東京のシンボルのひとつ、東京タワー。


 この近くは、増上寺があり、大使館があり、老舗のお店がいくつもある歴史を
感じさせる場所です。
 オランダ大使館もあり、そこから見た東京タワー。左は学校です。


 そんな場所の一角に、洒落たお店がありました。「シェ・ウラノ」というお店です。




 この店はその時々で料理が変わります。というのも、仕入れに合わせてメニュー

を組み立てるからです。

 この日は7月も終わりの頃。日照りが厳しい晴れた日でした。
 店内に入ると落ち着いた雰囲気で、時間を忘れる空間です。


 サービスプレート。皿の柄はいくつかありますが、どれも洒落ています。


 本鱒のスモークサラダ仕立て。脂の乗った本鱒でした。


 その日にあったメニュー。ヴィシソワーズの雲丹添え。


 本日の魚料理、鮎です。程よく脂が乗った肉厚な「半天」という半分天然、半分
養殖の鮎を使っているのだそうです。
 ところで、鮎といえば肝も美味しいと思いますが、フランス料理では使わないの
かな…と思いきや、ちゃんと料理になっています。鮎の左奥、イチジクの上に
乗っている四角いパテに使われていました。


 肉料理は、和牛ホホ肉の煮込み。メインは、魚、鴨モモ肉のコンフィー、肉のうち、
1つを選ぶようになっているのですが、魚も肉も美味しそうなので、追加で注文して
しまいました。トロッとした食感で美味しかったです。


 デザートは、パルファ(パフェ)です。中にアイスと果物がゴロゴロと入っていま
した。果物もちゃんと下ごしらえしてあり、さっぱりした一品です。


 食後のハーブティ。レモングラスをベースにしているようでした。以前、アール
グレイを注文したことがありますが、香りも味もよかったです。料理は美味しい
けれど、飲み物は普通というお店もありますが、ここの料理、そして飲み物は
徹頭徹尾しっかりしていて、最後まで満足いくものでした。


 お店はこじんまりした感じで、シェフと給仕のお二人で切り盛りしているようですが、
とても居心地良い、素敵な空間です。
 たまには、こんなお店で時間を忘れて、ゆっくりしてみたいものです。
 

 ブログでは、同じ内容はなるべく載せないようにしようと思っているのですが、
どうしても個人的な好き嫌いで行く場所が決まってしまうため、ふたたびこの
場所の紹介となってしまいました。
 東京は六本木、国立新美術館。

 大人の街、六本木ですが、時期はゴールデンウィーク。子どもがたくさん。
ミッドタウン地下のモニュメントは、遊び場と化していました。


 それを横目に、お目当ての美術館へ。ここはさすがに落ち着いています。


 今回見に来たのは「カリフォルニア・デザイン 1930-1965 -モダン・リヴィングの
起源-」展。どこかで広告を見て以来、ずっと気になっていた企画展です。


 展示場内は撮影禁止ですが、美術館のウェブサイトにいくつか作品が紹介され
ており、またインターネットで検索すると、許可を取って撮影した方の写真があり
ましたので、そちらで作品を鑑賞することができます。

 前回とは違う場所を撮った美術館内の風景。整然としているというか、躍動感が
というか…とにかく素敵なデザインです。


 毎度のごとく、この美術館に行くとほぼ 100% 行くお店へ。


「ポール・ボキューズ ミュゼ」です。


 よく映画館から出てくる人で、見てきた映画の主人公に感化されて、ロッキーを
見ればシャドウ・ボクシング、スターウォーズを見ればダース・ベーダーのような
息づかいをする人がいますが、私もデザイン展を見て感化され、ついついこんな
写真を撮ってしまいました。

 念のため、書きますと、ただのコップです。コップの影を見ていたら、急に何か
に乗り移られたように、この写真が撮りたくなりました(苦笑)。

 さて、肝心の料理です。前菜は「豚肉のゼリー寄せ ソース・レムラード 
甘酸っぱいギリシャ風野菜のマリネと一緒に」
 豚のタンなどのゼリー寄せです。中華料理の前菜に似たものがあったと
思いますが、中華のようなフレンチのような感じで美味しかったです。


 続いて、スープ「カリフラワーの温かいスープ」。
 カリフラワーの味がしっかりしていました。ブイヨンがいいのか、クリーミー
ながらもカリフラワーの味が引き立っていました。野菜のボタージュなどは
割とどこでもメニューでありますが、野菜の風味がほんのりしていることが多い
ので、これは印象に残りました。


