高齢男性。USで血管腫を疑われ紹介。造影CTで肝右葉に約1cm大の早期濃染し、平衡相で不明瞭になるSOLを認めた。血管腫を疑ったが、以前の画像と比べると少し増大していたのでフォローをお願いした。1年後にUS再検され増大しており、再紹介となった。
各種検査の末、悪性が疑われ手術となった。最終診断はsmall duct typeの肝内胆管癌だった。
この他、個人的には大腸癌や膵癌、NETの単発肝転移がMRIのT2強調像で高信号を示し、血管腫との鑑別が難しい症例を経験した。PET-CTやソマトスタチンシンチグラフィが有用で診断には至ったが…
肝血管腫と誤りやすいものとして、他に何があるだろうか?
2003~2018年に外来受診し、悪性腫瘍を肝血管腫と誤診した23名を後方視的に検討した。
最終診断は下記の通り。なおこの間に1243名の患者が肝血管腫と正しく診断された。
診断の誤りの原因は、USのみで診断したこと 8例、不適切なMRI 8例、MRIの解釈不足 5例、CTの解釈不足 2例。
HCC |
12例 |
肝内胆管癌 |
4例 |
転移 (大腸癌、間葉系腫瘍、NEC、原発不明癌 各1例) |
4例 |
血管肉腫 |
1例 |
肉腫様肝細胞癌 |
1例 |
胸壁腫瘍 |
1例 |
MB Yıldırım, et al. Malignant Tumors Misdiagnosed as Liver Hemangiomas. Front Surg. 2021; 8: 715429.
この研究はinclusion criteriaなどをしっかり設定して行われた研究ではない。この期間に誤診された23名がいたと紹介されるだけだ。
最後のlimitationにも書かれているが、これで誤診の頻度が分かるわけではない。
ただ一応単純計算してみると、23/1243=1.9 %となる。
血管腫の診断エラーは稀な事象と思われるので、しっかりとしたデータを集めるのは難しそうだ。ただ誤診された疾患のリストは参考になるね。