目的は7階だった。
28日。今日は、どうしてもWindowsマシンでないとできない手続きがあったので、ネットカフェへ行くつもりだった。
加えて、滞っていたブログも一気に書きまくる、という作戦である。
そして先ほど。
そのビルの入り口でエレベーターを待つ間、6階にあるマッサージ店の看板を見てしまった。
「そういえば体が悲鳴をあげていたな」
6階経由で7階へのルートを選んだのは、自然のことだった。
看板にはさわやかな海辺のリゾート写真。
きっとこだわりの内装がお出迎えするに違いない。
店長は、
「すいません、内装だけは凝っちゃってるんですよ」
と、お客を心からほぐすために、得意のマッサージギャグを言うに決まっている。
エレベーターの中で想像は膨らんだ。
いざ店内へ。
「ん?」
リゾートらしさは特に見当たらない。
やはりマッサージ店。凝ってはいけないのだろうか。
「コースドーシマス?オキャクサン」
店員さんの絵に描いたような(?)片言の日本語ではっとした。
リゾートはそこか!アジアンリゾートか!
「えーと、このお得コースで」
お得なのかどうなのか分からなかったが、足裏と全身の組み合わせを選んだ。
「まずはアシウラからね」
そのおばちゃんはどうやら中国の方らしいことは、店員さん同士の会話でなんとなく分かった。
(ん?痛いって中国語でなんて言うんだ?)
足裏でたまに悲鳴をあげる自分は、急に不安になってきた。
いかん、リラックスすることに全力で集中するときだぞ。
マッサージ開始。
「イタタタ…」
実はそんなに痛くなかったが、分かってもらえるかどうか知りたくて言ってみた。
おばちゃんは一言、
「肩ね」
と言った。
少し安心して、ようやくリラックスできてきた。
しかし、その後「イタタ」と言った時、
おばちゃんはなぜか、
無言だった。
壁の向こうからは、店員さんたちの中国語の会話と笑い声が聞こえてくる。
「なんか面白そうだなぁ」
と気になるものの、言葉の壁は店の壁より厚い。理解するのは無理だ。
そろそろ終わりかな、と思ったころ、
急におばちゃんの押す力が強くなった。
「何で?」
と思っていると、店のBGMがゆるやかなインストから歌入りの音楽に変わっている。
この声は、エンヤだ。
明らかにおばちゃんは歌に合わせて押してくる。
イタタ…。
「エンヤ、こら!!」
声には出さなかった。きっと通じないと思ったからだ。
店を出ると、おばちゃんが律儀にエレベータの「降りる」ボタンを押してくれた。
「おれ、上に行くんだよね」
声には出さなかった…。
「店を出て7階へたどり着き、今リラックスな3月28日は寄り道記念日」