2024年 第11戦 オーストリアGP | Glass Labyrinth

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僕の視点からF1での Ferrari のレースと Formula1 Grand Prix について書いてみます。

ヨーロッパラウンド3連戦も中盤戦、今回はオーストリアグランプリでした。各チームの戦力が拮抗してくると接戦は避けられません。でもそこで本当に物理的に衝突してしまうのは、特にそれがトップ争いであれば、本当に勿体ないことですね。衝突したドライバーどうしはそれどころではないかもしれませんが。

 

 

/*・・・Preparation:コースとタイヤ・・・*/

レッドブルリンク(シュピールベルク)

(Formula 1®から抜粋)

 

コース長:4.318 km

レース距離:306.452 km(71 laps)

特徴:・丘陵地に建造された高速サーキット

   ・グラプリサーキットの中でコーナー数が最も少ない

   ・急激な上り下りがあり、路面にはうねりがある

   ・高地のため空気密度が低く、PUへの負荷が大きい

   ・主なオーバーテイクポイントはターン3、ターン4

タイヤのコンパウンド:C3〜C5(標準〜非常に軟らかい)

 

 

/*・・・Sprint Qualifying:スプリント予選・・・*/

TOP 1 M・フェルスタッペン(レッドブル)

2位 4 L・ノリス(マクラーレン・メルセデス)

3位 81 O・ピアストリ(マクラーレン・メルセデス)

4位 63 G・ラッセル(メルセデス)

5位 55 C・サインツ(フェラーリ)

6位 44 L・ハミルトン(メルセデス)

7位 11 S・ペレス(レッドブル)

8位 31 E・オコン(アルピーヌ・ルノー)

9位 10 P・ガスリー(アルピーヌ・ルノー)

10位 16 C・ルクレール(フェラーリ)

11位 20 K・マグヌッセン(ハース・フェラーリ)

12位 18 L・ストロール(アストンマーティン・メルセデス)

13位 14 F・アロンソ(アストンマーティン・メルセデス)

14位 22 角田裕毅(RB・レッドブル)

15位 2 L・サージェント(ウィリアムズ・メルセデス)

16位 3 D・リカルド(RB・レッドブル)

17位 27 N・ヒュルケンベルグ(ハース・フェラーリ)

18位 77 V・ボッタス(キックザウバー・フェラーリ)

19位 23 A・アルボン(ウィリアムズ・メルセデス)

20位 24 ジォ・G(キックザウバー・フェラーリ)

 

SQ3 Top Time:1:04.686(240.31 km/h)

 

 

/*・・・Sprint:スプリント・・・*/

WIN 1 M・フェルスタッペン(レッドブル)

2位 81 O・ピアストリ(マクラーレン・メルセデス)

3位 4 L・ノリス(マクラーレン・メルセデス)

4位 63 G・ラッセル(メルセデス)

5位 55 C・サインツ(フェラーリ)

6位 44 L・ハミルトン(メルセデス)

7位 16 C・ルクレール(フェラーリ)

8位 11 S・ペレス(レッドブル)

9位 20 K・マグヌッセン(ハース・フェラーリ)

10位 18 L・ストロール(アストンマーティン・メルセデス)

11位 31 E・オコン(アルピーヌ・ルノー)

12位 10 P・ガスリー(アルピーヌ・ルノー)

13位 22 角田裕毅(RB・レッドブル)

14位 3 D・リカルド(RB・レッドブル)

15位 14 F・アロンソ(アストンマーティン・メルセデス)

16位 2 L・サージェント(ウィリアムズ・メルセデス)

17位 23 A・アルボン(ウィリアムズ・メルセデス)

18位 77 V・ボッタス(キックザウバー・フェラーリ)

19位 27 N・ヒュルケンベルグ(ハース・フェラーリ)

20位 24 ジォ・G(キックザウバー・フェラーリ)

 

Winner's Time:26:41.389(222.98 km/h)

Fastest Lap Time:1:08.935(225.50 km/h @lap 2)

4 L・ノリス(マクラーレン・メルセデス)

 

 

/*・・・Qualifying:予選・・・*/

PP 1 M・フェルスタッペン(レッドブル)

2位 4 L・ノリス(マクラーレン・メルセデス)

3位 63 G・ラッセル(メルセデス)

4位 55 C・サインツ(フェラーリ)

5位 44 L・ハミルトン(メルセデス)

6位 16 C・ルクレール(フェラーリ)

7位 81 O・ピアストリ(マクラーレン・メルセデス)

8位 11 S・ペレス(レッドブル)

9位 27 N・ヒュルケンベルグ(ハース・フェラーリ)

