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quo world

 いろいろ。。

第五章

 

雪が降っていた 
寒い夜
消防車のサイレンの音…

 

その何日か前にフジエさんはとうとう寝付いてしまった
やっぱり病院には行かないと言い張ったが 強制的に入院となった
正直な気持ち 私達はほっとした

 

朝一番に携帯が鳴った
上司からだった

 

昨日フジエさん 亡くなったって。。

 

あぁ、そうなの…

 

暫くの沈黙の後

実はね、フジエさん自宅で亡くなったの。。

 

え?病院じゃないの?

 

うん。。。昨日病院に役場の人を呼びつけて どうしても退院すると言い張って。。
役場の人もね どうしようもなかったって…

 

そう…言い出すときかないもんね

 

でね 焼死なの。。。

 

昨夜のサイレンの音がよみがえって来た

まさか、昨日の火事…
 
フジエさんの家は木造で おまけに燃えやすい塗料や紙がいっぱいだった

でも ガスは引いていなかったのでポケットコンロで料理をしていたが 今は使用していない
ストーブの周りには何も置かないようにしていたし
ストーブの給油も私達がしてた
日頃から 火事には十分気をつけてると言っていたし…

 

何があったかはわからない

 

近隣の人も フジエさんは入院していると思っていたので 今朝になってフジエさんが自宅にいたことがわかって それから焼け跡を捜索したら…

 


第四章

 

フジエさんと目の前のご主人との穏やかな生活は続いていた


だけど少しずつ ほんの少しずつ フジエさんの身体は弱っていった
しかし 気力だけは失うことはなかった
いつも毅然とした態度で 自分の意見をはっきり言った

 

そんなフジエさんがいつも言っていたのは
私は病院にはいかない!
私が入院したら 誰がこの人にご飯を食べさせるの?!

  

最近は夜中に不審な訪問者があり 玄関をがたがた揺らすという
かと思えば 家の周りをぐるぐる回る足音とヒソヒソ話声がするらしい
布団にくるまりご主人と二人で息を潜めていると それは暫くすると何もせずに立ち去る

 

絶対家はあけられない!!
ここに居て家を守らなければ!!
この家はね 主人と私の宝物なのよ!

 

二人で一生懸命に働いて建てた家
そこでの生活は慎ましかったであろうが 幸福な日々だったに違いない
今は床もふにゃふにゃで 襖の開け閉めもままならない 雨漏りもする


壁一面にところ狭しと張られた絵は彼女の作品

 

そう 彼女のもうひとつの趣味は絵を描くことであった
広告を何枚も重ね厚紙を作り そのキャンパスに鉛筆から始まりボールペン・サインペン・マジック・ポスターカラーなどで線を重ねていく 不思議な絵だった…
締め切った狭い部屋で 咽そうなシンナーのにおいも気にならない様子で 一心不乱に絵を書く姿は狂気に近いものがあった


フジエさんの絵のモチーフは常に人物だった …それも女。。
彼女の中の女

愛する人の遺骨を食べてしまうほどに強い情念
情念が生んだであろう 今は亡きご主人と過ごす毎日

 

そのフジエさんが私の為に一枚の絵を書いてくれた
梅にうぐいす  その前に和服の私が立っている

 ありがたかったが

       ちょっと こわっ… って思ったのも事実。。 

 

そんなかんなでフジエさんとの関係は四年続いた 

水色の空に馴染たる
静かにしかも華やかに

 

群れなす花のその色に
心弾ませ春を知る

 

月夜に揺れた花の影
儚きものの美しさ

 

花の命はいとも儚く
束の間の夢今宵限りと
桜色にと染めゆく一夜

 

無情の雨が花びらを打つ
風にさらわれ花びらが舞う
それもさだめと抗いもせず

 

桜はらはら花びらこぼす
淡き色した涙のように

桜はらはら花びらこぼす
淡き色した涙のように

 

さくら

第三章


温泉に一緒に行ってから フジエさんの私への安心感がうまれたのか
色々なことを話してくれた
満州で苦労したこと
引き上げてきた時の苦労
親戚に冷たくされたこと
体が弱く子供に恵まれなかったこと
ご主人が急逝して途方にくれたこと
彼女はご主人を愛するあまり その遺骨を食べてしまったこと etc.
その生き様は壮絶で 私はただ頷きながら聞くだけだった…

 

話の中でご主人が亡くなったことは理解しているのだが
相変わらずフジエさんの目の前にはいつもご主人が見えていた

 

フジエさんは年金暮らしだったが
生活を切り詰めて かなりのお金を貯めていた(らしい)

 

その通帳と印鑑の在り処を私に教えてくれるという
自分が死んだら 誰にもあげる人がいないから…
遺言状も書いたから…

ありがたくお断りをしたが、

                炊飯器の中だから!!ってあっさり…

 

年が明け フジエさんは体調を壊した
熱はなかったがぐったりしてた
たまたまその日に訪問したヘルパーが救急要請をして フジエさんは入院した
肺炎を併発していた

次の日 フジエさんは病院を脱走してきた

 

頼みもしないのに!!
フジエさんの怒りは頂点だった

 

私達は困惑した
どうすればいいのだろう。。。
一人暮らしは もう無理な状態に近い

 

気力なのだろうか…
フジエさんは私達の心配をよそに復活した

明日

 

月が 終わる夜

 

moon

 

 

 そして

 

新しい月が 生まれる夜

第二章

 

フジエさんの家にはお風呂がなかった
身だしなみには気を配っているようだったが お風呂に入ってる気配がない

 

さりげなく聞いた
温泉すきですか?

