QXcafe -291ページ目

カモメおじさん。





ニュージーランド、ワイヒ。

とある1日。



僕はジョンのクルマで家から5kmほど

離れた”ワイヒビーチ”までドライブに行った。



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ビーチに辿り着き、少し散歩をしようと海に近づくと

何やら波打ち際の方で普通でない数のカモメたちが

群がっている。



その中心にいるのは1人の男性。

僕は思った。

”カモメおじさんだ”


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僕の好奇心もまたそこに群がるカモメのように

そのおじさんに引き寄せられ、

そうして近づいて見てみると、

カモメおじさんの片手には大きな

バケツが握られている。




『あのぉ、何してるんですかぁ?』


『やぁ!いや、魚のいらない部分をカモメにあげてるんだよ』



バケツの中を覗くと、もともと3,40cmはゆうにあっただろう

大きな魚の頭や切り身の切れ端などが

入っていた。



『これ、ひょっとして釣ったやつですかぁ?』


『うん、そうだよ。今朝釣ってきたやつ』


『へぇ、すごいですねぇ!ボートですか?』


『そう、ボートだよ』


『えっ?ひょっとしてご自分のボートとかお持ちなんですか?』


『うん、持ってるよ』


『へぇ、いいなぁ!僕も釣りが大好きなんですよー。でもまだここでは釣りに行けてなくて・・・』


『そっかぁ・・・』





僕の、


”そうなんだぁ、釣りが好きなら、ボートで一緒に行く?”


という返答を狙った、渾身の投げかけは

マラドーナの華麗なドリブルのごとく

さらりとあっさりかわされた。




カモメおじさんは何事もなかったかのように

魚を与え続けている。




それにしても、おじさんの横に立ってみると

手の届きそうなところにわんさとカモメたちが

飛んでいて、なかなかダイナミックな光景だ。



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おじさんが魚の切れ端を空に向かって投げると

彼らは上手にそれをキャッチする。



おじさんが魚の切れ端をつまんで手を大きく上に

掲げると、海から吹いてくる風を上手にコントロール

しながら、少しずつ手に近づき、そうして魚をくちばしで持ち去る。



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『僕もやってみていいですかぁ?』


『いいよ。やってごらん』




僕もおじさんにならって、魚を手でつまみ上げてみる。

カモメはすぐに反応し、そのうちの1匹が狙いを

定めて近づいてくるが、

カモメにとってもそうそう簡単な技でもない。

1つに、まずそれだけ人間に近づくという行為自体が

彼らにとっては危険であること。

もう1つに、この海から吹いてくる風。

この不規則な気流の流れを味方につけながら

1点に達するというのは、かなりの難儀でもある。




そうして、しばらく手を上げた状態で様子を見ていると

1匹のカモメが満を持して、急接近をしかける。



”カプッ”



指を喰われた。




僕の『イテッ!』というコトバとともに

魚の身は”もさっ”と砂浜に落ちた。




”ちっ、へたくそがっ!!”




僕はその切れ端を拾い上げ、そうして怒りを込めて

カモメに投げつけた。




彼はそれをうれしそうにキャッチした。





カモメおじさんは、もう十分だろうと見切りをつけ

残りの頭や骨を海へ流すため、バケツを持って

沖のほうへとジャバジャバ進んでいく・・・。

それを必死の表情で追いかける無数のカモメたち。




カモメおじさん、さようなら・・・。




クルマに戻り、車内でタバコを吸いながら待っていたジョンに


『いやぁ、カモメがたくさんですごかったよ!!』


と興奮気味に話をしたら、ジョンは



『何をそんなに興奮してるんだ。ただの鳥じゃないか、ハハ』


と笑って言った。





カモメおじさんにしろ、カモメにしろ、ジョンにしろ、

なんだか釣れない1日だ。




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