前田和守~rabypooh~のブログ

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エッセイ・詩・日記など気ままに書いています。

ドドドドウドウ と地が波打った

 

ドドドドドドドドドウドウドウ ドドドドドドドドドウドウドウ

次第に大きく激しく 地が動いた

 

海が騒ぎ 川が逆流し 森はガタガタと身震いした

 

復活祭に沸き立つ民衆の足下で

広場の地が 心臓の鼓動のように ドクドクと脈打ち始めた

 

アスタの棺も 荒波に揉まれる舟の如く

地が大きくうねり ドガガンと音を上げる

アスタは投げ出されぬよう シッカとしがみついた

胸にはオポッサムが しがみついた

 

「皆の者 ひるむでない

  今こそ 我ら 復活の時

   エルカシアの力を 見せつけるのだ」

 

女王フルナが叫んだ時

ベリベリベリベリ ビシシシュルウ

広場の地のそこここから 無数の木の根のようなものが

鞭のようにしなりながら 突き出てきた

まるで心臓から伸びる血管のようだ

広場の地は 更に激しく ドクンドクンと脈打ち始めた

 

「これは・・・」

恐怖に怯えるアスタ

「アスタ これからだ」

オポッサムが 脳に呼びかける

 

地から伸びた無数の 「血管」 は

一斉に神殿の奥へと シュルルルと伸びていく

 

「我は救われる 生き延びる 選ばれるのだ

  ハーッハハハハッハハハッハッ」

 

狂喜のように笑うフルナを 「血管」が掴んだ

「ウギュアアあアアあぁアアアあァぁァァァァーーー」

恐怖とも喜びともとれぬ叫び声を上げながら

神殿の奥へと 連れ去られて行った

 

「何が起こる」

「俺にも分からん」

またオポッサムが 脳に語りかける

 

と その時

ガッガガガガドゥガガガーーーーーーーン

神殿がガラガラと崩れ

奥から 女神(めしん)プラツマの姿が現れてきた

 

広場の心臓から伸びた血管が プラツマに血を送り

今 この女神(めしん)を蘇らせたのだ

滅びの予言を 現実の物とする為に

 

「全ては生まれ 消滅せる・・・」

 

例の 「意識」 が脳内に蘇る

 

「世に滅びの道筋成す

 滅びの道筋・・・消失せる・・・

  全ては・・・消失・・・生まれ・・・滅び・・・」

 

「記憶の彼方を探れ!」

 

一際激しく 「意識」 が突き抜けた

細胞が激しく振動し 時間が・・・止まった

 

プラツマも群衆も草木花達も

炎も地の鼓動も ・・・全てが止まった

 

「ダニエル・・・1号・・・フェ・・ズ・・・3・・」

 

静寂の中 低く響く声・・・

 

アスタは記憶の壁を突き抜け

その奥へと 静かに落ちていった・・・

 

 

 

(つづく・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「加速している」

 

低く響くような声が聞こえた

アスタは棺の中で 深い眠りにありながら

脳内では 激しく出口を探していた

 

バン と一瞬 体が浮いた

目を開く

棺は透明なカプセルとなり 赤 緑 オレンジ 白

いくつもの 電光が チカチカと 目に飛び込む

頭や 体中に刺さるのは 電極なのか

 

あぁ と声を上げるより早く

バン と体が落ちて行った

 

「ダニエル1号 フェーズ2」

 

再び 低く響くような声

 

「誰だ!」

アスタは 棺の中にいた

脳が一瞬の幻を見せたのか

 

「アスタ 戻れ 目を覚ませ」

 

今度は 耳元すぐ近くで 甲高い声が呼び掛けた

 

「アスタ 戻れ!」

 

耳元・・・いや 脳波に直接呼びかけてくるようだ

甲高い声で脳波を揺さぶられ

アスタは今 現実に目を覚ました

渾身の力で 棺の蓋をぶち破る

 

棺の傍らには ジャングルの小動物オポッサムが

こいつが呼び掛けたのか

目が異様に大きく 鼻のとがった小動物オポッサム

何かを訴えかけるように こちらを見ている

 

「アスタ 止まるな!」

 

再び甲高い声が脳内に響いた

オポッサムが飛び乗ってきた

 

棺の周りには サックベンを燃やし

民族楽器を鳴らし 踊り歌う エルカシアの民たち

 

これは・・・!

 

これは ラムの 祝祭の日ではないか!

