(なぜ考え方を変えるのか)
・拡散的思考は想像力を使って、あらゆる新しい可能性を探る。集中的思考は知識を使って、一つの考え方を検証し、それがどういう考え方に一致するか明らかにする。思考の凡人はなかなか集中的思考の習慣から抜け出せない。しかし、思考の達人は両方の思考法を使い分けられる。

(反対のことを考える)
・思い込みに縛られ、反対の証拠を無視するという習慣は、人間の思考の大きな弱点の一つである。
・「カードの片面に母音が書かれている場合、そのカードのもう片面には奇数の数字が書かれている」というルールが正しいかどうかを確かめるためには、どのカードをめくるのがいいか。
①Jのカードは、裏面に偶数が書かれていても、奇数が書かれていてもルールとは関係ないので意味がない。
②3のカードは、裏面に母音が書かれていたらルールに沿っているがそれを100%だと証明できない、子音が書かれていたら判断できないので意味がない。
③4のカードは、裏面に母音が書かれていたらルールは誤り、子音が書かれていたら判断できないので、めくる価値はある。
④Eのカードは、裏面に偶数が書かれていたらルールは誤り、奇数が書かれていたらルールに沿っているがそれが100%だと証明できないので、めくる価値はある。
つまり、ルールに沿ったものをいくら見つけてもルールを100%正しいとは証明できないが、ルールから異なる例を1つでも見つければそのルールが正しくないことを証明できる。

(思い込みと向き合う)
・自分の考えを変えられない理由は5つあり、①自分の考えを覆されるかもしれない証拠には、私たちは自ら決して向き合おうとしない。②そういう証拠を突きつけられても、多くの場合、それを信じることを拒む。③何らかの考えを持っているとその考えに合うように物事を解釈するので、新しい証拠をありのままには受け入れられない。④私たちは自分の考えと調和することを選択的に記憶する。⑤私たちは自尊心を守ろうとする。
・どうしたら、反対のことを考えられるのか?とても単純なことだ。一旦自分の考えを脇にやって、「もし〜だったら、どうなるか」と考えてみれば良い。思考の達人は確信をよしとしない。曖昧さや、複数の解釈や、確信のなさをよしとする。
・「思い込んでいいのは、一般に信じられていることは全て間違いということだけだ」

(問題を分析する)
・問題の分析に役立つ便利なツール。①理想への道。白紙の紙を3枚用意して、1枚目の紙には理想の状態を、2枚目の紙に現在の弱点や問題や障害などを全て書き出す、3枚目の紙に現状から理想へ至るための具体的な解決策を書き出す。②なぜ?なぜ?③6人の従者。問題を書き出したら、なに、なぜ、いつ、どう、どこ、だれの6通りのそれぞれ否定と肯定の両方の文脈で問いを立てる。異なる角度から問題にアプローチできるようになる。④蓮の花
・問題解決のための実行計画は、①問題を定義する。②問題を分析する。③解決するべき重要な部分について、優先順位をつける。④それぞれの部分を順番に取り上げる。⑤色々なアイデアを出す。⑥アイデアを比較し、その中から実行可能な最善のものを選ぶ。⑦実行計画を立てる。

(問う)
・思考の達人は、問い続けることを習慣にしている。問うことは強さと賢さのあらわれであり、弱さや迷いの現れではない。優れたリーダーは絶えず質問し、自分一人では全てに応えられないことを自覚している。または、急いで先に進もうとするあまり、立ち止まって問えないものもいる。問うことで遅れるかもしれないからだ。そういうものは軽率な行動を起こしてしまう危険がある。
・IBMの販売研修では、拒絶に質問で応じるように教えている。普通拒絶されたら、すぐに反論したくなるが、議論をする前に、二、三の質問をする方がはるかに効果がある。

(組み合わせる)
・優れたアイデアの多くは、すでにあるものをそれまでとは違う新しいやり方で組み合わせることで生まれている。

(平行思考)
・ある者がなんらかの主張をすると、他の者はそれに批判的な目を向け、あれこれとあら探しをしようとする。この対立的な思考の典型例は、法廷における検察側と弁護側のやり取りだ。対立的な思考法の問題点は、普段の生活に持ち込んだ場合、私達を偏狭で、過剰に防御的で、政治的な人間になってしまう。会議では、自分の立場しか考えず、相手の意見の良い面に目が向かなくなる。このような思考に陥らないための方法の1つに平行思考という方法がある。そのツールとして有名なのは、「六つの帽子」という方法である。