10位 31 E・オコン(アルピーヌ・ルノー)

11位 3 D・リカルド(RB・レッドブル)

12位 20 K・マグヌッセン(ハース・フェラーリ)

13位 10 P・ガスリー(アルピーヌ・ルノー)

14位 22 角田裕毅(RB・レッドブル)

15位 14 F・アロンソ(アストンマーティン・メルセデス)

16位 23 A・アルボン(ウィリアムズ・メルセデス)

17位 18 L・ストロール(アストンマーティン・メルセデス)

18位 77 V・ボッタス(キックザウバー・フェラーリ)

19位 2 L・サージェント(ウィリアムズ・メルセデス)

20位 24 ジォ・G(キックザウバー・フェラーリ)

 

Pole Position Time:1:04.314(241.70 km/h)

Fastest Lap Time Throughout the Weekend:PP Time と同じ

 

 

/*・・・Race:決勝・・・*/

WIN 63 G・ラッセル(メルセデス)

2位 81 O・ピアストリ(マクラーレン・メルセデス)

3位 55 C・サインツ(フェラーリ)

4位 44 L・ハミルトン(メルセデス)

5位 1 M・フェルスタッペン(レッドブル)

6位 27 N・ヒュルケンベルグ(ハース・フェラーリ)

7位 11 S・ペレス(レッドブル)

8位 20 K・マグヌッセン(ハース・フェラーリ)

9位 3 D・リカルド(RB・レッドブル)

10位 10 P・ガスリー(アルピーヌ・ルノー)

11位 16 C・ルクレール(フェラーリ)

12位 31 E・オコン(アルピーヌ・ルノー)

13位 18 L・ストロール(アストンマーティン・メルセデス)

14位 22 角田裕毅(RB・レッドブル)

15位 23 A・アルボン(ウィリアムズ・メルセデス)

16位 77 V・ボッタス(キックザウバー・フェラーリ)

17位 24 ジォ・G(キックザウバー・フェラーリ)

18位 14 F・アロンソ(アストンマーティン・メルセデス)

19位 2 L・サージェント(ウィリアムズ・メルセデス)

Ret 4 L・ノリス(マクラーレン・メルセデス)

 

Ret:Retire/リタイア。

 

Winner's Time:1:24:22.798(217.91 km/h)

Fastest Lap Time:1:07.694(229.63 km/h @lap 70)

14 F・アロンソ(アストンマーティン・メルセデス)

 

 

/*・・・Summary:苦境・・・*/

優勝は伏兵ラッセルでした。2022年サンパウロ以来のグランプリ通算2勝目。メルセデスがまさかの今シーズン初優勝を成し遂げました。確かにモントリオール(カナダ)以降、少しずつ調子を取り戻してきつつあったメルセデスですが、今シーズン前半で勝利に手がかかるとは想像していませんでした。これで今シーズンは4チーム(レッドブル、フェラーリ、マクラーレン、メルセデス)、5人(フェルスタッペン、サインツ、ノリス、ルクレール、ラッセル)のウィナーが誕生する展開となりました。これは明らかに昨年までとは異なる展開です。この後さらに優勝を手にするチーム、ドライバーは増えてくるのでしょうか。

 

ただレース内容としては、メルセデス&ラッセルは勝利にはまだ少し遠いと言わざるを得ませんでした。おそらくラッセル本人もポディウム(3位)狙いだったでしょうし、終盤まで優勝できるなんて考えていなかったと思います。しかも64周目にトップ争いしていた2人が消えて自分がトップに立った後も、後ろから追い上げてくるピアストリから強烈なプレッシャーを受けていたので、本当にラッセルが勝てるのか、あるいはピアストリの初優勝が見られるのか、ぼくも目が離せませんでした。結局ラッセルが逃げ切ることができましたが、終始「ベスト・オブ・ザ・レスト」のポジションに居続けたことがこんな報いとなったということでしょう。棚の下にいなければ、ぼた餅はいつまでたっても落ちてこないですからね。

 

そういう意味では、ピアストリにも十分優勝のチャンスがあったので、それを逃してしまったのは大きかったと思います。正直ぼくも、レースペースの差から最終盤でピアストリがラッセルをパスする画を想像していたので、ラッセルと彼のファンには申し訳ないですが、ちょっと残念な気分でした。こういう「棚ぼた」の機会でもいいので、もしピアストリが1勝することができれば、一皮剥けてレースでも強さを発揮しそうな気がします。ぜひ次にチャンスが巡ってきたときには逃さないようにしてほしいものです。

 