 魚料理「アイナメのプランチャーソテー ソース・マトロート グリーンピース
のフランと季節野菜を添えて」
 アイナメは、ほくほくした焼き具合でした。家の近所ではアイナメは手に
入りませんし、家で作ると、こんな風に上手に焼けないので、これは食べて
良かったと思います。グリーンピースのフランは少し固めに仕上がっていて、
フォークでも食べられました。


 肉料理は、「牛フィレ肉のグリエ 赤ワインソースとにんにくのムースリーヌ
ミニチンゲン菜とじゃがいものドフィノワと一緒に」
 実は、この料理は本来のコースの料理ではなく、「貴婦人と一角獣展」と
同じく館内で開催していた絵画展とコラボしたコースの料理ですが、
アラカルトで頼みました。シェフがタペストリーに描かれた要素を表現した
もののようですが、絵画展を観ていないのでピンときませんでした。 


 デザートは「りんごのタタン シナモンのアイスクリーム添え」。
 リンゴは、カラメルで味付けしてあるため苦味と甘さがあって、キャラメル
の苦いのが好きな私にとっては気にいった一品でした。シナモンは、
それほどシナモンの香りが強くなくクリーミーなので食べやすいと思います。
私は、シナモンが好きなので、もう少し毒々しいほうが良かったため、少々
残念でしたが、リンゴのタタンの味付けが濃いので、これでバランスを
取っているのかなと思いました。
 紅茶はセイロンティーでした。




 ふと周りを見ると、空が暗くなっていて、お店や館内の雰囲気も落ち着いた
感じになってきました。


 お店を出た美術館の出口で見かけたデザイン展の案内表示。
 文字や写真はアナログ風なのに、それがいかにもデジタル風な表示を
されているという対比が面白かったです。


 美術館を出たところから見た六本木ヒルズ。ビル屋上の右のランプが
虹色できれいでした。


 辺りには夜の美術館の建物の写真を撮っている人も。


 まもなく本日の閉館の時間です。


 またいつか、素敵なデザインとの出会いがあることを願って…。


 師走の銀座はクリスマスに向けて忙しい。

 これは、真珠で有名な老舗の宝石店のディスプレイ。毎年、この時期には大勢の人が写真を撮りに来ます。

 有名な宝飾店には、干支をモチーフしたデコレーションが。


 そんな街並みを見ながら、とあるデパートのエレベータで地上50mに登ったところで、こんなお店を見つけました。

 椅子?
 …ではなくて、こんなお店。

 洒落た雰囲気のフランス料理店です。お店の中はこんな感じです。


 まずは、小前菜。2段になっています。


 前菜「鮮魚のカルパッチョ&モザイク仕立て、秋の風味にウニを添えて 海藻ドレッシング」。モザイク仕立ては、スモークサーモンとホタテのタルタルでした。オリーブオイルの香りも良かったです。


 続いて、白子のポアレ。通常のメニューにはないので正確な名前は分かりませんが、当日、良い素材が手に入ると、その時だけの臨時メニューで出てくるようです。白子はたくさん食べると、くどく感じる時があるのですが、ほのかに火が通っていて、ニンニクなどのスパイスによって、食べやすくなっていました。


 魚料理は「パセリを着飾った鮮魚のポワレ 赤ワインソースとオゼイユ入り白ワインソース」。魚はスズキでした。身がふわっとしていて、上手な焼き方だと思いました。これより焼き方が足りないと生焼けになるし、これ以上火が通ってしまうと、身が固くなってしまいます。その丁度良い絶妙な焼き加減でした。


 肉料理は「シャラン産鴨胸肉のロースト エピス風味」。鴨の皮側にインド料理で使うようなスパイスが使われていたのですが、良いアクセントとなっていました。


 そして、チーズ。カマンベールとミモレット。


 左上にある赤いソースは、あるもののコンフィチュール(ジャム)です。

 何のジャムかお分かりでしょうか?答えは後ほどのお楽しみ。

 氷菓子。キウイのシャーベット・ドリンクなのですが、甘かったです。パイナップルのような風味がするのですが、混ぜてはいないとのこと。パイナップルと間違えるお客さんも多いとのことでした。


