さて、いよいよアーティゾンです。

今年は年パス持ってるのよ。

 

『彼女たちのアボリジナルアート』と題する展覧会

 
アボリジナル・アートとは、オーストラリア先住民による芸術ということでしょうか。
オーストラリアでは、多数の女性作家が活躍していて、その多くがアボリジナルを出自としているそうです。
 
というわけで、「彼女たちのアボリジナルアート」であり、「オーストラリア現代美術」なのですね。
 
まず、目を引くのが北部ダーウィン出身のノンギルンガ・マラウィリの作品です。
アボリジナルアートの制作はもともと男性にしか許されなかったそうです。
しかし、後継者不足からマラウィリは女性ながら父の技術を受け継ぐことを許されます。
 
作品は撮影できませんでしたが、迫力あるものでした。
 
 
こちらはジュディ・ワトソンによる《記憶の深淵》という作品
 
 
制作風景

 
 
エミリー・カーマ・イングワリィ

もともと寝かせて展示することを意図しているとか・・・
 
 

 
イワニ・スケース《ガラス爆弾》
 
《えぐられた大地》
オーストラリアのウラン資源採掘とそれによって引き起こされる環境汚染がテーマの作品。
冷戦期には作者の祖先の土地でイギリスによる核実験が行われたそうです。
 
 
 
展示は6Fから5Fへと続きます。
 
 
ジェフリー・コフ《マラハイド》
石炭のかけらと鹿の角でできた巨大な黒く重い首飾りは、「植民者による狩猟や鉱業の導入と、その結果にある伝統の喪失」をあらわしているそうです。
 
 
わたしはふだん絵を見るとき、まず解説を読まずに見るのですが、下の作品からは何とも言えない悲しみと怒りが伝わってきました。
 
 
 
寄ってみると、木の一本一本に名前が刻まれています。
 
 
両端は尖っていて槍のようです。
 
 
作品のタイトルは《1840年以前に非アボリジニと生活していたタスマニア出身のアボリジナルの子どもたち》
 
1800年代初頭に家族の元から連れ去られ、非アボリジナルの人々と一緒に暮らしていた子どもたちの名前が刻まれているそうです。同化政策の下、こうした行為は1970年代まで続いたようです。
 
 
マリィ・クラーク《ポッサムスキン・クローク》

「ポッサムスキン・クローク」とは、オーストラリア南東部の寒冷地帯に住む人々が、かつて着用していた外套のこと。
ポッサムというオーストラリアに生息する有袋動物の皮で作られています。
 
子どもが生まれると新調され、成長とともに毛皮を継ぎ足していき、亡くなるときにはこの毛皮に覆われて埋葬されたそうです。
 
しかし、19世紀、イギリス植民地時代に、先住民の自由な移動と文化的習慣が禁じられ、ポッサムの狩猟が難しくなったことからこの文化は途絶えました。
 
近年、このクロークを復活させる取り組みが一部の作家によって行われているようです。
 
 
 
こちらはなんとも自由な感じの作品

 
制作しているのは、マーディディンキンガーティー・ジュワンダ・サリー・ガボリです。

 
ガボリが生まれた島は彼女が24歳のとき、長期的な干ばつと大型サイクロンによって壊滅的な被害を受け、住民は近隣の島へ移住を強いられたそうです。
 
ガボリは80歳を過ぎた時、移住先の島のワークショップで絵画と出会い、91歳で亡くなる数年前まで制作をつづけ、2000点以上の作品を残しています。
 
《私のカントリー》
故郷の島での暮らしや体験をもとに描かれています。
 
 
 
 
 
メッセージ性の高い作品たちに圧倒されつつ
 
 
石橋財団コレクション選からは
 
《青楓朱楓図屏風》池田狐邨
 
《富士筑波山図屏風》鈴木其一
 
《新撰六歌仙四季草花図屏風》酒井抱一
 
 
ステーションギャラリーでは写真が撮れなかったので
 
《ドルドーニュの家》藤田嗣治
 
 
今回の展示をきっかけに、かつて植民地だったオーストラリアの歴史と翻弄された人々の暮らしに思いをはせることができました。
 
 

おつき合いありがとうございます(^-^)