ファーストフード店にて。

ポテトを食べながら、パソコン雑誌を開いていた。

記事には新製品のレポートがあり、

「本当に速かった!!」

との見出しがある。


とその時、50歳くらいのおばさまの会話が聞こえてきた。

髪の長いおばさまと髪の短いおばさまの二人組の会話である。

いや、正確に言うとあれは会話ではない。

髪の長いおばさまが一方的に話している。


そのスピードが、



速い!!!!



会話をキャッチボールに例えたりするが、

あれは髪の長いおばさまが、一方的に豪速球を投げ続けている感じだ。

世界選手権があれば、間違いなく日本代表だ。

「ぺらぺらぺら…

なんでだか分かる??」


「なぜなら、ぺらぺらぺら…」


その間わずかコンマ2秒。

いったい誰に向かって疑問を投げたのだろうか。

あの豪速球を打ち返せるバッターが、この国にいるとは思えない。

なんてったって相手は世界レベルだ。


最初は、髪の短いおばさまが聞き上手な人なんだな、と思っていたが違う。

速すぎて聞くことしかできないのだ。

周囲の客が静かなのも、そうするしかないだけなのだ。


どうやら、ここに居ない人との恋愛について語っているらしい。

まるでその人が居るかのような臨場感。

抜群のサラウンドシステムで恋の話が伝わってくる。


断っておくが、盗み聞きしているわけではない。

盗みたくない話を聞かされているだけだ。

腕のいい泥棒がいたら、ここに駆けつけてハートごと盗んで欲しいくらいだ。


パソコン雑誌も来月はあの方を特集すべきだろう。

見出しは今月のままで良い。


「少し感動すら覚えた2月19日は、早口記念日」

いわゆるおばちゃんの世間話でなく、
「片山さつきが早口で熱弁」みたいな感じをご想像下さい。