 デザートは「ブドウのジュビレ仕立て“2012”」。ブドウのコンポート(シロップ煮)に、ブドウのスープが添えてありました。


 最後は、紅茶と小菓子。紅茶はいろんな種類があり、茶葉のサンプルが入った箱から選びます。


 選んだのは、ハーブティー。ラベンダーといくつかのハーブがブレンドされていました。


 そして小菓子。


 そうそう、先ほどのジャムの答えを書き忘れていました。入り口に飾ってあった大きな唐辛子。これがジャムの正体です。

 エスプレット唐辛子といって、バスク地方の名産とのこと。大きさは、ニンジンくらいあります。ジャムは、もちろん甘味があるのですが…少し後にピリッと来ます。

 今年も素敵な一年になりますように。


 昔、「稲」を英語でなんというか調べたら、riceとなっていて不思議な感じがしたことがありました。売っている「米」も、rice。炊いた「ご飯」も、rice。英語圏では、ご飯が重視されないから、全てriceで済ませても問題ないけれど、長らく米食中心だった日本では、それぞれの段階で名前がついたのだと思います。イタリアでは、スパゲッティを太さによって、スパゲットーニやスパゲティーニなどと区別しているそうです。これは、パスタと親密な食文化による結果なのかなと思います。
 欧米では、仔牛肉と牛肉は区別され、仔牛肉は牛肉より高級な食材とされているそうです。日本では、あまり見かけることがなく、つい最近まで意識することがありませんでしたが、その違いに触れる機会がやってきました。

 その日、降りたのは麻布十番駅。麻布十番と言えば、美味しいお店が多くあると言われている場所です。
 商店街はこんな感じ。


 世界的なハンバーガー・チェーン店も、洒落た店構えです。


 有名な蕎麦屋だってあります。



 その街並みの中にあるのがこのお店、日の木です。


 このお店、一見カフェのように見えますが、実は牛肉の専門店。老舗の和牛卸の店が直営しています。このため、良い牛肉が手に入ることはもちろんですが、なんと冒頭に書いた仔牛の料理が食べられます。

 この日は、仔牛のローストビーフがあったので、頼んでみました。

 よく仔牛(子羊も)はクセがないと言われていますが、それを実体験することとなりました。感想ですが、クセがありません(笑)。牛肉、豚肉、羊肉、鶏肉などは、どれも味の違いがありますが、これは、牛肉とも、他の肉とも、まるで違う味です。しいて似たものをあげれば、ヒレ肉に近いのですが、それがもう少ししっとりした感じです。
 最初、脂身のしっかりしたローストビーフを食べようと思っていたのですが、もうひとつ頼んでいた「雪降り和牛尾花沢の炙り」が脂がしっかりしているとのことだったので、あえて脂の少ない部位のものを頼みました。淡白な味なのですが、柔らかくて、「お肉」という質感がしっかりしていました。

 そして「雪降り和牛尾花沢の炙り」ですが、こういう感じです。
 「炙り」という言葉から、薄く切った焼肉風のものが少し皿に乗っているくらいかと思ったら、しっかりとステーキが乗っていました。これは仔牛ではないので、普段食べ慣れた牛肉の味がします。

 かなり写真を撮ったのですが、きれいに撮れているものが少なく、全部の写真が見せらせず残念ですが、これは甘いイモを使ったボタージュ。


 他にサラダ、ピラフ、デザートです。そういえば、一つ面白いものがありました。それがこちら。

 山崎蒸留所・・・ウイスキーじゃなかったっけと思われた方、正解!
 これはウイスキー樽で作った梅酒です。お酒はほとんど飲まないのですが、これは好奇心に負けて頼んでしまいました。想像していた以上に美味しかったです。どちらかというと梅酒ですが、どことなくウイスキーの香りがします。

 最後はデザートです。このお店のパティシエが作るデザートは、甘いのに甘くない。甘くないとデザートらしくないけれど、甘いと食材より砂糖が目立ってしまう、そのどちらともいえない、甘いが甘くないというギリギリのところを狙っているのかなと思うくらい、不思議な味を作る名人だと思います。そのデザートというのがこちら。

