私が子どもの頃、家のキッチンはいつもどこか懐かしい香りで満ちていました。
祖母が作る煮物の匂いに混じって、時々、ほんのり甘いような香ばしい香りが漂っていたのを覚えています。
実はその香り、祖母が自分で作っていたスキンケアの香りだったんです。
米のとぎ汁やはちみつ、卵の黄身など、今思えばすべて天然素材。
その頃は何の気なしに見ていた光景でしたが、美容の仕事を始めてから、改めて祖母の知恵の深さに驚かされることが多くなりました。
たとえば、祖母がよく使っていたのが「米のとぎ汁の化粧水」。お米をといだあと、一番白く濁った部分を瓶に入れて冷蔵庫に保存しておくんです。
翌朝、それをコットンに含ませて顔を軽く拭くだけ。
肌がしっとりして、なんともやさしい使い心地でした。
お米に含まれるビタミンやミネラルが、肌に自然な潤いを与えてくれるんですね。
私も今でも時々、この方法をお客様におすすめしています。「化粧水がわりに使ってみたら、肌の調子が良くなった」と喜んでくださる方も多いんですよ。
もうひとつ、祖母が大切にしていたのが「はちみつ」。
唇が乾燥したとき、祖母は口紅の代わりに、ほんの少しのはちみつを指で塗っていました。
自然の保湿力があるうえ、甘い香りに気持ちまで癒されるんです。
私はそれを真似して、お風呂上がりにリップケアとして使うのが日課になっています。
特に冬の乾燥する季節には、本当に頼りになる自然の恵みです。
そして、私が今いちばんお気に入りのレシピは「ヨーグルトと蜂蜜のパック」です。
ヨーグルト大さじ1とはちみつ小さじ1を混ぜて、洗顔後の顔に塗り、10分ほど置いてからぬるま湯で洗い流すだけ。
たったそれだけなのに、肌がつるんと明るくなり、しっとりと柔らかく整うのです。
ヨーグルトの乳酸菌が古い角質をやさしく落とし、はちみつが潤いを閉じ込めてくれる――本当に自然の力は偉大だなあと感じます。
現代は便利な化粧品がたくさんありますが、時には少し立ち止まって、自然に戻るのもいいものです。
おばあちゃん世代の知恵は、派手さこそありませんが、心と体にやさしく寄り添ってくれます。
手をかけた分だけ肌が応えてくれる――そんな実感があるのが、天然素材の魅力だと思います。
年齢を重ねた肌は、若い頃よりも繊細で正直です。
だからこそ、余計なものを足さず、自然の恵みで整えてあげるのが一番。
おばあちゃんの知恵を、今の暮らしに少し取り入れてみるだけで、肌も心も不思議と穏やかに輝き出します。
自然と共に生きる美容、それが私の原点です。