いや、マクラーレンのドライバーの応援をしているように見えてしまったのなら申し訳ないです。でも、もちろんフェラーリのことも忘れてはいません。開幕からの流れを見ていればフェラーリの2人のドライバーも優勝争いに加わっているべきなのですが、今回は明らかに手が届きそうにもありませんでした(正確には今回「も」ですが)。その中でサインツが、結果的に3位フィニッシュを果たせたことはとても良かったです。

 

スプリントの結果と合わせて見てみても、マクラーレンやフェルスタッペン、ラッセルに勝てる要素はどこにもありませんでしたから、マシンから最大限のパフォーマンスを引き出してもサインツのこの結果が精一杯だったと考えています。ルクレールはサインツよりもさらに不安定で、スタート直後のポジション争いで接触して後退して以降は上位チームを追い着く速さはなく、入賞すら逃してしまいました。サインツにしろルクレールにしろ、ぼくはもっと上位でのバトルを期待していたので落胆したと言わざるを得ません。

 

モントリオール以降、モナコまでの勢いは完全に消えてしまったフェラーリ。公式発表では、マシンの高速コーナーでの不安定な挙動がタイムを失っている原因だということですが、それが本当なら次の高速コースのシルバーストンでも期待薄ですね。イモラ(エミリア-ロマーニャ)から続々と大きなアップデートを導入していくと聞いたときには、中盤以降にはレッドブルに追いつけるかもと大いに期待したものですが、追いつくどころか他のチームの後塵を拝するようになってしましました。例年とまったく同じ流れですよ、と言われればその通りですが、なんとか再び上位争いできる位置にまで追いついてほしいものです。

 

 

/*・・・Topic:アロンソの凄さ・・・*/

もちろん今回は「あのこと」に触れざるを得ないでしょうね。フェルスタッペンとノリスの激突です。こういう場合は一方ではなく両方の立場で考えてみるのが筋です。

 

ここからはぼくの想像です。おそらくフェルスタッペンとしては、「低速だしアウト側にはまだ余裕があるから避けてくれるだろう。そうすれば次の立ち上がりでは自分の方が有利だから抜かれないはず」と考えて低速コーナーへの侵入でアウト側へのノリスに幅寄せしたのではないでしょうか。ノリスなら避けてくれるという信頼と、それでも自分は(応援団も多く来てくれているし)負けたくないという感情が入り乱れているように感じました。一方のノリスは、「ペースは自分の方が圧倒的に速い。まさか自分にぶつけてきてまでブロックはしてこないだろう」と考えてターン3へ侵入したが、フェルスタッペンはブラフ(ぶつけるふり)ではなく本当にぶつけてきた。ノリスはオーバーテイクに必死で、他のことは考えられる状況になかったように感じました。もし2人がこう考えていたとすると、フェルスタッペンは「今まで避けてくれたのになんで今回は避けないんだよ」となりますし、ノリスは「遅いのに自分の順位を守るためにぶつけてきやがった」となります。まあ、バトルしているほんの数秒の間に相手の考えを汲み取りながらすべてを正しく判断することは不可能なので、レース後に見解が食い違ってしまうのは仕方のないことです。一方で、ぼくも含めてレースを見ている人はこのバトルのことだけをゆっくり考えたり、映像やレギュレーションを見返したりすることができるので、一般的な善悪は判断できるのですが、それをバトル中のドライバーの瞬時の判断に求めるのは無理というものでしょう。

 

今回の件に関しては、フェルスタッペンが左に動いてブロックしなければこのような事故は起こらなかったと考えるのがコンシステントなので、フェルスタッペンにペナルティが課されました。このペナルティに関してはぼくも妥当だと思います。ただこの1件で分からなかったのは、フェルスタッペンが「ぼくはアンダーブレーキングで(ノリスの走行ラインの方に)動いていない」と主張したことです。データは残っているので、ぼくにはこの主張は信じがたいものでした。「バトルしていた。自分の順位を守るために左に動いた。結果的に事故が起こってしまったので良いことではなかった」と素直に言っていれば、ここまで大きなことにはならなかったと思うのですが、どうなんでしょうかね。それでもフェルスタッペンには「前科」があるので、今回の件に関しても、他のドライバーを危険に晒しても、あるいはマシンを潰してまでも勝ちたいのかと批判が湧いてくるかもしれませんけどね。

 

ここで、先ほどぼくが互いのドライバーが考えていたであろうことに戻ります。確かにこれはぼくの想像であって、2人があの瞬間に本当は何を考えていたのかは知る術がありません。でも2人とも相手に対して「〜してくれるだろう」という予測をしていたのは確かです。もし「幅寄せしても避けないかもしれない」とか「本当にぶつけてくるかもしれない」と一瞬でも思ったら、身を引いて最悪のシナリオ(リタイア)だけは避けたと思うからです。まあ正直、あの場面でそこまで冷静に判断できるドライバーは相当少ないでしょう。でも今はチームに対してコストキャップ(年間予算制限)がありますし、マシンを壊せば壊すほどマシンの開発の進捗に影響してきますから、チーム側の本音としては冷静に対応してほしいと思っているんでしょうけどね。

