*この記事は

一次創作イベント・合同誌主催や創作者に寄与する活動をしている人が1年を振り返る Advent Calendar 2024

に参加しています*

 

・2024年のBOOKフェアの振り返り

 

2024年は、文芸同人誌委託展示販売イベント

「プラムツリーBOOKフェア」を以下の二回開催しました。

 

 

3月にプラムツリーBOOKフェアvol.3「テーマ・SF」

(参加サークル数 10)

6月にプラムツリーBOOKフェアvol.4「ファンタジー」

(参加サークル数 10)

 

 

また今年は会期中に一回ずつ、店舗にて予約制のトークイベントを開催。

 

SF回では冬寂ましろさんに「なぜ私は百合SFを書くか」

ファンタジー回では武石勝義さんに

「かくして武石勝義はファンタジー小説を書くに至る~私の読書遍歴~」

をそれぞれお話いただきました。

 

プラムツリーはたいへんにちいさな空間なので、

トークイベントの観客数は3名でいっぱいいっぱいなのですが、

みなさんには狭い店内に肩寄せ合っていただきながらも、

大規模なイベントにはないアットホームさで

お話を交わせたのはたいへん楽しいひとときでした。

 

来年もテーマに応じたトークイベント、行いたいですね。

何かいい案あったらください!

 

またファンタジー回では開催前日に、Twitter(X)にてスペースを開催。

BOOKフェアの概要やそもそも、各サークルのおすすめ本の紹介を行いました。

 

会期中はこのスペースを聴いて「この本が気になって」と

いらしてくだったお客さまもいらしたので、

次回からも事前宣伝スペースは行いたいですね。

(ただ店主ひとりで喋ると、どうしても話が滑りがちなので、

次回以降はゲストを呼んで対話方式で喋りたいです……)

 

会期中の集客は天候に大きく左右されるのが悩みの種で、

特に6月はすでに夏の暑さが顕著だったため、毎回のことですが、

客足はなかなか厳しいものがあります。

 

 

それでも、書き手でないお客さまが継続していらしたくださったり、

会期後通販では遠方からのご注文や、

BOOKフェア常連のお客さまがちらほら見られるようになったので、

やはり継続は力なりです。

 

 

・2025年の展望(BOOKフェアとアンソロジー)

 

来年のBOOKフェアは以下の予定です。

 

2025年3月15日~3月30日の金土日祝
(全9日間・会期後通販あり)

プラムツリーBOOKフェアvol.5「テーマ・恋愛」

 

9月または11月

プラムツリーBOOKフェアvol.6(テーマ未定)

 

このうち3月の恋愛回につきましては、

昨日12月15日から応募受付が始まっております。

受付締め切りは1月14日までですので、奮ってご応募ください。

 

詳細↓

 

 

 

なおこの「恋愛回」は

書き手が恋愛小説と思って書いたならカップリングの性別は問わないよ」

というのがミソです。

 

すべての「恋愛」を区別せず、並列に扱ってみたいんですよね。

 

正直、集客的にはBLやら百合やら、って分けた方がいいとは思うのですが、

こうした実験的な催しをやれるのは、

運営が小回りのきく「ちいさな場」ならではないでしょうか。

 

どうせやるなら、大きな書店やイベントでやれないことをやってみましょうよ。

そんな気合いで行きます。

 

 

次は「テーマ・絵画」アンソロジーについて。

 

今年はもうひとつ、プラムツリー主催の文芸関連の動きがあります。

【Plum Tree】第15回企画展「絵描きの雑貨」で

「テーマ・絵画」のアンソロジーを発刊します。

 

【Plum Tree】とはギャラリー主催のグループ展の総称で、

今回は画家やイラストレーターの方に

「原画」と「絵を使った雑貨」の展示販売を行うのですが、

これに併せて、お声がけと公募で集まった作家の皆さまに

「絵画」を題材にしたアンソロジーを作っていただき、一緒に販売します。

(※こちらのアンソロジーの公募はすでに終了しています)

 

いわばあるテーマに沿って、異分野の表現の掛け合わせの企画展を行うわけです。

 

この試みは去年の企画展「空想薬草園3 初冬の白き園」に続く2回目ですが、

前回は「ハンドメイド雑貨を見に来た人が本を買う」

「本を見に来た人がハンドメイド雑貨を買う」という現象が見られて、

たいへん面白かったのですね。

 

 

