アスタはひとり 広大な空間に立っていた
呑み込まれた井戸の奥へと 吐き出されて来たのか
嫌それも定かではない
一体何が起こったと言うのだ 闇はどこへ
ここは・・・
カイドルは・・・
ヒルバは・・・
また闇に切り裂かれ 遠ざけられたのか・・・
風が吹き その中で
カルマの鳴る音と サックベンの焼ける匂いが
微かに漂ったかに感じた
ここは・・・
ラムの村なのか・・・何もない 誰もいない・・・
村が消えた遠い時の先に来てしまったのか
それとも村が生まれる遥か彼方の過去なのか
その時 空の彼方の高い所から 一つの視線を感じた
オリエ お前なのか
何故俺を見る なぜただ見ている
助けもせず 手を出す事も無く
ただ見るだけなのか お前は・・・
ダンッ と体が浮き
また例のチカチカとした点滅 赤 青 白 黄
体に感じる電極の数々
「ダニエル1号 失敗だ やり直そう」
ダンッと体が落ち 元の場所に立っていた
お前らは何者なんだ! オリエお前なのか!
嫌しかし オリエの視線は 更にもっと高い所にあった
遥かに高い所から 全体を見届けていた
すべての出来事を ただ見ていた
「全ては生まれ 消失せる
汝 オレイコスを呑み
暗黒の海へと身を委ねよ」
誕生と消滅 繰り返す輪廻 また生まれ消え失せる
繰り返す 繰り返す 何度も 何度も
この意味は何だ
何もない空間
再び眼前に目をやると 真っ暗な海が静かに波打っている
足元に目をやると 僅かに鈍く光る オレイコスの砂
オレイコス 彼の井戸の淵に有った物質
俺はあの井戸から ここに導かれてきたのか
俺の存在の意味は・・・ そうなんだな
俺にそれをさせようというのだな お前ら!
そう言うとアスタは 心を静め 意を決した
そして足元のオレイコスの砂を ガッと掴んで吞み干し
暗黒の海へと 身を進めて行った
アスタの体は いつかの幻影の如く
細胞の一つ一つがゾワゾワと動き
分解され 細分化され
血も肉も骨も臓物も
岩が砕けて石となり砂となってゆくように
原子となり 素粒子となり
そして有機物となって 暗黒の海に身を委ね 溶けて行った
繰り返す繰り返す 幾度も幾度も 時の果てのその先までも
空の彼方上からは オリエが ただただそれを見ていた
ただただ 全てを見ていた
暗黒の海が 束の間動いた
オレイコスの砂が 一瞬
踊るように舞い上がったかに見えた・・・
その後・・・
数え切れぬほどの年月と空間を越えた後
ラムの村の第2恒星δ(デルタ)は
自らの遠心力で弾き飛ばされ
第5周期を回る惑星となった
そして・・・
更にそれから 幾百億の時と
幾千万の空間を越えた後
第3惑星γ(ガンマ)は・・・・
地球・・・と呼ばれるようになった・・・
「全ては生まれ 消失せる・・・」
(終続・・・)
くり返す 何度も 何度も・・・