(創造的に考える)
・発想力を高めて、問題を解決するための実際的な方法をいくつか紹介する。①思いつくアイデアをできるだけ多く書き出してみる。②「なぜ、なぜ?」の表を作る。③第三者に話してみる。④著名人ならどう対処するかを考えてみる。⑤身の回りにあるものを手に取って、次のように胸につぶやく。「このなかに問題解決の鍵が隠されている」⑥直喩を使う。⑦全く制約がないと仮定して、理想的な解決策を思い描いてみる。⑧辞書を開いて、無作為に名刺を選ぶ。そしてその名刺の属性を六つ書き出す。「木」なら、根、枝、科、りんご、幹、高い、というように。次にその名詞ないし属性と、問題との間に、強引になんらかの関連を見つけ出して、新しい解決策を考える。⑨他のことをする。⑩漫画のような簡単な絵で、自分の置かれた状況を描く。⑪インターネットのブログや掲示板などに書き込みをして、答えを待つ。

(水平的に考える)
・「水平思考」という言葉は、一般的な思考である垂直思考と対置されるものとして、エドワード・デ・ボーノによって考案された。一般的な思考では、私たちは一定の枠内で、直接的にものを考える。水平思考では、新しい視点から、つまり側面から、問題を眺める。デ・ボーノは水平思考の四つの特徴を次のように説明している。①思考を歪ませる支配的な考え方に気づく。②別の見方ができないかどうかを探る。③垂直思考で固まってしまった頭脳を柔らかくする。④偶然を利用する。
・日常生活で水平思考を使うべき理由は二つある。斬新なより良いアイデアが閃くというのが一つ。生活が楽しくなるというのがもう一つである。

(他の人が考えないことを考える)
・どうしたらいつもと違う見方ができるのか?そのためには自分の視点ではなく他者の視点で物事を眺めてみよう。真の天才は従来の考え方に従わず、自分の考えを「従来の考え方」にしてしまう。全く新しいものの見方によって、社会を変えてしまう。

(アイデアの評価をする)
・創造工学でFANと呼ばれる次の基準は、どんなアイデアの評価にも使える万能タイプの基準である。実行可能か?魅力的か?斬新か?3番目の基準があることで、フレッシュなアイデアが高く評価されるようになる。

(難しい判断を下す)
・重要な判断を下す時は、直感だけに頼るわけにはいかない。そのため、通常、次のようなステップを踏む必要がある。
①問題を分析する。様々なデータを集める。問題の原因を探る。問題をいくつかに分けて、取り組みやすくする。
②創造的な思考のテクニックを使って、できるだけ数多くのアイデアを出す。
③出されたアイデアを評価し、絞り込む。
④各アイデアを実行した時のメリットとデメリットを列挙する。
⑤時間があれば、アイデアを寝かせる。
⑥判断を下す。
⑦判断を精査する。もし判断が誤りだと分かったら、ためらわず、考えを改める。
・特別重要な判断を下さなくてはいけない場合は、これよりさらに厳密なアプローチが必要になる。経営陣は、たいていは、各選択肢に関するデータを集めたり、調査チームに詳しく調べさせて、提案をまとめさせたりする。そして経営陣全員で、その提案を検討して、最終的な判断を下そうとする。こういうやり方の問題点は、感情や政治的な要素が入り込んでしまうということだ。そのせいで往往にして、論点がぼやけ、正しい判断ができなくなる。もっと厳密なアプローチをするためには、ペア式順位法が有用である。

(言葉で考える力を伸ばす)
・いくつもの研究から明らかな通り、言語的な能力の高さや語彙の豊かさと、仕事の成功との間には相関関係がある。
・言語を磨くための方法はいくつかある。①良い辞書と類語辞典を持つ、②本を読む、③知らない言葉を逃さない、④書く、見直す、削る、⑤言葉で遊ぶ、⑥自分が話すのを聞いてみる。