このブログを始めて、今日から14年目を迎える。
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中島みゆきの18th「夜を往け」
1990年/10Tracks:56m15s
タイトルトラック「夜を往け」のヘヴィなギターのイントロで幕を開ける、ロック志向が明確に打ち出されたアルバム。この曲の格好良さたるや、今日までの中島みゆき史上でも一二を争うと個人的意見。他にも、ロック度ではアルバム中最高のトラック5「新曽根崎心中」や、トラック7「遠雷」のイントロ、アルバムの掉尾を飾るトラック10「with」のアウトロなど、印象的なギターリフが要所で存在感を放つ。
本作の7ヶ月前にリリースされた提供曲のカバーアルバム「回帰熱」(1989)にも、本作の布石はあったように思う。オリジナルアルバムの前作にあたる「グッバイガール」(1988)からの変化は劇的。
その一方で、次作以降「歌でしか言えない」(1991)「EAST ASIA」(1992)で完成される、個人の情念を飛び出してスケールの大きな舞台へ飛躍していく歌世界の萌芽も垣間見える。中島みゆきのディスコグラフィを見渡した時、過渡期の一作と位置付けられる作品と言えそう。
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中島みゆきの29th「心守歌-こころもりうた」
2001年/11Tracks:57m19s
本作の1年以上前にリリースされたシングル「地上の星/ヘッドライト・テールライト」が引き続きロングヒット中だったせいか、先行シングルなしでリリースされたアルバム。紅白歌合戦に黒部ダムから参加してオリコン1位を獲得するのは、更に1年後。自身の楽曲とチャートを争うことになったアーティストの胸中は、いかばかりか。
リアルタイムで聴いた当時、前作の「短篇集」が良くも悪くも「地上の星」「ヘッドライト・テールライト」とその他……なアルバムの感が否めなかったので、本作は各曲の粒が揃った良い印象を抱いたことを覚えている。トラック3「樹高千丈 落葉帰根」、歌詞の文学性の高さは教科書に載っていい。
タイトルトラック5「心守歌」は、落ち着いた癒し系バラード。この頃は、「feel」「image」など、ヒーリング・ミュージックのコンピレーションアルバムがあまたリリースされていた時代。中島みゆきもその影響を受け……というよりは、「地上の星」のヒットで中島みゆき自身が世間から求められている音楽に応えた形かも。アルバムラストのトラック11「LOVERS ONLY」は、ストレートなクリスマスソングで逆に意表を突いてきたり。
トラック9「夜行」は、ロック調の力強い楽曲に、世のはみ出し者たちの背中を押す詞が胸を打つ。「わたしの子供になりなさい」(1998)収録の「紅灯の海」同様、この類の歌にはめっぽう弱い。
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中島みゆきの31st「恋文」
2003年/10Tracks:56m45s
ドラマ「Dr.コトー診療所」の主題歌「銀の龍の背に乗って」がトラック1を飾る、ヒットシングルがアルバムの顔なのは、近作では「LOVE OR NOTHING」「パラダイス・カフェ」「短篇集」などがある。更に、ドラマの挿入歌に使われた、ヒロインを演じる柴崎コウへの提供曲「思い出だけではつらすぎる」のセルフカバー(柴崎ヴァージョンとは表現力の差を見せつけている)を最後に置いて、コトー先生のイメージがより増し。「プロジェクトX」色が強いアルバムになった「短篇集」と、同じスタイルと言える。
巧軟織り混ぜた、アルバム通しての隙のなさは、2000年台以降の作品に通じる。やがて偉大なるマンネリズムにぶち当たるとはいえ、トラック4「ミラージュ・ホテル」やトラック6「情婦の証言」など、激情的なみゆき節は耳を揺さぶらずにおかない。
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フィンランドのヴァイキングメタルTurisas の1st「Battle Metal」
2004年/12+3Tracks:75m20s
ネットに転がっていた「フィンランドはメタル王国」のテレビ動画をたまたま見たら、顔を真っ赤にペインティング&観客を過激に煽っていくスタイルがネタ的に紹介されていたが、番組では二の次状態な楽曲にこそ興味を抱き、1st から最新作まで一気に集めた。
フィンランドはメタル王国[Youtube]
Turisas 登場は9:14~。面白さの8割は吹き替えで作られている気がする。
