・「考えない」というのは、自然天然の状態ではなく、実は、不自由なことではないだろうか。「思っていることが書けない、苦しい」と、自分から訴えてくる生徒はまだいい。その痛みには可能性が感じられる。だが、大きな葛藤もなく字数を埋め、その人自身が反映されていない文章に出会うとき、こちまでなんとも言えない不自由な気持ちになる。
・ちょっとした方法を知らないだけで、自分の本心と、自分の書くものが離れてしまい、人から誤解されたり、摩擦が生じたり、と言うことは、私たちが思っている以上に多いのではないだろうか?自分以上にいいものを書く必要はない。しかし、自分以下になってはいけない。だからこそ、書くために必要なのは、「考える」ことだ。
・いくつかのストーリー構造を試して、どれが最も明確で説得力があるかを試してほしい。受け入れ難い結論や難しい聴衆には、答えを段階的に明らかにする意思決定ツリー形式が有効な場合もある。
・もし、常に文章が苦手だと逃げている人がいたら、自分に、曖昧、且つ美しい理想を抱いていないだろうか?結果をイメージし、現実の中で、まず結果を出すことを念頭に置いてみよう。やることは、ずいぶん明確になる。
・文章の7つの要件を押さえる。
①意見、あなたが1番言いたいことは何か?
②望む結果、誰が、どうなることを目指すのか?
③論点、あなたの問題意識はどこに向かっているか?
④読み手、読み手はどんな人か?
⑤自分の立場、相手から見たとき、自分はどんな立場にいるか?
⑥論拠、相手が納得する根拠があるか?
⑦根本思想、あなたの根本にある思いは何か?
・機能文とは、自分が言いたいことをはっきりさせ、その根拠を示して、読み手の納得・共感を得る文章のこと。
・意見とは、自分が考えてきた「問い」に対して、自分が出した「答え」である。
・意見が明確に打ち出せていない文章は、読み手に負担をかけてしまう。
・学問も、問題解決も、「問い」の発見から始まる。しかし、「問い」を立てているのに、考えが行き詰まってしまうことがある。そのような場合は、「過去→現在→未来へと流れる時間軸」に視野を広げる、又は「自分→身の回り→日本社会→世界へ広がる空間軸」に視野を広げる方法がある。
・自分が書いたもので、読み手にどういう価値を提供したいか、読み手や状況がどうなっていくことを望むのかを明確にイメージできる方法として、自分が書いた文章を読み終えた時、読み手に、どういってもらいたいか、その言葉で結果をイメージする。このような反応をイメージして書き始めるだけで、仕事の指示書は、コミュニケーション性を強く帯びてくる。
・あなたが書きたいことで、あなたにしか書けないことで、結果的に人に喜んでもらえるというところから逸れないように、文章のゴールを設定していくといいのではないだろうか。

(論点)
lesson1 論点とは何か?
・「論点とは」とは、文章を貫く問いである。
・機能する文章を書くためには、自分と読み手の問題関心から外れない論点を設定する事が必要である。もちろん、書き手が書きたいことに、読み手が関心を持てなかったり、逆に読み手が求めていることに、書き手は興味を持てなかったりと、論点を定めるのは難しい。しかし、だからこそ、自分の関心ごとをいかに、相手に興味ある切り口で書けるか。相手の関心事をキャッチしつつ、それを、如何に自分の興味ある問いに発展させられるか、腕の見せ所だ。
lesson2 テーマと論点は違う
・「男性ファッション」がテーマであり、「なぜ、日本男子はカジュアルが下手なのか?」が論点である。「住まい」がテーマであり、「東京23区に家を建てられますか?」が論点である。論点を設定した方が、読み手にとって具体的なイメージが湧き、興味をそそるものになっているのは明らかである。
lesson3 論点の二つの原則
①論点と意見は呼応する。論点と意見は、問いと答えの関係にある。意見の裏には、それを導き出した「問い」、つまり論点がある。
②論点は「問い」の形にする。論点を疑問形にするだけで、文の方向性がぐっと絞られる。
lesson4 論点の集め方・絞り方・決め方
・論点の候補を探す3つのエリア。第1に、読み手が何を求めているかということ。第2に、テーマが何かということ。第3に、それらに対して自分に何が書けるかということ。