アスタは悟った

祝祭の日 ・・・ それは ・・・ 

選ばれ生き延びて 復活したことを祝う日・・・

ラムの一族もまた 幾多の生贄の命と引き換えに

幾度もの滅亡を逃れ 生きながらえてきた種族だったのか

排除し 切り捨て 蹴落として 生き延びた ・・・

 

「知ってしまったら もう戻れない アスタ 進むんだ!」

 

三度オポッサムが 呼びかける

 

「今宵は復活祭 

 来るべき滅亡の時に備え

 生贄の命と引き換えに 再び復活せる事を

 祈ろうではないか!」

 

女王フルナの声が響いた

棺を囲み 民衆が歓喜に沸き立った

 

 

 

 

(つづく・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神殿の広場に 火が放たれた

アスタは今 深い眠りの奥で 夢を見ていた

 

  アスタ アスタ アスタ ・・・

   兄さん 兄さん 兄さん ・・・

    ここよ ここよ ここよ ・・・

 

    森の中 木が倒れる そしてまた

      フィードバック 割れる空 奥の闇 ・・・

 

神殿の火が 棺に迫る 煙が忍びよる

棺の蓋の隙間から 煙が生き物のように ぬめり込む

アスタの体を 包み始めた

 

   これは この煙は ・・・ サックベン

   サックベンが焼ける臭い ・・・

 

炎に乗せて エルカシアの民が 歌い踊る

民族楽器が 鳴り響く

 

   「記憶の彼方を 探れ

     全ては生まれ 消失せる」

 

また 何者かの意識が よぎった

 

  記憶の彼方 ・・・ 記憶の彼方 ・・・

 

アスタは 眠りの深い場所で 記憶の溝に降りて行った

しかし そこにあるものは ・・・ それは ・・・

 

アスタは 泥沼に足を取られたように 先へは進めなくなった

そこにあるのは壁 防護壁のような壁で蓋をされ

それ以上の奥へは 容易に降りていけない

何故だ 記憶の壁 ・・・この奥に・・・

 

フィードバックする記憶の中で

アスタは気づいた 自己同一性消失の恐怖に

 

アスタの記憶 それはあの日

ラムの寝床で 二つの恒星ミリタルとδ(デルタ)の光に包まれ

カルマの音色で目覚めた

あの時が始まりであった それより以前の記憶は無い

その前には 一体何が ・・・

記憶の初めの目覚めの時 あの時も傍らに 下僕オリエがいた

何故 ・・・ 何故だ ・・・ なぜ記憶の初めにオリエが ・・・

 

この記憶の先には 一体何が ・・・

自分はいったい 何者なのだ ・・・

 

 

 

 

 

(つづく・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドーズ ドラ ディフイデル

 スタランデフ イゲリデン

 

(選ばれし者 今ここに 神に捧げん)

 

神殿に向かい 女王フルナが祈りを捧げた時

一匹の針のある羽虫が アスタの腕を射した

 

ドーズ ドラ ディフイデル !!

 スタランデフ イゲリデン !!

 

ドーズ ドラ ディフイデル !!!

 スタランデフ イゲリデン !!!

 

ドーズ ドラ ディフイデル !!!!

 スタランデフ イゲリデン !!!!

 

フルナに続き 群衆が一斉に声を上げた

アスタはそのまま 眠りに落ちてしまった

 

 

神殿の奥に祀られていたのは

女神(めしん)プラツマ

滅びの時に姿を現し

人々を救いに導くと言われている 救世神

そして女王フルナは その直系の子孫であった

 

今 フルナは民衆の前に立ち 宣言する

 

エルカシアの民よ 

我らエルカシアは 選ばれたる種族

幾多の滅びの時を超え 生き延びてきた

 

天変地異 疫病の蔓延 殺し合い 飢餓 人工物の逆襲

 

その度 女神(めしん)プラツマ様に選ばれ 救われ 生き延びてきた

我らエルカシアこそが 選ばれし種族

 

さあここに 生け贄を捧げ 次なる滅びの時に備え

再び救われ 生き延びる事を 祈ろうではないか!

