女性からは総スカンを食うだろが僕は教科書のような品行方正な文章は書けない。そんな常識も人格もない。
現地妻を一度は欲しかった。単身赴任の1%は現地妻を持ってるだろうな。僕は残念ながら単身赴任の経験がない。あははは。サラリーマンの経験がないんだ。
あれは何処で知り会うのだろう。街や飲み屋や場末のスナックのママと知り会い、お互いの孤独を紛らわすため男女の関係になる。
女の方が男のワンルームのマンションに、洗濯や料理作ろうかとやって来るようになればやばい。
「美味しい?」
「うん。凄く美味い」
男はそう答えるしかないが、女の目がキラリと光る。
「奥さまより美味しい?」
修羅場の始まりである。
戦争の勝者は必ず相手国を占領すると現地妻を作る。歴史の常識だ。日本も戦争に負け占領された時、数多くの日本女が現地妻になった。
相手は任務が終了するとアメリカに帰ると分かっていても情にほだされた日本女は子供を作る。
現在ではハーフなど当たり前の時代だが、当時は【あいの子】と呼ばれ随分差別された。
日本の男の中に、敵の男に抱かれやがってと屈折した劣等感や怒りがある。
そんな大人を見た子供達が差別に走るのは必然かも知れない。
港、港に女あり。マドロス帽をかぶった錦鯉春助は「夜霧よ今夜もありがとう」を口笛で吹きながら桟橋から港町街のスナックに向う。
「あんたあ〜」
スナックの扉を開けると、やつれた本田翼が泣き出しそうな表情を浮かべる。
「あんたあ〜、長く居られるの?」
「3日だけだぜ。3日過ぎると俺は夜霧と共に消えるぜ。ギターを抱いた渡り鳥だからな」
「良いの。3日間は離さなから。うんと可愛がってね。何でもしますから!」
本田翼は涙ぐむとオイルサーディンの缶詰にレモンを絞り生ビールを出した。
しのび会う恋を つつむ夜霧よ
知っているのか ふたりの仲を
かくしておくれ 夜霧 夜霧
夜霧はいつも そっと言うのさ
夜霧よこんやも有難う
こんな事ばかり妄想するから、嫁の「みんなに好かれる良いお爺ちやんになりなさい」は無理だ。
最も嫁も「あんたには一生無理でしょうが」と諦めているが。
「私は大概の人には驚かない。あんたで免疫が付いたから」とも言われた。
僕が死んだら、あの人騒がせな、うるさい爺さんがやっと死んでくれたと言われたい。
そして無理だろうが死体は熱帯のジャングルに捨ててくれ。色んな動物に食い荒されたら幸せだ。