一応下記の文献によれば、鑑別については
・非典型的な腎癌 (淡明細胞型、乳頭状、嫌色素)
(±肉腫様分化) (±ラブドイド分化)
・髄質癌、集合管癌
・腎盂癌: 尿路上皮癌、扁平上皮癌
・転移
・リンパ腫、白血病、形質細胞腫
などが挙がり、mimickerとして
腎盂腎炎、黄色肉芽腫性腎盂腎炎、腎梗塞、IgG4関連疾患
が挙がるとのことだ。
さて頻度については、下記の論文が一番よさそうだったのだが、有料なのでAbstractしか読めなかった。
2008~2017年にかけて画像で発見された浸潤性発育する腎腫瘤265例を後方視的に検討した。
最終診断は腎細胞癌 94例 (35 %)、高異型度の尿路上皮癌 70例 (26 %)、リンパ腫 26例 (10 %)、転移 25例 (9 %)。腎細胞癌には高悪性度の組織型49例が含まれる (肉腫様/rhabdoid/集合管癌/髄質癌/分類不能)。
お金と興味がある人は本文を読んでみてください…
さて、これで終わるのも何だかなので、色々調べたところ、タイのマヒドン大学 ラマティボディー病院からの報告があった。Pubmedに載ってなさそうな雑誌だった…
2008~2014年にかけて、「浸潤性」や「境界不整」というキーワードを含む腎病変を画像所見から検索し、16歳以上の73名の患者を認めた。最終診断は組織所見やフォローアップ、特異的な治療への反応によりなされた。情報が不完全な患者は除かれた。
尿路上皮癌 |
18例 (24.6%) |
感染 |
17例 (23.3%) |
転移 |
15例 (20.5%) |
リンパ腫 |
11例 (15.1%) |
組織不明な原発性腎腫瘍 |
4例 (5.5%) |
腎細胞癌 |
2例 (2.7%) |
感染と転移の混在 |
2例 (2.7%) |
血管筋脂肪腫 |
1例 (1.4%) |
扁平上皮癌 |
1例 (1.4%) |
IgG4関連疾患 |
1例 (1.4%) |
黄色肉芽腫性腎盂腎炎 |
1例 (1.4%) |
腎原発リンパ腫は10万人あたり0.053人らしい。1)
腎癌の発生頻度は10万人あたり2.5人程度で、集合管癌は腎悪性腫瘍の0~3 %らしい 2) ので、ざっくり計算するとリンパ腫といい勝負かずっと少ないかもしれないぐらいだろうか… (予想)。
1) J Chen, et al. Primary renal lymphoma: a population-based study in the United States, 1980–2013. Sci Rep. 2019 Oct 22;9(1):15125.
2) C Tang, et al. Incidence, Clinical Characteristics, and Survival of Collecting Duct Carcinoma of the Kidney: A Population-Based Study. Front Oncol. 2021; 11: 727222.