お互いの「お願いします」で始まり、どちらかの「負けました」で終わる。

それが将棋の作法である。

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男と女は向かい合っていた。

街で見かけるカップルと少し違ったのは、
向き合っている二人の間に将棋盤と駒があったことだ。

対局は序盤から女のペースで進んだ。

どう見ても男の劣勢だった。

誰もが勝負はついたと確信していた。

しかし、男の次の一手で思いもよらぬことが起きた。



男は、女の王将に向かい合う様に、持ち駒から何かを打ったらしかった。

金、銀と豊富な持ち駒からいったい何を?

よく見ると、そこには金でも銀でもない、それ以上のものが打たれていた。



ダイアモンド。

男はダイアの指輪をそこに打ったのだ。


女はしばらく考えた後に言った。



「お願いします」恋の矢


前代未聞。

「負けました」ではなく、「お願いします」でこの将棋は終わった。



これは20XX年、日本で大流行している将棋バーでのひとコマである。

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27日。
仕事で、プロ棋士、瀬川晶司さんとお会いした。

サラリーマンからプロ入りという、将棋界の歴史ある制度の壁を越えて、テレビや新聞でも話題になった方である。

その瀬川さんと、「どうやったら将棋人口が増えるか」というお話で盛り上がる。

課題はいろいろだが、とりあえず上に書いたのは「将棋が大流行して、あらゆる世代に定着した未来」の話。

お話しした後、とりあえず明るい理想の未来を考えてみた結果である。


ありがたいことに、瀬川さんからは直筆の言葉入りで本も頂いた。

瀬川 晶司
泣き虫しょったんの奇跡 サラリーマンから将棋のプロへ
この本は、将棋を知らなくても読める内容であり、
「何かを目指している人」や「何か目指すものを探している人」
にぜひ読んで頂きたい一冊である。

ちなみに、プロ棋士というのは、ものすごい才能(と継続して学ぶ意欲)を持った人達なわけだが、瀬川さんは文章も素晴らしい。適度に表れる比喩表現は、歌詞を書く自分にも学ぶところだらけである。

ちなみにこちらは様々なジャンルで活躍される方々との対談集。
瀬川 晶司
夢をかなえる勝負力!

本を読んでいて思い出したのは、自分が将棋に夢中だった小学生の頃。

担任だった梅宮先生に、放課後の教室で相手をしてもらっていたなぁ。
今度訪ねる機会があれば、将棋を指してもらおう。

あ、その後の中学校でも、負けた熊田先生が「もう一回頼む!」と再戦を挑んできて、自分を負かして本気で喜んでいたのも思い出した。(笑)

将棋って、子供時代に大人と真剣勝負して、勝つ喜びを味わえる数少ないものの一つだと思うのだが、
最近の子供達はクラスでやってたりするのだろうか。


「瀬川さんにお会いして、本を読んで懐かしい気持ちにもなれました、な2月27日は、お願いします記念日」