アメリカは「封じ込め政策」に舵をきった | 方丈随想録

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"Foreign Affairs" というアメリカの外交関係に関する論文を集めた雑誌がある。紙媒体としては丸善の洋書コーナーに置かれていた。現在は電子版がメインなのだろう。サービスとして無料でいくつかの論文が読めるようにしてくれている。辞書を片手に読んで、最後は「労に対して功が少ない」という印象が多い。

ところで、3月6日付けの複数の執筆者連名による論文が掲載されたのが小生の注意を引いた。

タイトルは"America's New Twilight Struggle With Russia"で、副題は"To Prevail,Washington Must Revive Containment"である。執筆者はCSIS所属のBergmannとMankoff、アメリカ・カトリック大のKimmage、ジョージタウン大のSnegovayaの四氏である。同一論文で四名の共同執筆という点が特徴的だ。彼らの主張はアメリカ外交の共通理解というか共通認識になりうる可能性が高いと感じた。

彼らの主張はごく単純で、冷戦時代は米ソの全面対決避けつつ、同時に融和政策に陥ることもなく、中道政策としての「封じ込め政策」がジョージ=ケナンによって主張され、その主張が政策として採用されたが、今日、改めて対ロシア「封じ込め政策」を採用すべきだ、というものだ。それは対中国政策にも有効的に関連する、という。

ロシアは現在ウクライナを侵略中であるし、もしウクライナ戦争にロシアが勝てば、ロシアは更に冒険主義的な侵略戦争に打って出るだろう、と予測するのは当然だろう。中国は習近平の下ではっきり覇権主義政策をとり、南シナ海からインド洋、更には南太平洋にまで影響力を広げている。保有空母の隻数と艦艇の増大ぶりは顕著で、アメリカの海上覇権を崩そうと懸命である様子が窺われる。

したがって、アメリカの外交政策としては「封じ込め政策」が追及されて当然であろう。当然のことを複数の研究者が論文の形で表明したことが重要なのだ。外交論文は普通は”opinion”として扱われるが、共同論文ともなれば”public opinion"となり、やがて"principle"になることを見込んだものではないだろうか。

今年はアメリカの大統領選挙の年だが、共和党と民主党のいづれから大統領が出たとしても、来年からのアメリカの外交は明白な「封じ込め政策」が大胆に展開されるのではないかと感じた。

方針を定めたらとことん突き進むのがアメリカの外交だ。風向きの変化を教えてくれる論文なのではないかと思う。