り返す。④証明された仮説に基づき望ましい行動を提案する。
・問題の裏付けとなるような理由を探すためには、適切なフレームワークを実施する必要がある。1つ目の方法は、起こりうる問題原因をイメージ化する。2つ目の方法は、特定の結果から因果関係の要素や活動を辿る。3つ目の方法は、有りうべき問題原因を類似性で図式化する。
(表現の技術)
・長い文章になると、主だったグループの初めが終わりで定期的に休憩場所を設け、今どこにいるのか、次にどこへ行こうとしているのかを読み手がわかるようにしなければならない。これは、2つの章の「構成」を関連づけたいのではなく、2つの章の「伝える中身」を関連付けたい。そのためには章の終わりにその章の要約をしておくとわかりやすい。その要約の内容は、「状況→複雑化→疑問」のストーリーを作り、章の冒頭で示した疑問に答える形でまとめるのが良い。
・結論の要約自体は、それほど難しい作業ではないが、全く同じ表現を繰り返すことはしない方が良い。
・頭にある考えの関係を、あえて目に見えるように描いてみること、これこそがわかりやすい表現をするための秘訣である。