もう20年近く前になるだろうか。
私が、当時の大阪近鉄バファローズにコーチでいた時、いつも感じていた事があります。
私は、トレーニングコーチという仕事柄、いつも試合前の練習では、外野付近で選手のトレーニングを指導していました。
試合前という事もあり、ファンがどんどん席を埋め尽くし、特に外野席には、熱狂的なファンが集まって、一緒になって応援する風景があります。
その時、ふと感じた事がありました。
それはその当時の近鉄ファンの着ている服装、グッズ、その他諸々の色が、バラバラなのです。
ちょうどその頃から、各球団は、ファン獲得の為に、いろいろな入場者プレゼントを用意したり、グッズ販売に力を入れ始めていた頃でした。
先着何名様にユニフォームや、帽子をプレゼントしたりしていました。
すると、その日は、そのプレゼントの色で埋め尽くされるのです。
しかし、そういう事が、何回かあると、ファンは、その時にもらったユニフォームや帽子を当然のことながら次回から、着用してくることになります。
それが、当時の近鉄の場合、バラバラだったのです。
私は、いつも近鉄側の外野を眺めながら、色がバラバラで統一感が全くないな〜と感じていました。
そんな折、ふと、BSテレビでアメリカのMLBの中継をみていて、強烈な印象を受けたことがありました。
セントルイス・カージナルスのマーク、マグワイア選手が、シーズン最多本塁打記録を塗り替えるという試合の時でした。
全てのスタンドのファンが、カージナルスのチームカラーの赤を着ていたのです。
異様な雰囲気に包まれて、観客席からの凄い熱気とパワーを感じました。
これこそ、一つになった応援のパワーなのだと。
ただ単に同じ色の服を着ているだけなのに、特に赤だったので、非常に威圧感がありました。
これだ、これが今の近鉄にはないんだと。
当時、私は球団の広報をしていた方と非常に仲良くしていたので、その事を相談しました。
「うちのチームは、チームカラーが決まっていません。だから、ファンは、球場に何色を着て行ったらいいのかわかっていません。阪神ならば、黄色か、縦縞。巨人ならば、オレンジ。広島ならば赤。誰もが知ってるイメージがあるでしょ。それが今の近鉄にはないんです。
見てください。外野のファンを。色がバラバラでしょ。あれじゃ、統一感全くないし、怖くないですよ。
チームカラー統一しましょうよ。
プレゼントも色決めましょうよ。」相談しました。
「わかった。そうしよう。じゃーどうする?」
「やっぱり赤がいいんじゃないですか?
近鉄は、元々三色帽だし、ユニフォームにも、赤がはいっているから。
赤でいきましょう!闘争心の赤で!」
「よし、わかった!それで動いてみる!」
そして、すぐにその方が、球団の上層部や営業に話をしていただいて、それからのイメージを赤で統一、イメージをドンドン前に出していったのです。
プレゼントのTシャツも真っ赤、イメージビデオも赤。
レッドでハッスルです。
そうするとどうでしょう。それからというもの、外野席がドンドン赤で埋め尽くされてきたのです。
いいぞ、いいぞ!ドンドン赤になれ!
そして、そして、最後には、あの北川選手の代打逆転サヨナラ満塁優勝決定ホームランで、優勝したのです。
私は、あの時、グランドから、スタンドを見上げ、優勝に歓喜するファンをみて、私達に声援を送って、観客席からこぼれ落ちそうになって、まえのめりになり、ファンが手を振る姿を忘れることかできません。
そして、もちろん、スタンドは、真っ赤っかです。
本当に嬉しかったです。あの風景は、一生忘れる事はできません。
何故だかわからないですが、そういう事って、そういうパワーって、大切なことなのかもしれませんね。
特に今は、サッカーワールドカップが、開催されています。
ファンは、応援する国のユニフォームの色を身につけて応援していますよね。
あれこそが、選手にとって、パワーになり、相手にとって、威圧感になるんですね。
サッカー日本代表では、今やサムライブルーという言葉が定着しました。
ブラジルのカナリアイエローには、まだまだ及ばないかもしれないけれど、きっとこの先、サムライブルーが、威圧感の色になっていくことを信じたいと思います。
そして最後に。皆さんにメッセージ。
もし、スポーツを観戦する機会があったら
観客席を見てください。
色のバラバラなチーム、絶対弱いですから。
