5月の半ばに入院した。退院してもしばらくは自宅療養しなさいと医師にキツく云われた。
だが東京に住む長男の祝い事があり東京に行かねばならなかった。しかし新幹線どころか南海電車にも乗れそうにない。
結局僕はリモート参加で妻に独りで行って貰った。新幹線のグリーンを手配し東京駅の改札口で息子が待ち受ける事にした。
八重洲口近くの料亭で二時間ほどの会食が始まった。向こうの両親に会うのは初めてだが息子の嫁には何度も会っていた。
会食が終わると妻は横浜に向かった。横浜には高校時代からの親友が住んでいた。
親友は横浜で医師と結婚した。最初の子供が先定性脳性麻痺として生まれた。その日から親友の肝っ玉母さん生活が始まる。
僕の妻は結婚すると公務員を辞めた。それから学童保育の職員を務め20年前から精神に疾患を持つ人々の外出を手助けするガイドヘルパーを始めた。だから妻と親友の絆は強い
6時前に妻が電話してきた。
「お父さん大丈夫?」
「大丈夫や」
「もう1時間したら新幹線に乗ります。何か買って帰るものありますか?」
「お前さえ帰ってくれたら良い」
「そういう嘘を平気でつけるのは元気になってきた証拠ね。ねえ、どうして横浜には阪神のユニホームを着た人が多いの?」
ああ、今日は横浜スタジアムで横浜−阪神戦のディゲームがあったと妻に知らせた。
何故横浜ファンはユニホームを着てないの?
横浜ファンも巨人ファンもヤクルトファンもユニホームは球場で服の上から着て試合が終われにば脱いでバックに入れる。
阪神ファンは自宅からユニホームを着用して基本的には帰宅するまで脱がない。
世界には三代何とかがある。世界三代映画祭とか。世界三代カーニバルとか。世界三代音楽祭とか。
野球のファンにもある。ニューヨークのヤンキースファン。ロスアンゼルスのドジャースファン。そして関西の阪神ファン。
この3球団のファンには二つの共通点がある。ひとつは自軍の選手でも怠慢プレーをやると徹底的に叩く
愛するチームは生活の一部ではなく人生の一部なのだ。
僕が仕事を立ち上げた頃、一緒にやった友人も熱烈な阪神ファンだった。彼はセリーグの阪神以外のユニホームを買った。
広島に勝った夜は嫁さんに広島
のユニホームを着せて夫婦生活をした。
阪神が負けた夜は?
休養日だよ。だが巨人に勝った夜は俺も嫁も燃える。ひひひひ
彼は今、末期的膵臓癌で苦しんでいる。