すりガラス状肺結節
では中国の重慶医科大学からの報告を紹介しよう。
2015~2022年にかけて1328例の腫瘍性すりガラス状結節1350個と462例の非腫瘍性すりガラス状結節465個を後方視的に検討した。いずれも外科的切除され病理学的に確認された症例であり、生検やフォローアップで診断された例は含まない。結節は0.625~1 mm厚のCTですりガラス濃度でみえるもので、充実成分の有無は問わないこととした。
非腫瘍性すりガラス状結節465個の内訳は、非特異的な炎症や限局性線維化巣 (focal interstitial fibrosis) が446個、結核12個、クリプトコッカス感染3個、限局性肺胞出血4個だった。
腫瘍性すりガラス状結節1350個の内訳はAAH 95個、AIS 414個、MIA 441個、invasive adenocarcinoma 400個だった。
なお元の論文の趣旨は "Bubble-like lucency" という所見が腫瘍性すりガラス状結節によくみられたというものだ (13.0 % vs 2.6 %)。
最初は良性多すぎと思ったのだが、色々調べていくと孤立性肺結節 (solitary pulmonary nodule:SPN) の良悪性の割合については様々な報告があるようだ。
サイズや性状などにより、大分変わってくるんじゃないかと思う。
あと、この研究は一定期間で基準を決めて症例を探したようなので、良性と悪性の症例数のバランスをとったりはしてなさそうな印象だったが、"consecutive (連続する~例)" とは書いてなかった。
上記よりはnが少ないが、次のような日本からの報告もあった。
1990年3月~1999年12月に外科切除された最大腫瘍径が2 cm以下の限局性肺病変232 症例 250 病変のうち,術前のHRCTの視覚評価で病変の80%以上にGGOを呈した49 症例49病変を対象とした。
49病変中47病変 (96%) は小型肺腺癌であり、残りの2病変 (4%) はリンパ増殖性疾患 (pulmonary lymphoproliferative disorder:PLD) 1例とサルコイドーシス1例だった。
西窪美喜ら. HRCT上すりガラス濃度を呈する2 cm以下の良性肺病変の検討. 肺癌:第41巻,7号2001年12 月.
昔の報告だが、一応病変部は1~2mm厚で撮られているようだった。
まあ載ってるサルコイドーシスの画像を見たら、これすりガラスか?? とは思ったが…
充実性肺結節
充実性肺結節の良性病変についても調べてみた。
次の報告は、イタリアの大学病院の放射線科からのものだ。
2003~2013年にかけて、孤立性肺結節で紹介された患者の全ての胸部CTを後方視的に検討した。
孤立性肺結節とは (この研究では) 充実成分>80 %のものを指す。Inclusion criteriaは (個々の結節が異なる組織型を示す限り) 6個までの孤立性肺結節が存在し、薄層CTがあり、生検等で確定診断が得られている症例。縦隔条件で石灰化があるものや、同一肺葉内に1つ以上の結節があるものは除かれた。
200例の208個の孤立性肺結節が基準を満たした。このうち良性が52個 (25 %)、悪性が156個 (75 %) だった。
良性 (n=52) |
過誤腫 |
31 (14.9 %) |
|
線維化結節 |
10 (4.8 %) |
|
非結核性肉芽腫 |
5 (2.4 %) |
|
器質化肺炎 |
3 (1.4 %) |
|
ポリープ状病変 |
1 (0.5 %) |
|
炭粉沈着を伴うリンパ節 |
1 (0.5 %) |
|
胸膜の孤立性線維性腫瘍 |
1 (0.5 %) |
悪性 (n=156) |
腺癌 |
75 (36.1 %) |
|
カルチノイド |
21 (10.1 %) |
|
転移 |
24 (11.5 %) |
|
扁平上皮癌 |
20 (9.6 %) |
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神経内分泌腫瘍 |
6 (2.9 %) |
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大細胞癌 |
5 (2.4 %) |
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小細胞癌 |
2 (1.0 %) |
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扁平上皮癌と腺癌への分化が 混在する未分化なNSCLC |
1 (0.5 %) |
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粘液型軟骨肉腫 |
1 (0.5 %) |
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紡錘細胞癌 |
1 (0.5 %) |
たしかに日本呼吸器学会のHPに肺の良性腫瘍で一番多いのは過誤腫 (約 50~70 %) と書いてある。恥ずかしながら、一番多いというのは失念していた…
次の報告は、フランスのノルド病院からのものだ。
この報告は充実性肺結節だけでなく、すりガラス状肺結節も混ざっていると思うが、やはり過誤腫がまあまあ多くなっている。
2010~2020年にかけて、cStage I~IIの限局性肺癌が疑われる肺結節があり、術前の組織診断がなく、肺切除が行われた症例が1419例あった。このうちFleischner societyのガイドラインに従って手術方針が決定された1392例 (98.1 %) を後方視的に検討した。
1392例のうち、213例 (15.3 %) は最終診断が良性だった。その内訳を以下に示す。
感染 |
85例 (39.9 %) |
過誤腫 |
42例 (19.7 %) |
線維性結節 |
19例 (8.9 %) |
炎症 |
25例 (11.7 %) |
その他* |
42例 (19.7 %) |
* びまん性特発性肺神経内分泌細胞過形成(diffuse idiopathic pulmonary neuroendocrine cell hyperplasia:DIPNECH)、PECOME、偽腫瘍性病変、珪肺、血管周皮腫、肺梗塞、壊死性結節、Abrikosoff腫瘍 (顆粒細胞腫らしい)
ちなみに、その他に含まれる "PECOME" は検索しても何か分からなかった。
最初はPEComaかと思ったが…
本文を読むと結核やアスペルギローマ、サルコイドーシスなども出たようだが、たぶん感染や炎症などに含めたのではないかと思う。