 

植物たちや民衆が 一斉に歓声を上げた

 

 

フルナは 女神(めしん)プラツマに向き合い 言葉を続けた

 

お母様 生け贄を捧げます

屈強で 機知に富み 行動力があり 恐れを知らない

選ばれし生け贄を 連れて参りました

どうぞ お受け取り下さい

 

 

今 アスタは棺の中に居た

「選ばれし生け贄」として・・・

 

 

 

 

(つづく・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オリエが姿を現した日から 更に数えて

四つ目の夜を越えて 二つ目の朝が訪れた時

オリエはゆっくりと空に昇り 姿を消した

しかし姿が消えても 視線は消えなかった

どこだ! 背後か! 頭上か! 行く先か!

それとも この体の内側からか!

何故見る! 何故黙ってただ見ている!

答えは返って来なかった。

下僕オリエ お前は一体 何者だ・・・

 

他の者に オリエは見えていないのか!?

何故 俺を見る! 俺の何を見ている!?

 

アスタの問いが 空に消え

更に ひとつの夜を越えた時

帆船がようやく 陸にたどり着いた

そこは 熱帯樹がうっそうと茂るジャングルで

惑星γ上の未知の地なのか 他の星に来てしまったのか

はたまた 違う次元空間なのか

それすら分からぬ

太陽は 巨大な緑色に輝き 月は六つあり

昼と夜は複雑に交錯していた

 

辿り着いたジャングルは

口のある樹木や 手のある草 足のある苔が生い茂り

羽のある花が 空を覆んばかりに 咲き誇り飛んでいた

 

「お帰りなさい! 女王フルナ様!」

「お帰りなさい! みな様!」

「御無事のご帰還 おめでとうございます!」

「おめでとう!おめでとう!」

 

帆船が ジャングルに流れる川の 巨大な河口に近づいた時

口のある樹木が 一斉に歓声を上げた

手のある草は 拍手をし

足のある苔は ジャングル中に 知らせに走った

羽のある花は 女王フルナの髪や腕に留まり

飛びながら 船員達に 蜜を配った

帆船は 花で覆われ 

帰還の祝いに包まれた

 

帆船はそのまま 川を遡り

ジャングルの奥へと 進んで行った

 

辿り着いた先には 神殿が ここは

女王フルナが統治する エルカシア国の中心部であった

熱帯樹の国エルカシア 生命あふれる南国エルカシア

その中心部である神殿で待っていたのは

さらに多くのエルカシア人達

樹木 草 苔 花 らと共に 

女王と船員達を 歓喜で 迎え入れた

 

 

 

 

(つづく・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Welcome Welcome Welcome boy

 

ようこそ 我が君 輝ける 勝者よ

選ばれし者 共に祝おう

貴方は 全てを 超越された

 

我らと共に いざ行かん

 

Welcom Welcom Welcom boy

 

さあ共に  我と共に

さあ行かん  我と共に

 

選ばれし君 輝ける勝者よ

 

こちらへ  おいで

   こちらへ  おいで

 

Come on togeter

          Here we are

 

 

歓迎の歌は 幾百千の時間を越えるまで続いた

 

「お前らは誰だ!?」

「どこへ行くのだ!?」

「ヒルバはどこに!?」

 

何を尋ねても 歌うばかりで埒が明かない

歌いながら 船の舵を取り 食事を作り

甲板を磨き 釣りをし アスタをもてなした

 

歓迎の歌は続いた 幾晩も 幾日も

 

女王フルナは この上もなく美しく

背丈は ブナの木ほども大きく

手足は 龍のように長くしなやかで

髪は羽毛のように柔らかく

体は 内臓が透けて見えていた

 

フルナは 日に五回

自らの纏った衣で アスタを包み

歓迎の歌を 歌い続けた

 

六つの昼と 九つの夜を超えた時

海の彼方に 陸が現れた

 

フルナの衣に包まれたまま

彼方の陸を見つめるアスタは ・・・ !!

何故だ!! 何故そこに ・・・!!

 

陸を目指す帆船の 船首のその先

400mの先に  ・・・・・  オリエ ・・・・

宙に浮くように こちらを見ていた ・・・

 

 

 

 

 

(つづく・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドドドドドド ドゥドゥドゥドゥ ズググガガ

 

オレイコスが井戸の底に落ちた時

地鳴りと地響きが 井戸の深い闇の底から上がってきた

地鳴りは地面を大きく揺るがし

アスタとヒルバは 井戸の淵に突っ伏した

 

ドガガガガブン ドグルルルジャジュジュ

ザザザザドゥルルル ザザザバババゴゴゴ

ザババババザザガン ザブブルガバジァーン

ドガバジャガバドジャガバザザーーーーーン

 

アスタとヒルバが 井戸にしがみ付いた時

ひときは大きく 地面が揺らぎ

高鳴る地鳴りと 激しい濁流と共に

井戸の底から 巨大な帆船が 海を引き連れたまま現れ出た

あたり一面は 束の間にして 海に呑まれていった

 

・・・ これは 本当だろうか ・・・

・・・ これは 本当に海なのだろうか ・・・

・・・ 僕の 脳が 海を見ているだけだ ・・・

 

しかし アスタの体は 海に呑まれ 塩水を飲み 

このままでは 溺れてしまう 考えるな 進め!

