「聴こえない親のもとで育った、聴こえる子どもたち」の総称です。
『デフ・ヴォイス』(丸山正樹)という小説で知りました。
日本には2万2000人いると言われていて、彼らは独特の生きづらさを抱えています。
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子どものころは気にならなかったお母さんの障害も、学校へ行くようになると「人と違う」と感じるようになります。
聴覚に障害のある人はちょっと独特の話し方をします。
筆者のお母さんが話すと、「どうぞ」は「おうど」、「よく来たね」は「おういあね」と聞こえました。
友達に「お前んちの母ちゃん、喋り方おかしくない?」と言われてしまう。
これは小学生にとっては一大事でしょう。
人前で手話を使うことも恥ずかしくなり、お母さんを避けるようになります。
お母さんがかっこいいのです。
哀しそうな顔をするものの息子の心情に理解を示します。
息子が自分の障害のゆえに近所の人に心ない言葉を浴びせられると、毅然と抗議します。
そして、その近所の人ともお友だちになってしまうのです。
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コーダは「聴こえない親を守りたい」という肯定的な気持ちと、「聴こえない親なんて嫌だ」という否定的な気持ちとのはざまで大きく揺れ動くのだそうです。
手話をうまく使えず、親との共通言語を見失い、「自分も聴覚障害者だったらよかった」と悩むことも。
聴こえない親の通訳をしてるだけなのに、「えらいね」と言われる違和感。
社会からの偏見により強制的に「可哀相な子ども」にされてしまうことへの戸惑い。
筆者はフリーライターとして聴覚障害者とコーダに向き合うことで、両親のことをより理解できるようになったといいます。
コーダは揺れるものなんです。親を否定する気持ちと、それでも支えたいと肯定する気持ち。どっちもあっていいんですよ。
2021年2月10日発行
幻冬舎
定価(1400円+税)