高齢男性。USで血管腫を疑われ紹介。造影CTで肝右葉に約1cm大の早期濃染し、平衡相で不明瞭になるSOLを認めた。血管腫を疑ったが、以前の画像と比べると少し増大していたのでフォローをお願いした。1年後にUS再検され増大しており、再紹介となった。
各種検査の末、悪性が疑われ手術となった。最終診断はsmall duct typeの肝内胆管癌だった。

 

この他、個人的には大腸癌や膵癌、NETの単発肝転移がMRIのT2強調像で高信号を示し、血管腫との鑑別が難しい症例を経験した。PET-CTやソマトスタチンシンチグラフィが有用で診断には至ったが…

 

肝血管腫と誤りやすいものとして、他に何があるだろうか?

 

肝血管腫と間違われうるものとして細胆管細胞癌が知られているね。

古賀由里恵. 日消誌 2012; 109:231-239.

 

さて、次のイスタンブール大学の報告を紹介しよう。

 

 

2003~2018年に外来受診し、悪性腫瘍を肝血管腫と誤診した23名を後方視的に検討した。

最終診断は下記の通り。なおこの間に1243名の患者が肝血管腫と正しく診断された。

診断の誤りの原因は、USのみで診断したこと 8例、不適切なMRI 8例、MRIの解釈不足 5例、CTの解釈不足 2例。

 

HCC

12

肝内胆管癌

4

転移 (大腸癌、間葉系腫瘍、NEC、原発不明癌 各1例)

4

血管肉腫

1

肉腫様肝細胞癌

1

胸壁腫瘍

1

 

MB Yıldırım, et al. Malignant Tumors Misdiagnosed as Liver Hemangiomas. Front Surg. 2021; 8: 715429.

 

この研究はinclusion criteriaなどをしっかり設定して行われた研究ではない。この期間に誤診された23名がいたと紹介されるだけだ。

最後のlimitationにも書かれているが、これで誤診の頻度が分かるわけではない。

ただ一応単純計算してみると、23/1243=1.9 %となる。

 

血管腫の診断エラーは稀な事象と思われるので、しっかりとしたデータを集めるのは難しそうだ。ただ誤診された疾患のリストは参考になるね。