定宿を出て地下鉄に乗り、上野駅で乗り換える。

グラウンドに向かう電車の中、みんなそれぞれ自分の思いを語っていたが、やはり頭の隅に勝利に対する思いがあるのか、心持ち緊張しているように感じられた。

私もいろいろと考えた。

去年の夏の悪夢からの復活。

膝の痛みを抱えながらの走り込みは、白い息が白い湯気に変わっていった。たまらなく寒く、そしてたまらなく熱い冬の早朝を思い出す。

目標を作るためにマラソン大会にも出て、自分との戦いを味わった。そしてノリと勝負もしたっけなぁ。マラソンではノリに勝った。(自慢)

仕事が終わったあとの投げ込みもきつかった。毎回200球ほど投げただろうか。嫌な顔せず気持ちよくつきあってくれたリョウタには感謝の気持ちでいっぱいだ。

月1回は全体で集まって、練習試合や全体練習に明け暮れた。いろんな思いに振り回され、後輩達の一言で何度となく救われた。

気がつけば体重がみるみる落ちて、誰かに会うたびに「痩せた、痩せた。」と言われた。

語り始めればきりがない、そんないろんな思い出の後ろにはいつも私を支えてくれたたくさんの人の顔が思い浮かべられる。

外を眺めながら、「やったよ。よくやったよ。」そう、自分に言い聞かせた。

そんな中、フッとノリをみると、ノリも遠くを眺めながら、何か思いに更けていた。

「あいつもがんばったんだろうなぁ。それに、かなりのプレッシャーを背負いながらここまできたんだろうなぁ。俺がもう少ししっかりしていれば、そのプレッシャーを少しでも和らげてやれたのに、、、、、ごめんなぁ。」

ノリの背中をみながら、そんなことを考えた。

ただ、そんないろんな思いを巡らす中、これだけは自分の中ではっきりした。

「確かに去年、大炎上してぼろぼろになった。その後、自分を追い詰め努力してきた。初めは東京でナイスピッチングをするためだった。でも、今は違う。今は東京で「投げる」ためじゃなく「勝つ」ためにやってきた。なぜなら、野球は一人ではできない。この1年の活動を通じて、そのことを心の底から感じることができた。俺は投げるために東京に来たんじゃない。「勝つ」ためにきたんだ。」

その気持ちははっきりと確認できた。


駅に着き、タクシーに分乗してグラウンドに向かう。グラウンドに着くとやはり何ともいえない嫌な記憶しか思い浮かばなく、やはり逃げ出したい衝動に駆られた。

グラウンドに少し早く着きすぎた。アップをするには十分過ぎる時間があった。

ストレッチから、キャッチボール、トスバッティングなど次々とメニューをこなしていく。

隣のグラウンドでは、先日交流試合をしたK大学が戦っていた。みるところによると結構打たれているように見えるが、大丈夫だろうか?

そんなことをしているうちに先の試合が終わった。いよいよだ。

ついにやってきた。まずは1勝。これは必須条件である。

期待と不安が、私の心の中で大きく渦巻いていた。