 左がプリン。右がトマトのアイスクリーム。 

 気づけば、17時にお店に入って、20時くらいまでのんびり飲み食いしてしまいました。お店を出れば、外はすっかり暗くなっています。

 ここは麻布十番。江戸時代に創業した豆菓子のお店もあります。


 たい焼き屋。確かこの界隈で有名だったと思います。


 六本木ヒルズ。


 そして、六本木の交差点。

 この街はこれから目覚めるところです。


~その2からの続き~

2) ガストロノミー(お惣菜売り場)とパティシエ(デザート売り場)
 ガストロノミーでは、サラダ、パテ、スープ、ビーフシチュー、ポトフ、鴨肉の味噌和え、ハンバーグ、スモークサーモン、ニシンの燻製、キッシュなど幅広く販売していました。
 ハンバーグは、その時々でソースが代わります。中でも、バターに香草やガーリックを混ぜ込んだ「マキシム・ド・パリ風」は印象に残る一品でした。スモークサーモンは、そのままでも満足いくものでしたが、柚子で味付けをしたものも美味しかった。写真を撮っておかなかったことが悔まれます。
 いくつかの商品は最終日を待たず、販売終了になりました。よく買っていた「じゃがいものポタージュ」もその一つです。在庫が少なくなると「まもなく販売終了致します」という札が商品に添えられていたのですが、この「じゃがいものポタージュ」と他数点は、最後の一品を買うことができました。
 これとパンを朝食にすることが多かったので、朝食の楽しみが減ったという意味でも残念です。


 最終日のショーケース。




 特に忘れられないものがサラダ。「シーザーズ・サラダ」と「地中海サラダ」の2種類あったのですが、そのうち「地中海サラダ」は大のお気に入りで、おそらく通算50個以上は食べていると思います。
 最終日、ショーケースに並んだサラダ。もちろん、1種類ずつ買いました。


 どんなものか分かりづらいと思うので、家で撮った写真を掲載します。上が「シーザーズ・サラダ」、下が「地中海サラダ」です。




 このサラダはとにかく美味しい。お惣菜も含め、外食すると、野菜が摂れないことが多いので、とても重宝していました。特に「地中海サラダ」は、リーフ類に加え、生ハム、ジャガイモ、トマト、ナッツ、オリーブが入り、酢が効いたドレッシングが別に添えられます。
 ここのトマトには思い出があります。2010年、2011年と猛暑で、スーパーなどで野菜が手に入りづらかった時がありました。この時、トマトは棚に並ぶことがなく、秋になってようやく並んだ時には日に焼けたものしかなく、しかも味がほとんどしなかった。
 ところが、このサラダに入っていたトマトは、ほとんど品質が変わらなかったのです。おそらく、丁寧に育てる農家と契約していたのかと思いますが、猛暑の夏も、その後の秋も、味わいのあるトマトでした。
 以前、三國さんが書いた本を読んだ時に、食材は、例えば魚なら釣った瞬間から鮮度は落ちていくものであるが、それをできるだけ、本来の味に戻してあげることが料理人の仕事であるというようなことが書かれていたけれど、このお店は食材にとことんこだわり、それを美味しく提供することにこだわっているお店なんだろうという印象がありました。

 パティシエでは、プリンや焼き菓子を売っていました。プリンは、何度か買ったことがあります。プレーンなもの以外に、ブルーベリーやクロミツのソースがかかったものがありました。


 夕方になるにつれて、商品も少なくなってきました。焼き菓子、決め塩、三國さんの本(ご本人のサイン入り)も、数が少なくなってきました。まもなく閉店時間です。 


 スペースが目立つようになっていたショーケースの中では、デコレーションに使われていた野菜の置物が、こんな形に。


 ガストロノミーとパティシエは、4人の店員さんが交替で担当していましたが、最後まで頑張っていました。私は週末に買いだめすることが多かったのですが、賞味期限を気にしてくれたり、その他いろいろ気を使っていただきました。
 お店って、単にモノを買うだけの場所だと思う人が多いと思いますが、買い物をする行為自体を楽しむ場所だと思うのです。その意味で、このお店で買い物を出来たことは、私にとって幸福なことでした。そのため、お店がなくなることは、美味しいものを買うことが出来なくなるだけでなく、買い物の楽しみが減ることでもあるのです。

 一週間ぶりに行ったお店があった場所は、工事中でした。次にどんなお店が来るのかわかりません。素敵なお店であればいいなと思いますが、もしそうだったとしても、このお店が色あせることはないと思います。

