札幌満喫の旅 33 (札幌芸術の森野外美術館③) | Qの乗りつぶしニッポン

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日本国内のJR、私鉄の乗りつぶしを中心にぷらっと旅に出かけています。ここ数年は鉄路のない自治体へ路線バス等を利用して市区町村の塗りつぶしする機会が増えてきております。

札幌芸術の森野外美術館にて。

 

『四つの風』(砂澤ビッキ)。エゾマツの大木を御柱のように4本立て、それらが「風雪という名の鑿(のみ)」によって作品に変化を与えていく様を作者が望んでいるため、倒壊してもそのままの状況で展示しているとのこと。2014年8月の時点で3本が倒壊していた。最後の1本が倒壊した時にはニュースになるのだろうか。

 

『交叉する赤錆の壁』(保田春彦)

 

自然の中に造形物が置かれ、それが自然の力で錆びていく様を人は見ていくのか。残したいのであればステンレスやアルミなのだろうし、石でもよいのだろう。上記の『四つの風』と同じような意味合いがあるのか、野外展示の彫刻たる所以なのか。

 

『夏引』(下川昭宣)。“夏引”とは「夏に蚕や麻の糸をつむぐこと、また、その糸を指す」のだが、万葉集では“夏麻引く(なつそひく)”といって「夏に麻糸を紡ぐ」という言葉が歌に出てきて、古今和歌集では“夏引きの・・・・”とこちらも同じ意味の言葉が歌に出てくる。更に、催馬楽にも“夏引の白糸・・・”と同様に謡われているのだが、ここでは鎌倉時代にいた“名牛”の名前とのこと。また、「夏の繭糸のように力強さと繊細さを併せ持つ」とパンフレットには説明書きがあった。ま、確かに、どこをどう見ても“牛”にしか見えず、森の中に鎮座する姿は底知れぬ力強さも感じる。

この方の作品は“動物”が多いようで、また別の『夏引』という作品も色んなところで見られるようだ。

 

『ひとNo.16-1』(高橋清)。マヤ文化、メキシコ美術に造詣が深く、メキシコオリンピックのモニュメント制作も行ったこの方の作品は私にはちょっと理解が難しすぎた(いやいや、理解しようなんて気持ちが烏滸がましい)。“対”になっているという点で「ひと」なのだろうか・・・。

 

『SAPPORO’90』(速水史朗)。失礼ながら、最初は“ベンチ”かと思った。

 

御影石とは思えない曲線が優美。

 

『若きカフカス人の追幻想譜』(鈴木実)。「若きカフカス人」は中原悌二郎の作品として有名(元々作品数自体も少ない)だが、こちらはその作品へのオマージュというべきか。中央が中原悌二郎の作品と見立てたとして、頭以外のパーツの合成(?)がこの作者の「人間とは何か」を追求した結果なのだろう。

 

『椅子になって休もう』(福田繁雄)。作者は錯視などの視覚トリックを使ったデザインが多く、「日本のエッシャー」とも称される世界的なグラフィックデザイナー。札幌オリンピックの参加メダル、施設ピクトグラム、公式ガイドブックのデザイン、大阪万博オフィシャルポスター、NHK「クイズ面白ゼミナール」トロフィー(前から見ても横から見てもクエスチョンマークに見える)、エッシャーの「滝」の立体模型化など。

 

連続するデザインも多く、この作品はその部類に入るのだろうが、「自分が休むためには誰かの犠牲が伴わなくてはならない」というシニカルな面があるのではないだろうか。

 

この形が1周すれば全員が休めることになるのだが、さていざ動こうと思った時にはすんなり立つことが出来ないのもこの形。立とうと思っても、前の人が自分に座っているので立てない(一斉に立てば何とかなるかな)。そういった身体的なトリックも考えた作品なのか、私の考えすぎか。

 


『石翔ぶ』(小清水漸)。ジブリ作品に出てきそうな飛行体。

 

翼はまだ完成していない様子だが、その内飛べるようになるのだろうか。

 

『椅子になって休もう』(奥)と『石翔ぶ』(手前)の間に『ウレシクテ アノヨト コノヨヲ イキキスル』(最上壽之)。ステンレスの立方体を支える4本のカラフルな棒。何がウレシイのか、何故アノヨトコノヨヲイキキスルのか。立方体の下に降りて上を見上げるとその答えがわかるのかと思ったが、私にはまだ難しかった。

 

<つづく>