練習にまったく身が入らない。
何のために一生懸命やってきたのか・・・・、何のためにみんなで一つの目的に向かってがんばってきたのか。
フッと時間があると考えてしまう。
今までのことがすべて消え去り、私の中で東京遠征というものが小さく、薄っぺらくなってしまった。
その日の全体練習は、身も心も入らないまま時間が過ぎていった。自分としては何かを忘れたいかのように、投げて投げて、暴れ回りたい衝動に駆られていた。
練習終了後、「もう少し変化球の練習をしたい。」とみんなに言ったが、ヒデキが、「この暑さだし、無理はしないでおきましょう。」と私を制した。
確かに異常な暑さだった。立っているだけで頭がボーッとする。
しかし、それを見た監督がまたニヤニヤ私の方を見ながら「ストライクもはいらんのに変化球の練習しても無駄やろ。」と、茶化した。もう、腹立たしささえもなくなっていた。
練習終了後、車に乗った私の心は、何とも言えないむなしさにおそわれ、正直、東京遠征が「もうどうでもいいや。」レベルにまで落ちていた。
しかし私は主将である。監督の意図を見極めない前に私の勝手な思いでチームを混乱させるわけにはいかない。
とにかくここは自分を繕い、何とか東京遠征は無事に終了させることに集中することにした。
ただ、最近の私の口癖が「ちっきしょう!負けてたまるか!」になっていた。
何とも言えず、何かを忘れたい一心のように感じる。
季節は梅雨が明け、いよいよ夏の本番を迎えていた。
朝の走り込みは続いているが、この暑さのためか、いっこうに疲れが取れない上、このようなことがあり、やけくそ気味に走っている。
悶々とした日々の中で、何かを必死で忘れようと、自分をいじめていたのかもしれない。
そのせいか、膝に何とも重い感じが残ってきた。全力で走ると膝の裏側に鈍痛があるのだ。
今までの私なら、焦りまくっていただろう。何たって東京遠征まで1ヶ月を切っているのだから。
でも、今の自分は違っていた。
「えぇやん。壊れたら・・・。どないでもええやん、東京なんか。」そう、考える自分になっていた。
これが良いのか、悪いのか。そう考えることすらできない。
自分って、こんな人間やったっけ?そう自分に問いかけても答えは闇の中だった。
いったい今までの自分はどこに行ったのだろうか?あの燃えに燃えまくっていた私はどこに行ったのだろうか?
今の自分には探す術(すべ)すら見つけることはできなかった。