病院生活が長くなると
いろんな人に出会い
いろんな話を聞く。

5年ほど前に入院していた時は
抗がん剤の副作用がなくなって
次の投与の前まで
比較的元気に過ごしていた。

寝てばかりでは筋肉が衰えると思い
私が入室している病棟の4階から階下まで
階段を使って昇降していた。

朝食前の早朝に、下まで降り
それから玄関ホールの前にあるソファの上で
ヨガのポーズでストレッチをし
少し瞑想をして、
階段近くの自販機でコーヒー牛乳を飲んで
再び階段を昇り、病室に戻るということを
日課にしていた。

ある日、玄関ホールでストレッチをしていると
床を懸命に掃除している掃除のオジサンに
声をかけられた。
「奥さん、そんなに元気そうなのに何の病気なの?」と聞いてきた。
私はそれには答えず
「毎日朝早くから大変ですね」と言うと
「私は長い間、運送会社で
長距離の運転手として働いていたんですよ。
ところが会社が倒産しちゃったんです。
で、運転手の仕事を探したんですけど、
それがないんですよ。高齢だということで」
年齢を聞くといま70歳だと言う。
ここでの仕事をして5年になるというから
65歳くらいのことか。
「で、この仕事に就いたんです。食べていかなきゃならんですからね」
朝4時頃に起き、
5時には仕事をしていると言う。
オジサンはそんな話をしながら
掃除機を走らせて行った。

このような話は、それなりに聞いてきたので
長くなるので、次のお話は次回に回そう。
お楽しみに(笑)


夫は人嫌いが嫌い、いや人付き合いが嫌いだが
自然は好きなようだ。

育てた草花の蕾が膨らめば、目を細め
咲き乱れれば、目を輝かす。
作物が実ればすくすく育っていることに
喜びを感じる。
星空を仰げば、これが北斗星、
あれが北斗七星、あそこにあるのは
カシオピア座だのと、私を呼んで星を指差す。
青い空に白く聳え立つ立山連峰を見て
その美しさに目を見開く。

動物もそうかもしれない。
幼い頃、犬を飼い、コロという名前をつけ
可愛がったという。

一方私ときたら、観葉植物を枯らす人間。
蕾が芽吹いたのにも気づかず
花の名前もよく知らない。
この花の名前は?と聞かれれば
花と答えるしかない。
作物が実れば、収穫したものを食べるのは
好きだが、成長には興味がない。
星にいたっては、
あれがナントカ星と言われても
空に線引きされていないことにはわからない。
動物は、小さい時から飼ったことがなく
いまでも恐る恐る触る。

こうしてみると
夫の方が愛情深く
私は非情なのかもしれない。

ふるさとの山、立山を見て
心が洗われそうと思うことが
せめてものの救いだ。
夫の困った話、その2です。
夫は見た目、とても無礼な人である。

私の友達が遊びに来ると挨拶もしない。
それでいてキッチンでお茶の用意をしようとすると、すでに用意をしてくれている。
しかし、決して友達の前には差し出さない。
主人が育てた野菜を友達にあげようと
袋詰めにして玄関に置くが、絶対出てこない。
友達が、野菜ありがとうございます。
と言っても、返事もせず、見送りもしない。
きっと、友達はなんとそっけない人と
思ったに違いない。

また、ある時は
私の別の友達が、夫の誕生日だと
手づくりのケーキを持って来てくれた。
主人に伝え、玄関に出てお礼を言うようにと
言うが、一向に出てこない。
友達に無礼を謝り、もう一度リビングが行ったら、いない❗️
しょうがないので、友達に中に入ってもらい
ケーキをわけて、談笑した。
「ごめんね。せっかく作って持ってきてくれたのに」と平謝りした。
友達は「いいの、いいの。私の息子もそんなんだから」と慰めてくれた。
友達が帰り、憤慨した私は夫を探したが
どこにもいない。
2階かなと思い、見渡すがいない。
なんとなく押し入れが怪しいなと思い
押入れの扉を開くと
膝をたてて、布団の上に座っていた。
怒ろうと思ったが、
その姿に思わす、吹いてしまった。
夫は、友達が入ってくる気配を感じ
キッチンに逃げ
それから勝手口を出て
玄関に回り
そっと2階に上がったと言う。
それほど人に会うのが嫌なのかと呆れた。

そう言えば、義母に
こんなことを聞いたことがある。
小学生の頃、夫は風邪をひき
学校を欠席していた。
そうしたらクラスの女の子が
花束を持ってお見舞いに来てくれた。
ところが夫は回復しているにもかかわらず
その女の子と会おうとしなかった。
その子は、しょんぼりして帰って行ったと言う。
筋金入りの人嫌いである。

夫は、しゃべるのが苦手でもなく
人前でしゃべるのも平気である。

なのにである。

夫曰く、好きでもない女の子に
会うなんて必要ないと。
私の友達にいたっては
なんでアンタの友達と会わないといけないと。
まー、徹底している。

夫は決して人が嫌いなのではなく
付き合うことが煩わしい。
付き合うことによって
喧嘩になったりするのも、ゴメンだと言う。
「じゃ、なぜ私と付き合い、結婚までしたの?」と聞くと
「う~ん、成行かな。アンタは奥さんだから」と。理由ともつかないことを言う。
「そんなんじゃ、振り返れば誰もいなく
なるよ」と言うと
「そんな時はアンタにまとわりついて、濡れ落ち葉になってやる」と
冗談もつかない恐ろしいことを言う。

無礼で人嫌いの困った夫である。

そんな夫が、いまでは私に尽くしてくれる。
ほんとうに、よくわかない人である。