変身−上 | 錦鯉春助の冒険

錦鯉春助の冒険

日常の恐ろしき風景

 徳島県阿波☓☓地区は高台にある。盆も過ぎると季節はすっかり秋で赤トンボが飛交う。


 釣瓶落としに陽が暮れると、肌寒いほどで空を仰ぐとプラネタリウムの如き満天の星空だ。


 周囲は田圃ばかりだが専業農家では食えない。旦那が季節労働者として東京や大阪で働き正月だけ帰省する兼業農家だ。


 阿波☓☓の親戚の家に用があるから一緒に行かないか。近くにかずら橋もあるぞと誘ったのは友人のTだ


 僕は今、Tの親戚の家の電気こたつに入り酒を飲んでいる。


 隣りには30半ばの奥さんと小学生の子供が二人、お婆さんとTとのメンバー。


 奥さんは毎日農業に従事してるから都会人のように華奢じゃなく小太りだが引き締まった筋肉質だ。


 肝心の旦那さんは東京へ出稼ぎで正月まで帰って来ない。


 奥さんは酒が進み、はしゃいでいた。普段は農業労働、家事一般の主婦、母親とこなさねばならない。


 たまにはそれらの事を忘れ酒でも飲みたい夜もある。


 奥さんに欠けてる部分があるとすれば女の部分だ。まだ30代半ばなのに正月の数日だけが夫婦生活なのは余りにも辛い。


 耐えられなくなり自分で慰める夜もあるだろうが、やはり人肌の暖かさに触れてこそ心の安定はない。


 突然、炬燵の中で奥さんの手がおずおずと僕の手を握った。奥さんの自我が崩れかけていた。


 僕は手を解くといきなり奥さんの浴衣の隙間に手を入れ生太腿を鷲掴みにした。奥さんは息を詰めた表情を浮かべた。


 太腿は表面張力を起こした如くパンパンに膨れ女の盛りを保持していた。


 多分この時に奥さんの理性が瓦解した。人間は理性や倫理だけで生きて行けない。


 炬燵のメンバーはひっきりなしにに入れ替わる。Tが便所へ行ったりお婆さんが台所へ立ったり。子供達はテレビを見に行ったり。


 二人切りになる微かな時間に奥さんが囁いた。


「庭に出ると離れがあるの。その右手に農作業器を置いた小屋があるから、そこに☓時に着て!」


   (下)に続く。