 

Welcome  Welcome Welcome boy

Congratulation Saint boy

You are The Winner

The Holy Sinner

 

Welcome Welcome Welcome boy

Congretulation Little Saint

You transcended all of things

 

Come on together

Here We Are

 

Welcome Welcome Welcome boy

                ・・・ come here

Welcome Welcome Welcome boy

              ・・・ come here

Welcome Welcome Welcome boy

                 ・・・ come here

 

船上では無数の見知らぬ住人たちが

艶やかに 歓迎の歌を 歌い踊っていた

まるで ミュージカルの一場面のように

幸福を感じる 歌声とメロディ

アスタの目にも耳にも届くその音色

体が溶けるような 緩やかな快感に包まれた

 

Welcome LUCKY BOY

Come here WINNER

 

帆船の中央で ひときわ 大きく 艶やかに

歌い踊る その人物こそ

この種族の女王フルナであった

 

I'm here   come here

     I'm here  come here

 

歌いながら 女王の手が

海上のアスタの方へ ヒュルル と伸びていった

アスタは 恍惚のままに 抱き上げられ

船上へと 招かれて行った

 

 

 

「ヒルバは? ヒルバはどこだ? ヒルバ?」

甲板で我に返ったアスタは ヒルバがいない事に気づいた

 

 

 

ヒルバは・・・波に呑まれ・・・姿を消していた・・・

 

 

 

 

 

(つづく・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

青白い光を目指し アスタとヒルバは急ぐ

岩石のように大きく張った根を よじ登ると

またその先には 幾つもの根 岩場のような根

その向こうに青白い光を放つ オレイコスの井戸は

二人を導くかのように ひときわ輝きを増した

 

二人が 次の根を超えようとした時

その光が 突如方向を変え こちら側へ 迫って来た

光は アスタとヒルバを 貫くように射した

押し返されるような圧力を感じる

次第に光は 円径を広げ 二人を呑み込み

大きな空間の中に 二人を取り込んで行った

 

その時 二人には 聞こえた

微かな声であったが 確かに聞こえた

あの 「意識」 の声

 

 「記憶の彼方を探れ

   すべては生まれ消失せる

     汝 オレイコスを呑み

      暗黒の海へと身を委ねよ」

 

 「千億の時を経て

   生きながらえし 樹木の根

    水蘇り 汝導かん」

 

 

 ・・・・・・ 水蘇り 汝導かん ・・・・・・

 

 

この光の先に オレイコスの井戸が

そして そこには何が・・・

 

光の圧力に押され 容易に前に進めぬ

岩石の根を這うように よじ登り その嶺を越え

次の根めざし 谷部へ 滑り落ちる時

アスタは感じた この光の圧力の秘密

これは一定ではない

光は 幾つもの 「束」 の集まりなのだ

束と束の間には 僅かな 「隙間」 が有る筈だ

その隙間に潜り込むようにして 進む!

 

「ヒルバ 行くぞ!」

 

ヒルバはアスタの腹に しっかとしがみ付いた

押し返す光の束の隙間に 手を差し込み

腕 肩 頭 ・・・ と徐々に入り込んでいく

そして全身が潜り込んだ時 体が ふわと 宙に浮いた

 

「あ!しまった!押し戻される・・・」

 

しかし逆に 前に吸い寄せられて行く

だまし討ちのように 理解が追い付かない

何が起きたか分かったのは 数秒後の事だった

徐々にスピードを増し 岩根を超え

光の 「束」 の中を 井戸に向かい ・・・ 落ちていく ・・・

光は再び 向きを変え 天を射していた

真下に オレイコスの井戸が 青白く光る 井戸が

 

一瞬の出来事だったのか 気付くと

二人は井戸の脇に立ち 

光の束は 井戸の ある一カ所に収束していた

チロチロと青白く光る ひとつの石

いや 石と呼んで良いものか

しっかと硬いが 触ると弾力がある

撫でると形が変わってゆく

固体なのか 液体なのが 判別がつかぬ

この 「物体」 こそが オレイコスなのであった!

