とかくバブル期の良き時代を経験してきた経営者たちが

共通して言う言葉に、


「昔はこうだった」


「昔はこんなに売れたものだった」


という話がある。


 しかしこの不況の時代に、

そんな昔話は過去の遺物に過ぎないのである。


実はそこに現経営者と後継者との溝が

できてしまっている例を沢山見てきた。


このS店においても、社長さんと息子さんとの間に

そんな溝を感じたのである。


5人と話をしている中で、私はある事に気づき始めた。

それは「社長さんご夫妻VS息子さん、娘さん」という構図が

話の節々から見えるのである。


 さすがにお嫁さんである若奥さんは

中立を保っているように見えるが、

その実は息子さん娘さん派であることは間違いない。


このような空気の中で、

いかに社長派を立てつつも“若者連合軍”を支持し、

実践させるかが私の腕の見せ所なのである。


 若者連合軍の言い分はこうである。
 「今は何しろ倉庫の古い商品を一日も早く何とかしなければ、

ニッチもサッチも行かなくなるんだ!」


「毎日俺が外販に出てコツコツ販売しても何日かかるんだよ!」


 それに対して社長さんの意見は


 「毎日毎日、コツコツと販売していくからお客様も待っていてくれるんだ!」

だった。


 確かに両者の言い分はどちらも間違っていない。


私は社長さんと息子さんの論争を暫く黙って聞いていた。


と同時に“瞬間最大風速100mクラス”の企画案に考えを

巡らせていたのである。


二人の討論が平行線を辿る中、突然息子さんが私に話を振ってきた。


 「先生、現在の倉庫在庫を一挙に減らす良い手だてはないでしょうか?」


 いよいよ具体策を示す時である。


私は二人の意見を肯定しつつも、

問題は今ある倉庫在庫がS店の経営を圧迫している現実について説明した。


その上において私が提案した販売プランは、

地域の生活者に対する「S店倉庫ご招待会」である。


 しかし、資金も余り無い中で実施しなければならないため、

新聞折り込み等の広告媒体は使えない。


また、拠点となるS店の倉庫も

田んぼと畑に囲まれたような場所にあるため非常に不便である。


しかし、そのようなロケーションだからこそ

“駐車場として使えそうなスペース”はふんだんにあった。


 その点を踏まえた中で、この悪条件を逆手に取ることにした。

まず新聞折り込みは一切行わず手作りのチラシによるポスティングを行うことにした。

要はお金が使えない分だけ体力を使って貰うことにしたのである。


 まずS店が位置する町の2000世帯8000人を中心に、

両隣の町、さらに外販で巡回している地域に向けて、

2万部のポスティングを行うこととした。


そして通常ではチラシの中に

「お車でのご来場はご遠慮ください」と謳うところを、

敢えて「お車でのご来場をお待ちしております」とした。


 この販売企画案を提案したところ、まず社長さんからは、
 「これで本当に売れるんですか?」
と疑問の言葉が投げかけられてきた。


私の答えは
 「売れるか売れないかは何とも言えません。

但し、売る気で色々と施策を講じることと、

“やってみる”というプラス発想が必要なんです」
と説明した。


 そこにまた息子さんが言葉を挟んできた。

私と社長さんとのやりとりの間、

息子さんは娘さんと実施する方向で話を決めてしまったようだった。


息子さんの口から突いて出た言葉は
 「先生、是非ともやってみたいです」
 「倉庫ご招待会やります」
だった。


その勢いにさすがの社長さんも圧倒されたのか、
 「では、やってみましょう」
とポツリと言ってくれた。


 その後はやることを前提とした企画案の詰めに入った。

そして、やるからには長くても1ヶ月以内に

「S店倉庫ご招待会」を開催することを約束し、

第1回の経営アドバイスを終了した。

つづく



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ヒトづくり・ミセづくり・モノづくり・マチづくりのトータルアドバイザー
人材教育・販売促進・商品開発・地域活性化の
(株)ラフィネット総合企画
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