 

彼女は水を得た魚のごとく話始めた
私はね、いつも〇〇温泉に行っていたのよ
ほら、あそこに行くと肌がつるつるになって気持ちいいでしょ
普通のお風呂なんかには入れないわ

 

へぇ~そうなんですか?
じゃぁ 今も行かれてるんですね

 

それがねぇ~ 行きたいのだけど 目が見えにくいから危ないし ちょっと我慢しているわ
だけど 行きたいといつも思っているのよ
そうだわ!あなた 一緒に行ってくださらない?

 

もし良かったら私が勤めてる施設のお風呂にみえませんか?
入りやすいと思いますよ

 

いえいえ 私はね
〇〇温泉じゃなければだめなの!
そうねぇ~ この前に行ったのは2年前かしら…

 

 ゲッ!…2年前…

 

上司との相談の結果
お正月前に入浴は不可欠という事になった
それも  フジエさんを尊重して〇〇温泉での入浴

 

彼女は何故か 私と行くと決めていた

え~~い!こうなりゃどこでもいってやる~~~!!(やけくそ)


〇〇温泉の日帰りツアーはすぐに決まった

 

その日の彼女は上機嫌で 温泉に向かうタクシーの中でも饒舌だった
たまたまそのタクシーの運転手さんが昔なじみで 二人の会話から
フジエさんが本当に温泉が好きで ほぼ毎日通っていたのがわかった

 

温泉には昔のおなじみさんもいた

 

二年ぶりの垢を落とし さっぱりした顔のフジエさん
     来てよかったな。。

フジエさんは89歳
目が少し見えにくいが誰にも頼らず 矍鑠とした生活を送っていた
一人暮らしの為 安否確認という名目での派遣が始まった
家は少々傷んでいたがフジエさんの財産だった

 

第一章

 

一人暮らしのフジエさんの日課は
朝5時に起きて 丹精こめて育てている花に水をやり
それが終わると化粧をする
いつも身だしなみにはとても気を使っていた

 

それから
仏壇に参り、ご主人の遺影に挨拶をして朝食を頂く

 

ある朝 訪問した私にこう言った

最近主人が食べないのよ
目の前にご主人の遺影を据えて 写真の口にスープを運んでいる
ほら、こぼすでしょ

 

その日からフジエさんの言動がおかしくなった
ご主人がまるでそこに居るかのように話し掛ける
いや。。フジエさんには実際に見えていた

 

ねぇ、フジエさん 一度病院に健康診断にいってみようか?

何気なく言ってみる
何処も悪くない!

 

連絡する親戚も身寄りもないフジエさん
役場の福祉課に連絡を取り配慮を願う
しかしどんな説得にも応じない
かたくなにどこにも行かないと言い張る
ご主人が見える以外は いつも通り矍鑠とした婦人のままの生活が始まった

玄関を開けると鼻をつく臭い
あぁぁ!やっちゃった…

居間に上がると転がった酒瓶。。
糞尿にまみれて泥酔してる姿

どうしたの?なにがあったの?



彼はアルコール中毒であった
正気の時の彼は とても紳士であったが 几帳面すぎる神経質な性格が気にかかる

それが、お酒が入ると180度人が変わる
性欲を剥き出しにし あらゆることに文句をいう
家族はとうに家を出ていた

何十回も入退院を繰り返し 二度とお酒には飲まれないぞ と帰ってくる

今回は半年持った。。
兆候はあった

ささいなことにいらいらし始め 黙りこんでしまう



誰も自分を理解してくれないと 泣きわめく


張り詰めた糸が また切れてしまったんだね

汚れた身体を拭きながら
   淋しいんだなぁ って思ってた

 雨の最初の滴りが
ふいに頬打ち 空を見上げる


鉛色した雲に閉ざされ
青い空が何処にも見えない


泣きたい気持ちを見透かされたの?
雨の雫が頬つたう


無数に落ち降る雨の中なら
泣き顔誰にも見せずにすむから…


卯月に咲く花
雨に散る
できる事なら咲き続けたい


卯月に散る花
雨に咲く
涙堪えて雨に咲く

 

 

願い

 

 

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あなたの気持ちと

私の想いを

天秤ばかりに掛けたらね      

一も二もなく

私に傾く。

天秤