シンセ主体のやや安っぽいながら勇壮なメロディが特徴で、ヴァイオリンやアコーディオンの生楽器がフォーキッシュな色を加えている。これでブラスも生だったら言うことなしなのに、惜しい。ヴォーカルはデスとクリーンを緩急自在と使い分けて、男性中心のクワイアも分厚い。
タイトルを冠するトラック3「Battle Metal」は、イントロの脱力手前な"ぱぱぱぱ~ん"を乗り越えれば、ド直球なその名に相応しいクサメタルが展開される。ライヴで観客は、「バトー!メター!」と熱く叫んでいるに違いない。
トラック8「Among Ancestors」では、1分を残して曲が一旦終わると、何やら酒場らしいガヤガヤが聞こえてきて、やがてアコーディオンの音色に掛け声と手拍子が加わり、シームレスに次のトラック9「Sahti-Waari」へ。酒と音楽で陽気に踊ろうじゃねえかという北欧の男たちが、目に浮かぶよ。
アルバム終盤のブリッジ→7分の大曲→ブリッジな勿体ぶった構成や、CD の容量いっぱいにボーナストラックが詰め込まれたせいか、遠しで聞くと冗長な向きもあるけれど、1st から完成度の高い作品を送り出した。
Turisas-Battle Metal[Youtube]
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フィンランドのヴァイキングメタルTurisas の2nd「The Varangian Way-Direcot's Cut」
2007年/8+2Tracks:53m39s
トラック2「A Portage To The Unknown」、どこか物悲しいアコーディオンの短いソロが終わるや、疾走するドラムと共にイスラエル国歌(またはヴルタヴァ)を思わせる哀愁漂うメロディを、数に物を言わせたクワイアが力強く歌い上げる。この一曲で、本作は傑作と確信した。
Turisas-A Portage To The Unknown[Youtube]
前作からシンフォニックメタル色が推し進められ、サウンドの迫力が倍増。シンセ頼りのオーケストラは変わらずだけれど、分厚く重ねることで安っぽさを払拭している。より好みの方向に進化してくれて嬉しい。
高鳴るガヤガヤから飲めや歌えと盛り上がるカーニヴァル的楽曲も、トラック5「In The Court Of Jarisleif」で健在。早弾きアコーディオンの独壇場だ。
トラック6「Five Hundred And One」では、中盤にてハモンドオルガンによるプログレ的展開を披露し、更に短いながら勇ましい台詞パートを経て、クライマックスの大合唱と劇的な構成。
本作はコンセプトアルバムとして製作され、スカンジナビア半島と東ローマ帝国を結ぶ交易の道を旅するヴァイキングの物語が歌われているらしい。歌詞を理解できずに聞いていると、終幕部なトラック8「The Milkgard Overture」のサビ入りの「Konstantinopolis!!」という雄叫びで、とうとう目的地に着いたんだなよかったなということくらいしか分からないが……。
Turisas-Miklagard Overture[Youtube]
壮大なイントロから、一旦静かに溜めて溜めての爆発解放「Konstantinopolis!!」が印象的。
ラスト2曲はトラック1 のシングルエディットと、前作1st 収録曲のフィンランド語ヴァージョン。実質的な本編は42分そこらで、曲単体のスケールとアルバム全体のヴォリュームにギャップを感じる。スカンジナビアからコンスタンティノープルまで、意外と早く着いた。
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フィンランドのヴァイキングメタルTurisas の3rd「Stand Up And Fight」
2011年/9+2Tracks:54m38s
ビザンティン帝国のエリート部隊「ヴァランジャン・ガード」に材を取ったという、前作に続き中世の暑苦しい男たちを歌ったコンセプトアルバム。
世のシンフォニックメタルバンドの理想郷たる、生オーケストラの導入。その約束の地に、Turisas も三作目にして遂にたどり着いた。
トラック1「The March Of The Varangian Guard」、喨喨と鳴り響く生オケサウンドを聴けとばかりの仰々しいイントロ! 前作までとは音のゴージャス感が段違いで、シンフォメタルはかくあるべしだ。
Turisas-The March of the Varangian Guard[Youtube]
各楽曲はオーケストラありきの構成になっていて、トラック4「Βένετοι! - Πράσινοι!" (Venetoi! - Prasinoi!) 」(読めない……英語にすると「Blues! Greens!」とのこと。ヒッポドロームと呼ばれるビザンティン帝国で催されていた戦車レースを歌ったものらしい)ではヴォーカルすら裏方に引っ込んで、オーケストラが主役と躍り出ている。