・同僚、上司、後輩に同じことを書いても、結果が違うということは、三者に同じ結果を出すためには、相手に応じて書き分けをしなければいけないということである。相手を知るためには、良い問いを立てることである。あなたがこれから書くことは、相手にわかるか?相手が興味を持てる内容か?相手にこれを読むどんな意味やメリットがあるか?相手はどんな人か?相手は今、どんな状況か?これを読んで相手はどんな気持ちになるか?というように、これらの答えを掴むには、想像力を働かせる、調べる、直接相手に聞く、という方法がある。
・「論拠」が正しいことと、それを論拠にした「意見」が正しいかどうかは、全く別の問題だ。極端な例として、『母なる自然をなんとしても守らなければなりません。だから人間は地球上から消えるべきです。』多くの問題は、正しいことが正しいと分かっていても、どうしようもなく起きてしまう。問題はその先、つまり「なぜ?地球環境保護が大切とわかっている人間たちが環境を破壊せざるを得ないのか?」ということから始まっている。だから、正論を押し付けても意味がないのだ。
・自分の実感、引っ掛かりを洗い出す。引っ掛かりを洗い出すために、問題を多角的に見る。①自分の体験、見聞を洗い出す。②必要な基礎知識を調べる。③具体例事例を見る。④別の立場から見る。⑤海外と比較してみる。⑥歴史をおさえる。⑦スペシャリストの視点を知る。引っ掛かりを掴んだら、一言で自分の思いを要約する。要約することで、根本思想と自分と周りの関係性がわかる。ここまでくれば、根本思想と一致した本物の文章を自信を持って書くことができるようになる。

(上司を説得する)
・文章を書く際は、①結果をイメージする、②論点を決める、③意見をはっきりさせる、④論拠を用意する、⑤アウトラインを作る。までのステップで、文章を書く。
・文章を書いた際は、①相手はこれを読んでどう思うか?②一番言いたいことは何か?③的確な論点が立てられているか?をチェックする。
・相手を説得する場合は、一方的な文章を書いても相手を説得できない。相手を説得する文章を書いた際は、①自分の立てた論に自分で反論してみる、②対立する相手の「論拠」を押さえる。この二つを実施する。

(お願いの文章を書く)
・依頼文の構成。挨拶、自己紹介、志、依頼内容、依頼理由、条件、返事を伺う方法、締めの言葉等。
・入り口の自己紹介で、自分が信頼されなければ、後の文章は読んでもらえないことさえあるため、自己紹介には細心の注意を払う。
・依頼理由に、自分の都合ばかり並べたり、誰でも良いというような書き方をした場合、相手のやる気をなくさせてしまう。やる気を引き出す方法としては、志に共感してもらうことや面白いと感じてもらうこと、相手がやる必然性があることを訴えることが良い。
・依頼する際は、あなたと、相手と、組織と、顧客、それらの関係の中で、今、依頼をしている「私」は何者か?というあなたの立場を発見し、バランスを考えて使い分けることで熱意が伝わり、信頼を得ることができる。

(議事録を書く)
・議題を「問い」の形にして頭に大きくはっきり書く。
・その会議の、一つ前と、一つ後の展開を書いておくと議事録としては、より役に立つものになる。
・議題の「問い」にたいして、どうする会議なのかという点も書いておく。
・今後の課題は疑問文で書く。

(志望理由を書く)
・相手と自分を連結する「キー」を見つける。これが。志望理由書の1番のポイントである。大学の場合は、「学部・学科」がキーになる。会社の場合は、「分野」×「業種or職種」がキーになる。
・自分のキーを割り出したら、志望理由を固める質問に回答する(本書参照)。まだやったことがないことに対して志望理由を書くことは難しいことではあるが、志望理由を固める質問に自問自答することで、ちょっとでも具体的に、実感を持って志望理由を語ることができれば、差がつくことになる。
・「なぜそこを選んだのか?」、「自分固有の長所」、「受け入れ側のメリット」などを掛ければより良くなる。

(お詫びをする)
・謝罪文の構成。謝罪、相手側から見る、罪を積極的に認める、原因を究明する、対策を立てる、償いをする、再度謝罪。
・どんな状況でも必ず何か自分に非がある。原因のない失敗はない。その確信に自分で気づくまで、不思議に文章は完成しない。文章を推敲していく中で腑に落ちる文章が書けたとき、「ああ、そうか!私のここが悪かったのだ」と、ことの核心がわかる。
・お詫び文の一人称は、「私」を使用するといい。私がやったことなのだから。

(メール)
・意見と論拠は明確にして書く。
・わかりやすく書くためには、よく考えて書く。よく考えずに書くと、相手に考えさせるような内容になり、読み手にとって分かりにくくなる。
・「いつ」「誰が」「どうする」を基本に、考える作業を引き受け、自分なりの結論を出し、「提案型」で書くと良い。
・受動態は使わず、人間を主語にする。