配信ルームには、いつも数人の名前が並んでいた。
誰がどこに住んでいて、どんな生活をしているのかは分からない。
画面上では、ただ“今そこにいる人”として扱われていた。
私もその一人だった。
コメントを打つこともあれば、ただ眺めているだけの日もあった。
それでも、常連の名前は自然と覚えた。
挨拶を交わさなくても、同じ場所で同じ時間を過ごせば、
不思議と知っている人に近づいていく。
そのうち、見覚えのある名前の集まりは、
仲間になるメンバーのような存在になっていった。
友達ではなく、フォロワーでもなく、
ただ同じ空間を共有する人たち。
その曖昧さが、むしろ心地よかった。
ヒロは、その輪の中に後から加わった。
初対面でも遠慮のないタイプで、コメント欄に冗談を投げていた。
私も似たような調子で茶化していたから、やり取りの速度が合った。
それを見た主が、軽く笑いながら言った。
「苺とヒロ、画面じゃ追いつかない。
二人とも裏で話してきなよ」
それが最初の接点だった。
恋でも偶然でもなく、
ただ配信のノリとして生まれた流れだった。
接触が始まっても、大げさなことは何もない。
私にとってヒロは、一緒に遊べる配信仲間で、冗談の通じる相手で、
名前を見れば分かる程度の“ただのメンバー”だった。
それ以上でも、それ以下でもなかった。