青白い光を残したオレイコス

それが ビリビリと二人を 呼んでいるように聞こえた

チューニングのズレたラヂオをように

 

「これだアスタ、あの光だ!あそこから声が!」

 

ヒルバに促され アスタは 手を伸ばしす

あの光 あの青白い光 あそこへ・・・

身を乗り出し 井戸の中へ落ちんばかりに踏ん張り

そこへ その光へ・・・

・・・あと2cm・・・あと1cm・・あと5mm・・2mm・・1mm・・・

ようやく指先が届いた もうひと息で・・・ 

掴んだ! 青白く光る・・・オ・レ・・イ・・・コ・・・・ス・・・・・

しかしその瞬間 オレイコスはグニャリと グミのように動き

ジュルジュル ジャラジャラ シャリリリリ

と液体となり 井戸の底へ落ちていった

 

ぽちゃ・・・・・・・・・・・・ん

 

ドドドドドドドドド ドドドドドドドドド ドドドドドドドドド

ドゥドゥドゥドゥドゥドゥドゥドゥドゥドゥドゥドゥドゥドゥドゥ

ズグググガガガガ ズグググガガガガ

 

井戸の底から 地鳴りが上がってきた

奥から次第に上へ アスタとヒルバの所へ

地鳴りとともに 足元が揺れだした

 

ドドドドドドドドド ドドドドドドドドド ドドドドドドドドド

ドゥドゥドゥドゥドゥドゥドゥドゥドゥドゥドゥドゥドゥドゥドゥ

ズグググガガガガ ズグググガガガガ

 

 

 

 

 

 

 

(つづく・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

認識とは、脳の情報処理がもたらす

ひとつの結果に過ぎない・・・

 

 

アスタが見たものは・・・

アスタを取り囲む見知らぬ群衆は・・・

それは・・・本当に・・・見知らぬ人々だったのだろうか・・・

 

脳の情報処理・・・

何らかの力で、アスタの脳の情報処理システムが組み変わったとしたら・・・

同じ人物が違う人物に見える事もあり得る

アスタには 空が燃え落ちたように見えたのも

群衆がそれに気づかなかったのも・・・

やはり脳の情報処理の誤作動なのか

いや そもそも 人物も村も 初めから無かったとしても

全ては電気信号が脳に与えた 単なる刺激だったとしても

それを証明する術は どこにも無い

 

ただ確かな事は アスタがそこに居て

家族・友人と思っていた存在が

見知らぬ群衆に変貌し

空が燃え 村が焼け 暗黒に呑まれていく様を・・・

見た! 確かに見た!

 

それが現実なのかどうかではない

自分が確かに見て感じた!

その事だけが 「事実」 なのだ!

 

ヒルバも また然り

燃えてゆく村 追ってくる炎

確かにそれを見た!感じた!

 

逃げる! 逃げるんだ!

 

二人に今いえる確かな事はそれだけだ

 

飛び急ぐヒルバ 後を追うアスタ

炎と闇が迫る!

オレイコスの井戸へ!

 

「アスタ走れ!こっちだ!」

ヒルバはサックベンの森へ突っ込んで行った

それを追うアスタ

枝や葉をなぎ倒し 森を突き抜けて行く

 

「この先だ!」

森を突き抜けた先には 湖が

その上を飛び急ぐヒルバ

「アスタ泳げ!」

 

水に飛び込むと 足甲は尾ビレとなり

息もせず 魚のように 水中を切り裂いて行く

ようやく泳ぎ渡ったアスタの肩に乗り

ヒルバは続ける

  「千億の時を経て

     生きながらえし樹木の根

        水蘇り 汝導かん」

 

受け取った 「意識」 の続きだ

千億年の時を経て 生きながらえし樹木・・・

湖を越えた二人の目の前に まさに その樹木

大木と言うには 余りに大きい

断崖の山のような 見果てぬほどの巨大な 幹 

枝が 静脈のように 細胞のように

まとわりつき 生えている

 

足元には 大きく張った 岩のような根

 

「樹木の根本だ!」

ヒルバが叫ぶ

すると根本の1個所から 青白い光が放ち始めた

これこそが 「オレイコスの井戸」 であった

千億年の時を経て育った樹木とともに

樹木が生んだ井戸

樹木は この井戸から 水を吸い上げ 生きながらえた

数億年もの昔 水を吸い尽くし 井戸が枯れた時

樹木は 今度は 湖を作り 水をたたえ 生き続けた

その水によって サックベンの森ができ

様々な草木 生き物 が育ち 

井戸を 樹木を 隠してきた

 

青白く光る根元を目指し

二人は急ぐ

オレイコスの井戸!

