不幸を書こうか幸福を書こうか、それが問題だ

自宅の向かいの家に室内飼いの猫がいる。


女の子だ。

発情期になると、なぜわかるのか、男の子がその家の前で大鳴きするようになった。

数年前の話だ。

それと同時に、
大鳴きする男の子が

向かいの家の主人にご飯をもらい


それが習慣化して、

家の主人が仕事から帰る頃になると、


数匹の猫が家の前で主人を持つようになった。

ごはんのある場所を野良の子はなぜか、知っていて共有しているんじゃないか、と思う。


数匹あつまる猫のうち、一匹が女の子だった。


当たり前だけれど
嫌な予感がした。


赤ちゃんができる。



その予感は現実化して、
数カ月後に、6匹ぐらいの赤ちゃんができた。


私がご飯をあげているわけではないが、

私の自宅のすぐ前の家に来ている猫なので



自分の猫のように放ってはおけない気持ちになっていた。


時が来たら、避妊手術をしなければ、
時が来たら、寒さ対策をしなければ、

と思っていたが

向かい家の主人がご飯をあげていたので、


野良猫とはいえ
はたした、私がご飯をあげていいものか、どうか、ためらっていた。



とはいえ、

ねずみ算式に増えてしまう前に、

向かいの家の主人と話し合って



避妊手術をして、さらに、子猫は里親を探すつもりでいた。





それ以外にできることはないか、と考え





動物愛護センターに電話で相談した。






愛護センターの答えは、


野良猫にはご飯をあげないでください。


ただそれだけだった。



保護とかしてくれるわけじゃないんだ。



なんのための動物愛護センターなんだろう。



放っておいてください、って酷いと思った。






車の中にはいつ何時


野良猫に会ってもいいようにキャットフードは積んである。


時期が来たら、向かいの家の主人に



私がごはんをあげて、その後の面倒を見る許しを得ようと思っていたか、機会を逃していた。




そんなある日、


おかあさん猫が赤ちゃんを連れてうちの前に来た。



いつもの光景だが、なんか不自然だった。





お母さんの足がない!




近づいて良く見た。




後ろ足がもげて
骨が出ていた。


三本で歩いている。



傷口はふさがっていなくて血が出ていた。




それを見た瞬間、

ああ、なんてことだ!


放置はできない。

向かいの家の主人に許可をなんて

呑気なことを言ってる場合しゃない、と車にあるキャットフードを取りに行き、猫に近づくと


三本足だろうと子猫を
連れてものすごい勢いで逃げてしまった。



時間をかけて慣らすしかない。




どうか、それまでお母さん猫が生きていてくれないと。







そう思った後から




その猫たちは、姿を見せなくなった。








そして、数カ月後




ひょっこりお母さんだけ現れた。





足は三本。



それでも、普通に走ったりする。



人が近づくと


走って何処かに行ってしまった。




赤ちゃんはそばにいなかった。






死んでしまったのか、



独り立ちしたのか、それは分からない。




それきり、




お母さん猫は見ていない。


ちなみに、ご飯をもらっていた他の猫もその頃には来なくなっていた。


何にもできなかったなと 自分が情けなくなった。



今でも猫を見つけるとお母さんなんじゃないかと 必死に後追ってしまう。




もう絶対 ためらわないと心に決めている。




三本足の痛々しいお母さん 猫の話でした。