まず、カリフォルニア大学の研究をみてみよう。
2002~2004年にかけて、がんセンターで撮影された全CTレポートを後方視的に検討した。
55名の非硬変肝患者に、動脈相で濃染し、その後周囲と等吸収になる227個の肝腫瘤を認めた。
18名が悪性で37名が良性 (107個が悪性であり、120個が良性) と判定された。
悪性と判定された120個のうち、5個が組織診断 (2例がFNH、3例が肝腺腫)、3個が造影USでのspoked-wheel enhancement patternでFNHと診断され、8名の患者で特異的な診断が得られた。残り112個は2年以上画像で不変のため良性と判定された。
悪性と判定された107個のうち、原発性肝癌はなかった。原発巣は乳癌27例、消化器癌7例、悪性黒色腫10例、NET 45例、腎癌11例、肉腫2例、その他5例。1例は切除で確認され、残りはフォローでの増大で診断された。全例がフォロー中にリング状あるいはtarget様の不均一な像に変化した。
論文中にも触れられているように、がんセンターの研究なので一般病院より良性病変が低くなっている可能性はある。論文中では「米国国立がん研究所のデータによれば10万あたり900例の良性病変、3例のHCC、60例の転移がある」と紹介している。なお日本はHCCの好発地域なので、この割合はもっと異なっているかもしれない。
次のような研究もあった。ブラジルのオノフレ・ロペス大学病院の研究のようだ。
長径1cm以上の多血性充実性肝腫瘍88例を対象とした前方視的研究。肝硬変例や典型的な血管腫は除かれた。
88例のうち、21例はFNH (18例) や肝腺腫 (3例) として典型的な像だった。そのうち、2例で生検が、4例で手術が行われた。
残りのうち38例は悪性が疑われるか5cm以上で早急な診断が求められた。そのうち、FNHが8例、肝腺腫6例、血管腫3例、NET 4例、HCC 4例、大腸癌転移1例、胆嚢癌転移1例だった。
残りの29例は良性が疑われてフォローされたが、1例は膵NETの肝転移だった。23例は良性と考えられ、その理由は生検 (7例)、経過で縮小 (10例)、MRIで肝特異的造影効果 (4例) など。
非硬変肝に生じる乏血性病変についての研究もあった。上海の復旦大学附属華東医院の研究のようだ。
孤発性で3cm以下の乏血性肝病変を有する、145名の連続する患者のMRIを後方視的に検討した。肝硬変例や造影効果のない嚢胞は除かれ、最終的に135名がincludeされた。多くは生検や手術で確認されているが、非典型的な肝血管腫のうち20例、肝転移のうち11例は画像フォローで診断された。転移例の臨床背景は大腸癌20例、胃癌4例、膵癌2例だった。
炎症性偽腫瘍と孤立性壊死性結節 |
48例 |
非典型的な肝血管腫 |
32例 |
胆管細胞癌 |
29例 |
肝転移 |
26例 |
転移が比較的少ないような気もするが、「孤発性」に限っているので少ないのだろうか。
あと硬変肝ならDN~早期HCCや乏血性のHCCも鑑別に挙がるが、非硬変肝に限ったこの研究では1例もなかったのか…
上記の結果は鑑別を挙げる際に一応参考にはなるかもしれない。