 

 

 

しかし もうひとり オレイコスの井戸を

目指している者がいた・・・

どうやって 湖を渡ったものか

濡れてもいない 飛んでもいない

ふたりの 400m 後ろに ピタリと追いて・・・

 

 

 

 

 

オリエ

 

 

 

 

 

ただ黙って ジッと見ていた・・・

 

 

 

 

 

 

(つづく・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「記憶の彼方を探れ

 全ては ・・・ 消失 せる・・・」

 

閃光が体を突き抜けた瞬時

アスタは自分の奥で 何かが動くのを感じた

動く ・・・ 組み変わる ・・・ 変換する ・・・

何と表して良いか分からぬ 奇妙な感覚

体の奥の 意識の届かぬ場所で 何かが起こっている

これは ・・・

 

自分の奥の何かに 怯え 捕まり 蝋のように身じろぎも出来ぬ

 

天に達した炎は ・・・ ゆっくりと ・・・ 空を ・・・ 燃やし始めた

 

アスタは 硬直したまま 視線を外すことも出来ず

空が燃えてゆくのを ただ見ていた ただただ見ていた

これは ・・・

 

「アスタ!」

 

自分を激しく呼ぶ声で ようやく我に返る

我 ・・・ もはや ・・・ 我とは誰なのか ・・・ 我とは何者か

ようやく視線が動き 声の主を見ると

それは 一番下の弟ヒルバであった

アスタの肩に乗り 麻酔の眠りから呼び起こすように

耳元で 激しくアスタを呼んでいた

 

「アスタ!」 再びヒルバが叫ぶ

「目覚めの時だ!予兆は本当だった!この事だったんだ!」

 

ヒルバが何の事を言っているのか 瞬時に飲み込む事は出来なかった

しかし 周りに散在する 家族 仲間 住人達に目を移した時 ・・・

戦慄が走り 体が 感情が 震えるのを感じた

 

アスタが見たのは ・・・ 見知らぬ人人人 ・・・ この人達は ・・・

いや そこに居るのは 確かに 家族 友人 隣人 ・・・ 心許しあってきた人達 ・・・ の筈だ

しかし その顔が挿げ変わり 見知らぬ集団となっている

 

   この人達は誰だ ・・・

   ここは ・・・ どこだ ・・・

 

恐怖と孤独が落ちてきた

アスタが幼少時より時折感じていた違和感が 今

確固たる現実として 目の前に現れていた

 

「ヒルバ ヒルバ ・・・」

 

恐怖と孤独の中 アスタは肩の上のヒルバを見た

 

「ヒルバ ・・・ お前は ・・・」

 

ヒルバは ヒルバだけは 以前と変わらぬヒルバのままであった

 

「ヒルバ!これは・・・」

「分からん。けれどこれは ・・・ 夢の通りだ!夢が現れた!」

 

  世に滅びの道筋成す 

   失われし知の島を目指せ

    オレイコスの井戸の底

     夢の彼方を見定めよ

 

ヒルバも何者かの「意識」を受け取っていた

他にも受け取った者はいないのか!

 

炎は勢いを増し 既に空の半分が焼け落ちていた

群衆はそれに気付いていないのか ・・・ !!

変わらず祝祭を続けている

笑い 歌い 踊り 奏で はしゃぎ 弾み 

炎は遂に地に達し 村を燃やし始めた

 

「アスタ!滅びだ!滅びの道筋だ!」

  

   全ては生まれ 消失せる ・・・

 

アスタが受け取った「意識」も 同じ意味を示唆していた

 

瞬く間に村を燃やし ラムに達した炎は 人々をも包み始めた

炎の先には 暗黒の闇が ・・・

 

「アスタ!こっちだ! ・・・オレイコスの井戸・・・」

先に立って飛び急ぐヒルバの後を

アスタは必死で追った

炎と闇が 「現実」を呑み込みながら

勢いを増して迫ってきた

 

 

 

 

(つづく・・・)