何とか投げ切れた。みんなが笑顔で私に「ナイスピッチ!」と声をかけてくれる。
あふれそうな涙をぐっとこらえ、試合終了の整列に向かった。その際、監督に向かって「本当にありがとうございました。」とお礼を言った。
監督は「よぅ、投げた。」と優しいまなざしで迎えてくれた。
こんな男にチャンスをくれたことに、そしてゴリとの思いを叶えてくれたことに心から感謝した。
ベンチに帰り、改めてみんながよくやったと声をかけてくれる。
そして監督が「先頭に死球を当てたときは、どないしょうかと思うたわ。また去年の再来かと思うたわ。ほんまに心配かけるやっちゃなぁ。」と笑いながら話しかけた。
すかさずヒデキが「できの悪い息子ほど、かわいいっちゅうでしょ!」と切り返した。ベンチは爆笑に包まれ、何ともいえない和やかな雰囲気となった。
着替えを済ませ、宿に向かう電車の中、まずは1勝!とのうれしい気持ちがこみ上げてきた。
帰りの電車で、声をかけてくれた内野陣を中心にお礼を述べた。
ヒデキは「私の方こそうれしかったです。東京でキャップとゴリさんのバッテリーを見たとき、なんかうれしくなって、涙が出てきました。こちらこそありがとうございました。」
そんなうれしい返答をしてくれた。
ヒデキにとって、私とゴリのバッテリーには何か特別の思いがあるようだ。
宿に帰り、みんなで夕飯を食べに行くことにした。
夕飯を食べに行く途中、ゴリとヒデキ、そしてマツゲンは明日研修があるため京都に帰らなければならない。
別れ間際、3人が力強く「明日、呼び戻してください。飛んで帰ってきますから・・・・。」と言葉を発した。
私は、力強く手を握り「必ず呼び戻すから。」と、答えた。
その後、おいしい築地の肴に舌鼓を打ちながら、楽しい宴は続いた。
そんな中、私は改めて監督にお礼を言いに言った。
「監督、今日は本当にありがとうございました。」
ははは、と笑いながら。「ノミの心臓くん。緊張しとったねぇ。でも、これで落ち着いたやろ?明日からがんばれよ。」と、声をかけていただいた。
さらに「たった5回の裏表でこれだけのドラマがある。これからどれだけのドラマがあるんかなぁ・・・・。」とつぶやかれた。
そう、今からもっともっとドラマを作らなきゃ。
そのためにも主将として、一投手としてみんなを盛り上げていこう。
そう、改めて誓ったのだ。
その後、宴も終わり、宿に帰ると盆踊り大会が開催されていた。みんなその踊りの輪の中に入り、見よう見まねで踊っていた。
このお祭りは8/8まで開催される。最後まで、この盆踊り大会を見ていられたらいいのに・・・・・。そんなことを考えながら、築地の暑い夜は更けていった。