夕方。
バスは立っている人でも窮屈なぐらい混雑していた。
途中、バス停で止まると
運転手さんが
「後ろから乗りますか?今あけますね」と声をかけると
普段は降車口の後ろのドアが開いて、
ベビーカーを乗せようとする若いママが現れた。
なんだか随分と時間がかかっている。
私の席からは人の移動の気配は見えるが
肝心のママの姿もベビーカーは見えない。
でも、特に声が聞こえるわけではない。
運転手さんが自主的に、席を離れて手伝いに回る。
かなり大型のベビーカーだった。
周囲の人が気を遣って、
「ママはここに座ってね」と席を譲ってあげた。
ベビーカーが動かないように、
固定できる限りの手を尽くそうと
運転手さんもストッパーをいじったり
「これ降ろすんですかね?」と手を尽くし、
後ろの席の女性も、安全ベルト?をつけるのを
手伝ったりして、みなさんイイ人ですね…
…って話じゃないんですよ。
この若いママは、これだけ多くの人に
さまざまな補助や助けを受けながら、
一回も「ありがとう」とは言わなかったんですよ。
ベビーカーを乗せるのに大人が手伝わなかったのは悪いけど
降車口付近には、小さな子供たちが数人いたので
気が回らなかったんでしょう。
席を立ちあがって大人が手伝いに回りたくても、
混雑していたのでそもそも移動が難しかった。
でも、力を貸した運転手さんには?
使い方のわからないストッパーを頑張って留めてくれたのに。
席を譲ってママはここに座って、といった女性には?
「はい」って。え?「はい」だけ?
安全補助ベルトをつけるのを手伝ってくれた後ろの席の人には?
そもそも後ろから乗りたいって自分からちゃんと
運転手さんに伝えてすらいない。
小さい赤ちゃんだったようだし、
いっぱいいっぱいだったという予測をしても
無理にとは言わず、
普通に手を貸してくれた人には
「ありがとう」って出てこないかな?
みんなもっと、ありがとうって言葉
ちゃんと使ったほうがいい。
言ったところで減るものじゃないし。
ごめんなさいと違って責任取らされるわけじゃないし。
愛してる、ほど恥ずかしくもないでしょ?
優しさが生まれるし、
使う人には温度が生まれる。
「理想の異性のタイプは?」
「ありがとう、と、ごめんなさいが素直に言える人かな」
「えー、理想低いよ。それって当たり前じゃーん」
…っていっていた時代が懐かしい。