(2023年12月の企画展「空想薬草園3 初冬の白き園」の会場写真)

 

ハンドメイド雑貨と文芸を扱っている場の強みを生かして、

こういう「異なる表現の掛け合わせによる交流」は、

これからもたくさん起こしていきたいです。

続けていけば、きっと双方の分野に思わぬ化学反応をもたらすのではないでしょうか。

 

 

・リアルの場でアマチュアの表現を売る意味

〜「ギャラリー」という「場」を生業としている立場から〜

 

ここからは、プラムツリーのそもそもや、店主の個人的な雑感をこめた

やや独り言に近い文となります。

 

プラムツリーはもともとハンドメイド関連のライターをやっていた店主が、

主にネットを通じて知り合ったハンドメイド作家さんの作品を

「どうせならリアルの場で見てもらおう」という企画をはじめたことが発端です。

これはギャラリーができる前、いまから10年前より行っていた活動です。

 

その後、ギャラリーを創業し、

ハンドメイド雑貨やイラストレーションの企画展を繰り返したあと、

コロナ禍を経て、店主が一次創作物書きに足を突っ込んだことを

きっかけに文芸のイベントも行うようになりました。

 

そのなかで一貫させてきたことは「バーチャルからリアルへ」

そして「アマチュアの表現の可能性を探る」です。

 

プラムツリーで扱ってきた「表現」は分野こそ違っても、

大規模に流通していないもの、商業ベースで生産していないものばかりです。

(プロでも活躍しているイラストレーターさんの作品を扱うことも稀にありますが)

 

ですから「広く流通しているものだけが面白いものではない」。

そういう考えがギャラリー運営の根本にあります。

 

それは言い換えれば、いま、ネット・バーチャルが発達した世の中だからこそ、

そして、誰もが気軽に発信できる世の中だからこそ、

「隣り合わせに生きる普通の人の発信の価値」を

吟味する場が必要なのではないか、ということでもあります。

 

その理念から、プラムツリーは

「アマチュアが『外(マス)』に向けて安心して表現を発信できる場」

でありたいと思っていますし、それが場の価値なんだと思っています。

 

 

・とはいえ、アマチュアの表現を売るのは、とても難しい。それでも

 

そう、滅茶苦茶難しいのです。

人はどうしても「保証のあるもの」「後ろ盾があるもの」にお金を使いがちですから。

 

それに加えて、文芸同人誌には、文芸界隈特有の問題があると感じています。

ハンドメイド・アート界隈以上に、

商業書籍化をトップとしたヒエラルキーが存在していると思います。

いわば「誰が書いたか」よりも「どこから出版されているか」に重きを置かれる世界です。

こういう状況のなかで、アマチュアの文芸を売ることは、

とてつもなく難しいことです。

BOOKフェアをやっても一般の読書好きの方にはなかなかおいでいただけませんし、

アンソロジーを出したって

「有名な作家が参加しているわけでもないでしょ」という視線で見られることはよくあります。

 

それでもなんで、プラムツリーではアマチュアの文芸を取り扱うのか。

問われると「まあ、やってること、ドンキホーテですよね」と言わざるを得ません。

 

ただ、店主がBOOKフェアをはじめたきっかけといえば、

なによりも、文芸界隈に来てはじめて知った

「世に出てない本にもこんなに面白いものがあるのか!」という感動であるので、

その初心を忘れずにやるしかない。

つまるところはそれだけなんですよね。

 

私はここで、ある文芸雑誌の商業デビュー作家の特集号のタイトルが

「産まれたての作家」だったことを思い出します。

 

その文脈でいえば、作家とは商業デビューして初めて「産まれる」もので、

ということは、その立場から見れば「アマチュアの私たちは産まれてさえいない」

ということなのです。

いわば、存在しないも同じなのです。

 

ですが、いま私のまわりには、無数の書き手がいる。

私の周りには、たしかに無数の面白いものを書く「作家」が「生きている」。

 

そのことを知ってしまったら、やっぱり、

たとえどんなにドンキホーテでも、何もしないではいられないんですよね。

 

(ちなみに店主も出版社の公募に出したり、持ち込みをしたりする人間ですので

商業出版が悪いと言いたいわけではないです)

 

神奈川県相模原市、東林間の住宅地にぽつん、とある

6畳弱のちいさなちいさな空間。

 

あまりにも微力ではありますが、2025年も、面白いことをやっていきたいです。