首都圏にほど近い、ある町に所在するA商店を訪れたのは
1月の極めて寒い日だった。
A商店の相談内容は、
その年の夏には目と鼻の先に大型スーパーが出店してくる中で、
いまの商売を継続するべきか廃業するべきかという、
危機に瀕したものであった。
そのA商店から私が受けた第一印象は、決して誉められたものではなく、
いわゆる田舎町によくある「何でも売っているよろず屋」で、
約20坪ほどの店内は薄暗く、
壁には「2年前の干支の賀正の張り紙」が未だに張られており、
店というよりも倉庫に近いくらいの様相を呈していた。
そのA商店は、店主であるご主人と奥さんの2人で、
もう30年近く営んでいるということだった。
店内を一通り点検した後、ご両人からの意見を聞いたところ、
ご主人はもうすっかりしょげ返っている。
しかし、その横に座っている奥さんの顔を見て正直言って一安心した。
何とご主人のグチともつかない話を聞きながら、
横でニコニコ笑っているではないか。
その時「やはり女は強い」と本気で思ったものである。
そして一通り、ご主人の腹の内を吐かせた後、私からのアドバイスを始めた。
「ご主人、店閉めるのは簡単ですよ。でもこれからどう生活するんですか?」
「今からサラリーマンでもやりますか?」
「しかしその歳では、どこも雇ってはくれませんよ!」
立て続けにキツ~イ言葉を浴びせて反応をみた。
案の定、ご主人はムッとした顔をした。
今までの私の経験からいえば、ムッとした顔をするなら、
まだ商売を続ける根性が残っている。
ましてや横に座っている奥さんの顔は、ニコニコしている。
これは今まで然したるライバルもなく、安穏とした商いを続けてきた証拠である。
この機を逃してはなるものかと更に質問を続けた。
「ところでご主人の店のライバル店はどこですか?」
思った通りご主人は答えられず、依然ムッとした顔のまま考え込んでしまった。
A商店のように今まで然したるライバルもなく、
毎日平々凡々と何十年も商売を続けてきた店の最たる特徴が垣間見えてきた。
こうなればしめたものである。
落ち込んでいた気持ちが、私の挑発的な言葉で
ご主人の生来の商売好きが頭を持ち上げはじめてきたのである。
このA商店のご主人に限らず、
私が今までに訪問してきた個人商店の中で、
やる気のある商店主は総じて同じである。
「毎日が商い」の中でマンネリが生じており、
少し刺激をしてあげるだけで本来の気持ちに戻れるのである。
すかさず私は激励を込め質問を続けた。
「ご主人もう一度ガンバッテみませんか?」
「スーパーは7月オープンだから、
本当にご主人がもう一度やり直してみようという意志があるなら、
オープンの1ヶ月前までに店の体制を作り替えましょうよ」
と言ってみた。
ご主人の反応は、
「分かりました。先生がそこまで言ってくれるのなら、先生の言葉に賭けてみます」
だった。
その時の目の輝きはもう最初に会った時のそれとは雲泥の差があった。
こうなれば、あとは積極的に策を講じるだけである。
「ところでご主人は扱ってる商品の中で、最も得意とする商品は何ですか?」
「最も自分で好きな商品は何ですか?」と尋ねてみた。
要はこのような店の場合、
店主であるご主人が最も得意とする商品や好きなモノを特化していく方が、
ヒトもモノもミセも活き活きしてくるのである。
ご主人の答えは「野菜」だった。
「それでは徹底的に野菜に特化した店を作りましょう」
それがご主人と決めた結論である。
2時間の予定で訪れたA商店の診断であったが、
気が付くと4時間をとうに過ぎていた。
そして次回を2ヶ月後に約束し、A商店の初めての店舗診断を終了したのである。
ちなみに次回までのご主人と奥さんの2人に課した宿題は、
『店内をきれいにしておく』
であった。
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ヒトづくり・ミセづくり・モノづくり・マチづくりのトータルアドバイザー
人材教育・販売促進・商品開発・地域活性化の
(株)ラフィネット総合企画
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