捨て曲なしの本作でも、トラック8「End Of An Empire」は、白眉。テクニカルなピアノによる静のパートから徐々にテンションを高めて、クライマックスではオーケストラとクワイアの一大シンフォニー。5:37~の展開は何度聴いても圧倒される。2018年上半期で、最もヘビロテした一曲だった。
Turisas-End Of An Empire[Youtube]
アウトロの終幕感が非常に強いせいか、荘厳なエピローグ的楽曲がもうひとつ控えていることを忘れそうになる。
ボーナストラックには、1st から彼らの代表曲だろう「Battle Metal」のニューヴァージョンを収録。「バトー!メター!」の閧の声から始まり、より洗練されたアレンジにバンドの成長が見られる。
この後の4th を含めても、彼らの最高傑作が本作3rd なことは、うたがいなし。
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フィンランドのヴァイキングメタルTurisas の4th「Turisas2013」
2013年/9+2Tracks:51m39s
1st の「Battle Metal」以上にド直球というか安直なタイトルに、まず驚かされる。レコーディング中の仮タイトルを、そのまま採用したのかしら。
前作までの流れから、Turisas=壮麗なシンフォニックヴァイキングメタルのイメージは揺るがぬものと思っていたら、1曲目からシンフォニック成分大幅減な幕開け。キャッチーなメロディこそ彼ららしいけれど、これではただのメロディックメタルでは……と戸惑う。
次のトラック2「Ten More Miles」は、印象的なサビのクワイアで前作までの流れを汲んでいることをアピールして、杞憂だったかなと思われたが。
Turisas-Ten More Miles(OFFICIAL VIDEO)[Youtube]
サビの一部の展開が映画音楽のよう……というか、「スター・ウォーズ」入ってる。
中世コスプレと現代ホワイトカラーな会議が交互にモンタージュされ、どういう意図なんだと思っていたら、衝撃のラストシーンが待っている謎なPV。
続くトラック3「Piece By Piece」もシンフォニック志向への揺り戻しが聞こえるけれど、トラック4「Into The Free」トラック5「Run Bhang-Eater,Run!」トラック8「No Good Story Ever With Drinking Tea」は、1st 以来のヴァイキングメタル色が強い。トラック8 は「夜通し飲むぜ!」みたいな歌詞がノリノリなパンク寄りのサウンドで、前者のシンフォ系とはテイストを全く異にする。前作・前々作の楽曲の統一感は、本作では希薄な印象。
トラック5は、2nd の「Five Hundred And One」を思い出すヴァイキング&プログレ&シンフォニックごたまぜ展開だが、中盤挿入される妙にアダルティーなヴォイスは何なのだろう。
トラック7「The Day Passed」、一昔前のレトロなシンセ音がクサメロを奏でる。何かに似てるなーと頭を捻った結果、「いとしのレイラ」に行き着いた。
エリック・クラプトン「いとしのレイラ」(Layla)[Youtube]
Turisas-The Day Passedd[Youtube]
3:09~は、もうそのままだ。
本編最後のトラック9「We Ride Together」は、冒頭からオーケストラの出番。シンフォニックではあるんだけど、戦いに挑む野郎どもの気迫に満ちていた3rd の楽曲に比べると、何だかモダンな雰囲気。戦争というよりは運動会だ。
ことシンフォニックサウンドを求めている向きには、3rd からの後退は否めない。やりたいことは前作でやり尽くしたということなんだろうか。
ボーナストラックのうち一曲は、また「Battle Metal」! これで彼らのアルバム4枚中3枚に収録されたことになる。さすがに飽きてきたな……。
来日時のライヴヴァージョンらしく、ヴォーカルは「Tokyo!」「Arigato!」とノリノリで盛り上がっている。
[漫画]
・奥浩哉「GANTZ (33)」(2012年集英社ヤングジャンプコミックス)
触れられただけで致命傷な最強クラスの敵を相手に、クローン玄野たちが生き残る道を探していた頃、オリジナル玄野は遂にタエちゃんとの再会を果たす。ああ、ケイちゃんタエちゃん地獄がやっと終わった……。
昨年12月、長らく積みっぱなしの最終巻までを一気に読もうと決めたはずなのに、数冊のみでまた放置していた。