 

でもぼくはここまで考えてきて、2005年のルノーとマクラーレンのチャンピオン争いを思い出しました。この年は序盤に圧倒的な力を見せていたルノーのアロンソが、中盤から速さを見せてきたマクラーレンのキミ・ライコネンに速さで圧倒されながらも、堅実にポイントを獲り続けた結果チャンピオンを獲得したシーズンです。

 

あのシーズンでチャンピオンになったアロンソは当時24歳。今のフェルスタッペンよりも2歳若く、ノリスとは同じ年です。アロンソは非常に頭の良いドライバーですから、中盤以降に関してはマクラーレン&ライコネンに真っ向勝負しても勝てないと分かっていたと思います。しかも序盤に築いていたリードを徐々に切り崩されながら迫ってくるライコネンは相当な脅威だったはずです。でも、この2人がトラックで衝突することはありませんでした。もちろん、当時のマクラーレンは速かったですが脆さもあり(後半戦で連勝したのは1回だけ)、ルノーの方が信頼性は上回っていたことで少しは余裕があったかもしれませんが、それでも最速ではないマシンで自身初めてのチャンピオンが獲れるのか不安だったのではないでしょうか。でも、そういう状況でも決してラフなプレーを仕掛けることがなかったアロンソは素晴らしかったと思います(もちろんライコネンもクリーンなバトルをするレーサーだったということもありますが)。

 

今だからこそ言いますが、ぼくは当時アロンソのこの「若手らしからぬ強かさ」を見て、脅威すら感じていました。よく、マクラーレンに移籍してからの政治的な動きを指摘してアロンソは汚いやり方すると言う人もいますが、それでもあの当時(2007年)のライバルだったライコネンやハミルトンに対してトラック上で無理にバトルを仕掛けることはありませんでした。アロンソはマシンを壊してしまうことを何よりも避けていたのかもしれません。こう考えるてみると、単純比較はできませんが、この2人よりもあの当時のアロンソの方が成熟していたように感じますけど、実際はどうなんでしょうかね。

 

 

/*・・・Next:イギリス・・・*/

次回は3連戦の最終戦、イギリスグランプリです。イギリスはいつも6月上旬くらいまでは、日本では信じられないくらい寒いのですが、6月後半になってようやく暖かくなってきたそうなので、グランプリ開催日もレース日和になるといいなと思います。

 

舞台はF1生誕の地、シルバーストンです。このトラックは、F1のパーマネントサーキットの中でも非常に高速なトラックで有名ですが、随所に中低速コーナーが設けられていて、マシンのバランスも要求されます。またかつてのシルバーストンは今よりもさらに高速なトラックでしたが抜きどころがほとんどなくて、バトルの少ないレースが多かったのですが、現在のトラックに改修されてからはバトルも増えて、レースを見ていても楽しいと思います。そしてターン8(ウッドコート)からターン14(チャペル)までの高速コーナーのシーケンスはドライバーにとても人気があるセクションです。ここは公道コースでは決して見られないF1のダイナミックな走りが見られ、醍醐味が味わえることでしょう。

 

 

** Playback 2023 *********

Pole-sitter:1 M・フェルスタッペン(レッドブル)

Winner:1 M・フェルスタッペン(レッドブル)

Fastest lap:1 M・フェルスタッペン(レッドブル)

********************

 

昨年のイギリスグランプリはフェルスタッペンがハットトリックを達成しました。昨シーズンのレッドブルとフェルスタッペンのコンビネーションは、このような高速コースでは特に強差を発揮していたと思います。また、ノリスとピアストリのマクラーレン勢の2人がとてつもない速さを見せ始め、上位争いに顔を出すようになったのもここシルバーストンからでした(ノリスはその前のオーストリアからアップデートを導入していてすでに速かったですが)。何しろ2023年の序盤のマクラーレンは最下位を争っているようなマシンでしたから、それが他のチームをごぼう抜きして上位争いに加わることなんて、まったく想像もしていませんでした。その勢いが今シーズンも持続されているようなので、今シーズンもマクラーレンが活躍するかもしれません。メルセデスも3-5位で悪くなかったのですが、今シーズンはどうでしょうかね。フェラーリは奇跡を祈るのみでしょう。

 

激しくもクリーンで、後味のいいバトルが見たいなと思います。