2回目にA商店を訪れたのは、桜のつぼみは膨らみ始めたものの、
まだまだ冬の名残の続く3月中旬だった。
1回目の提案に基づき、まずご主人と奥さんに
再度本当に店を直す気があるのかどうかを確認してみた。
答えは「イエス」だった。
A商店のような店は全国に山ほどある。
そして、そのような店の共通点として一番に上げられるのが、
レイアウトのコンクリート化である。
しかし、ご主人が不安げな顔で質問をしてきた。
「店を直すのにどの位かかるんでしょうか?」
もっともな質問である。どこの経営者も店を直したいのはやまやまである。
しかし、本格的に店を直すとなると、百万単位を想像してしまうのが常である。
私は逆に質問を返した。
「いくら位の予算でやりましょうか?」
ご主人から出た答えは
「10万位でやれればと思っているんですよ」
だった。
「それでは10万位でやりましょう!」
こう答えるとご主人の顔がパッと明るくなった。
続けて
「そのかわり予算の少ない分、汗と体力を使ってもらいますよ」
と言った。ご主人も奥さんも笑っていた。
いよいよ作業開始である。
まず、私が線を引いたレイアウト図面に基づき、
基本レイアウトの見直しに取りかかった。
作業をしながら
「ところでご主人、今のレイアウトにしてから何年位になりますか?」
と問いかけてみた。
「そうだね、俺が親父の代から引き継いだ時に店をちょっと直したから、かれこれ25年位になるかなぁ!」
涼しい顔でこう答えたものである。
「そうですか!」
私は笑いながら恐る恐るゴンドラ台を動かした。
案の定、その下には“土埃が化石化”したようなものが
5センチ位の高さでビッシリと埋まっていた。
「奥さん、きっとこの中に千円分くらいの小銭が落ちていますよ!?」
私は冗談めかして奥さんに言った。
奥さんは笑いながら一生懸命に掃除をしていた。
その時、突然奥さんが大声を上げた。
「先生の言う通り十円玉や百円玉の小銭がザクザク出てくるよ!」
作業をしていた5人は思わずそこに目をやり、やがて大笑いとなった。
作業は順調に進み、レイアウトも決まり、
2時間後には店内はすっかり一新された。
そこには以前の店内の姿は全くなくなっていた。
次は店頭のステージ作りである。
何しろ予算的には10万位しかないとなると、余計なものは買えない。
何か使えるものはないかと裏の倉庫へ行き物色を始めた。
そこで目に付いたのが「ビール空ケース」の山だった。
早速、ご主人に確認したところ、別に使う予定はないし、
これならまだ沢山あるとのことだった。
「ヨシッ!これでやろう」約50~60個のクモの巣だらけになったビールケースを倉庫から引っぱり出し水洗いをした。
そしてそれを店頭に雛壇に積み上げた。
ゾーニングのくくりは、「通年野菜」「季節野菜」「バンドル販売」「均一価格」、そして「果物」「花卉」で構成した。
さらに品揃えを整理し、「葉物」、「土物」「菌茸」「豆類」等区分けをした。
見る間に店頭には「新鮮野菜市場」の賑わいが出来てきた。
そうこうしているところへ一人のお客様が見えた。
そして奥さんに何やら話しかけている。
私は作業をしながらその会話に聞き耳を立てていると
「良い店になったねぇ。A商店じゃないみたい!」
「とても買い易くなったね」
等と話しているのである。
そこへまた2人、3人とお客様が来た。
口々に誉めてくれている。
そして今まで大して売れなかった花卉類が、
並べ替えている側からどんどん売れていくではないか。
これにはいささか驚いたが、一番驚いていたのがご主人と奥さんである。
今まで見向きもされなかったトレーに入った花卉が
30分位の間にアッという間に完売してしまったのである。
レイアウト移動の効果とはこういうものである。
お客様は常に新鮮さを求めていることがこういうところで証明される。
しかし売る側はなかなか変えようとしない。なぜか?
第一の理由は面倒臭さ。
ついつい「レイアウトを変えたくらいで売上が上がるわけがない」と決めつけてしまう傾向がある。
第二は、レイアウトを変えることによってお客様から言われる一言
「確か前はこの辺にあったはずだけど、分からなくなってしまった」
を恐れているのである。
しかしたかだか15坪、大きくても30坪ほどの店内で、
そんな一言は、本当は恐るるに足りないのである。
このようにして1時から始めた店内改装も、
とっぷりと日が暮れた6時頃には一通りの形が出来上がり、
活気らしいものが生まれ始めていた。
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ヒトづくり・ミセづくり・モノづくり・マチづくりのトータルアドバイザー
人材教育・販売促進・商品開発・地域活性化の
(株)ラフィネット総合企画
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