昨日の夜まであんなに元気だったのに、朝起きたら突然激しい吐き気に襲われてベッドから起き上がれなくなってしまった。あるいは、急なお腹の痛みと下痢が止まらなくなってしまった…という経験、皆さんはありませんか?

気温が下がる冬の時期や、季節の変わり目などに流行しやすく、大人でも子どもでも本当につらい思いをするのが、こうしたお腹の風邪、つまり「ウイルス性腸炎(ウイルス性胃腸炎)」です。

自分自身がなってしまうのもつらいですが、小さなお子さんやご高齢の方がいるご家庭では、家族が感染した時の不安や看病の負担は本当に大きいですよね。急な体調不良の恐ろしさには、いつもハラハラさせられます。

いざという時に慌てないためには、日頃から正しい知識を持っておくことが大切です。そこで今回は、ウイルス性腸炎の基本的なメカニズムから、家庭でできる具体的な対処法、そして家族への感染拡大を防ぐためのポイントを詳しくまとめてみました。

 

■ ウイルス性腸炎とは?その主な原因

ウイルス性腸炎とは、その名の通りウイルスが胃や腸などの消化管に感染して炎症を起こす病気のことです。一般的には「感染性胃腸炎」や「お腹の風邪」と呼ばれることも多いですね。

原因となるウイルスには、実はいくつかの種類があります。最も有名なのが、冬場に大流行を引き起こすことで知られる「ノロウイルス」や、主に乳幼児に多く見られ、白い便が出ることがある「ロタウイルス」です。他にも、アデノウイルスやサポウイルスなどが原因となって腸炎を引き起こすこともあります。

これらのウイルスに共通しているのは、非常に感染力が強いということです。ごくわずかなウイルスが体内に入るだけで発症してしまうため、集団生活の場や家庭内で一気に広がりやすいのが厄介な特徴です。

 

■ 主な症状と回復までの期間

感染するウイルスの種類や個人の免疫力によって多少の違いはありますが、代表的な症状は嘔吐、下痢、吐き気、激しい腹痛です。また、38度前後の発熱を伴うことや、全身の強い倦怠感、悪寒を感じることも珍しくありません。

ノロウイルスの場合は、突然の激しい吐き気と嘔吐から始まることが多く、ロタウイルスの場合は、水のような激しい下痢が何日も続く傾向があると言われています。今回少し調べたのですが、症状のピークは発症から1日から2日程度で、多くの場合、数日から1週間ほどで自然に回復へと向かうそうです。

ただ、症状が治まっても、便の中には1週間から数週間ほどウイルスが排出され続けることがあるため、回復後もしばらくは衛生管理に注意を払う必要があります。

 

■ どうやって感染するの?

ウイルス性腸炎の主な感染経路は「経口感染」です。ウイルスが付着した手で食事をしたり、口の周りを触ったりすることで体内に入り込みます。

また、感染した人の嘔吐物や便には、目に見えない大量のウイルスが含まれています。その処理をする際に手にウイルスがついてしまったり、乾燥した嘔吐物の飛沫からウイルスが空気中に舞い上がり、それを吸い込んで感染してしまう(飛沫感染)こともあります。

さらに、カキなどの二枚貝にノロウイルスが蓄積されていることがあり、それを生で食べたり、中心部までの加熱が不十分な状態で食べたりすることで感染する食中毒のケースもよく知られています。

 

■ 家庭でできるケア:一番大切なのは「水分補給」

ウイルス性腸炎に対する特効薬、つまりウイルスを直接退治するような薬は、現在のところ存在しません。そのため、治療は自分の免疫力がウイルスを体外へ排出してくれるのを待つ「対症療法」が基本となります。

この看病の時に一番気をつけなければならないのが「脱水症状」です。嘔吐と下痢を繰り返すことで、体内の水分と大切な電解質(塩分など)が急激に失われてしまいます。

・水分の摂り方のコツ 吐き気が強い時は、焦って無理にたくさん飲ませると胃が刺激されて再び吐いてしまいます。吐いた直後は30分から1時間ほど胃を休ませてください。少し落ち着いてきたら、経口補水液(OS-1など)や常温のスポーツドリンク、湯冷ましなどを、ティースプーン1杯程度から少しずつ、5分から10分おきにこまめに飲ませるようにします。

・食事について 下痢が続いている間は、腸の粘膜がダメージを受けて弱っています。無理に食べる必要はありません。食欲が戻ってきたら、消化の良いものを少しずつ摂りましょう。おかゆ、やわらかく煮たうどん、すりおろしたリンゴ、湯豆腐などがおすすめです。逆に、冷たい飲み物や油っこいもの、牛乳などの乳製品、食物繊維の多いお茶などは腸の負担になるのでしばらくは避けてください。自己判断で市販の下痢止めを飲むと、ウイルスが腸の中に留まってしまい治りが遅くなることがあるので注意が必要です。

 

■ 家族への二次感染を防ぐための鉄則

家庭内で一人でも感染者が出た場合、最大の課題は「他の家族にうつさないこと」です。

・手洗いの徹底 何よりも手洗いが基本中の基本です。トイレの前後、食事の前、嘔吐物や便の処理後は、石鹸をしっかり泡立てて、流水で指の間や手首まで丁寧に洗い流してください。

・アルコール消毒は効きにくい? ここで注意したいのが消毒方法です。実は、ノロウイルスやロタウイルスには、一般的なアルコール消毒液があまり効きません。確実な消毒には「次亜塩素酸ナトリウム(家庭用の塩素系漂白剤)」を使用します。ドアノブやトイレの便座、水洗レバーなど、感染者が触れた場所は、塩素系漂白剤を薄めた消毒液でしっかりと拭き取りましょう。

・汚れた衣類の処理 嘔吐物や便で衣類やシーツが汚れてしまった場合、そのまま洗濯機に入れるのはNGです。他の衣類にウイルスが移ってしまいます。まずは使い捨てのマスクと手袋を着用し、汚物をペーパーで取り除いた後、バケツの中で洗剤もみ洗いをします。その後、塩素系漂白剤の液に浸け置きするか、85度以上の熱湯で1分以上消毒してから、他の洗濯物とは別に洗濯機で洗ってください。

・タオルの共有を避ける 洗面所やトイレのタオルは共有せず、ペーパータオルを使うか、家族それぞれに個別のタオルを用意してください。お風呂も感染者は一番最後に入るか、シャワーだけで済ませるのが安心です。

 

■ 病院へ行く目安

基本的には数日で自然に治る病気ですが、以下のようなサインが見られた場合は、我慢せずに内科や小児科、消化器内科などの医療機関を受診してください。

・半日以上おしっこが出ていない、泣いても涙が出ない、唇がカサカサ(重度の脱水症状) ・水分を一口も受け付けず、飲んでもすべて吐いてしまう ・便に血が混じっている ・激しい腹痛が全く治まらない ・意識がもうろうとしている、ぐったりしている

特に体力のない乳幼児や高齢者は、脱水症状が急激に悪化して重篤化するリスクがあるため、早めの受診をおすすめします。

 

■ 最後に

ウイルス性腸炎は、かかってしまうと体力的にも精神的にも本当に消耗するしんどい病気です。 まずは焦らずにしっかりと水分を補給して、無理をせずにゆっくり体を休めることが、回復への一番の近道になります。

これから乾燥する季節や、人の集まる場所に出かける機会が増える時は、日頃からの丁寧な手洗いとうがいを習慣にして、家族みんなでしっかり予防していきたいですね。

少し長くなりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。この情報が、いざという時の皆様の健康管理と安心に、少しでも繋がれば嬉しいです。