石見地方の落し込み釣りでは、10号~12号のイサキ針・キツネ針が主流である。
落し込み釣りは、ベイトが付かないと始まらない釣りとはいえ、本命の魚の大きさに対し、使う針の小ささゆえにバラシの多い釣りである。
十分食い込ませて、しっかり合せを入れたつもりでも、高速巻き上げ中にスポンとバラす。
バラシの原因は、合わせのタイミングや、針が口のどこに掛かっているかなど、いろいろとあるだろう。
そんな中で、気になっているのが、針の変形だ。
いったん針掛かりさせた魚を、強い力で巻き上げる途中でばらしてしまう原因の一つが、針の変形なのではないかと疑っている。
前回記事で紹介した「釣りバリの秘密」には針の変形については言及が少なかったので、以下は筆者独自の考察である。
釣り針は言ってみればバネである。
バネは焼き入れ焼きなましで様々な特性を付与される。
変形(歪)に強くすると、折れやすくなる
折れにくくすると、変形しやすくなる
変形についても、一定の荷重まで、荷重が抜けると元の形に戻る弾性変形と、荷重が抜けても元の形には戻らない塑性変形がある。
時折「大物に針が伸ばされた!」というのを聞くが、これは元の形にもどらない塑性変形である。
伸ばされてしまった針は、単純に弱い針ということで終わらず、ターゲットに対応するには線径が細く針の選択が間違っているということを示唆している。
もし、魚をばらしたのに、針飛びせず、折れもせず、伸ばされてもいないということであれば、使っている針は、変形しやすく元の形に戻りやすい針という可能性がある。
上のグラフだと、弾性変形の部分の傾きが緩やかで、より小さい荷重で変形し元の形に戻るという針である。
このような針であれば、魚の重みでフトコロが広がり、針先が軸に対して直角近くまでなって、魚をするりと逃しているのかも。
変形しても荷重が抜ければ元の針の形に戻ってしまうので、針の変形が原因でバラシているとは思わない。
口切れやスレ掛かりなど、針の変形以外がバラシの原因であることももちろん考えられる。
そのうえで、「伸ばされない針=良い針」という認識には、落とし穴があるような気がする。