 素敵な思い出を作ってくれたお店。


 お店に飾ってあった「感謝」の文字。今の私の気持ちです。


 お店の人の幸せを祈りつつ、またいつか会えることを祈りつつ。

~完~


~その1からの続き~

 このお店の看板メニューとも言えるのが、フォアグラ丼。ご飯にフォアグラが乗っているだけのシンプルな料理ですが、これが美味しい。
 これがフォアグラ丼です。きのこのソテーが添えられており、上にはドレッシングで和えたハーブの葉が乗せられ、ピンクペッパーがかけられています。


 フォアグラは、表面は焼きあげてあるけれど、中はうっすら火が通った程度でトロッとしており、スプーンで切ることができます。これを崩して、かかっている煮詰めたソースと一緒にご飯へ混ぜると、洋のフォアグラと和のお米がこんなに合うものなのかと感心します。実は、ある鉄板焼きのお店でもこのフォアグラ丼を食べたことがあるのですが、フォアグラに火が通り過ぎていて、この混ざり合った美味しさは味わえませんでした。
 フォアグラはフライパンで焼いているのですが、 焼きながら、絶えず焼汁を上からかけることにより、絶妙な焼き具合や風合いが生まれます。写真は、焼汁をかけているところです(手の動きが早いので、分かりづらいかもしれません)。

 このフォアグラ丼は、最終日もメニューにありましたが、最終日は数量限定となっていて、17時過ぎに売れ切れになったそうです。私も、お昼に食べました。最後の2日間は、ミニサラダとスープのセットもありました。


 「リンゴのシャーベット」も少し前に販売終了だったので、最終日に食べたデザートは「フランボワーズソースのバニラアイス」。アイスのメニューは時々しか出たことがなく、その時々でソースなどのアレンジが加わっていました。

 イートインの紹介はこれでおしまいです。次のブログで、お惣菜も紹介します。

~つづく~


 人間誰しも自分だけの秘密にしておきたいことがあるものだと思います。それが大切な何かなので、あまり人には言いたくないこと。私にもそんな秘密があります。その一つがレストラン。よく「人に教えたくないお店」という表現をテレビや雑誌で目にしますが、文字どおり人に教えたくないお店。このお店は、数少ないそういうお店でした。単に食事を楽しむ以上に、いろんな感情があって、書くことがためらわれるお店でした。
 お店の名前は「ミクニ日本橋三越店」。2012年2月19日に閉店したお店です。


 このお店は、2007年10月2日に、当時行なわれた日本橋三越の地下食品街の大改装に合わせて登場したお店です。そして、ミクニという名前は、このお店が三國清三さんのレストラン「オテル・ドゥ・ミクニ」が出店したお店だからです。客席6席のイートインと、隣接するガストロノミー(お惣菜売り場)とパティシエ(デザート売り場)からなるお店です。
 なぜ、人に教えたくないこのお店について書こうと思ったのかというと、こういうお店があったことを記録しておきたいという気持ちからです。

1) イートイン
 イートインでは、食事、デザート、飲み物が楽しめます。前菜のメニューが数点、メインが定期的に替わるパスタとフォアグラ丼、ある時期まではこれに肉料理がありました。ステーキや骨付きのラム肉なんかが出たこともあります。デザートは定番の「リンゴのシャーベット」と、それに時々もう一品加わることがありました。
 閉店最後のメインメニューは、「フォアグラ丼」、そして季節のパスタ「フランス産ホロホロ鳥と菜の花、フレッシュトマトのラグー・リングイネ」でした。

 まずは、サラダ。少しお腹が空いているくらいなら、これで満足という量の一品です。ジャガイモ、トマト、アクセントにナッツやオリーブなどが入っています。

 前菜3種の盛り合わせ。内容は、パテ・ド・カンパーニュ、鴨肉、タラとポテトを合わせたブランダード(ペースト)です。鴨は、味がしっかりしています。


 パスタの「フランス産ホロホロ鳥と菜の花、フレッシュトマトのラグー・リングイネ」。普段は、スパゲッティのメニューが多いのですが、ソースに合わせて、細めのカッペリーニに変えたり、リングイネに変えたりします。このリングイネのメニューは、菜の花の苦味と、最後にふりかけるチーズの風味が良いアクセントでした。

 デザートの「リンゴのシャーベット」は好物だったので、いつも2人分を注文して、それを一つのグラスに入れていただいていました。一人前は、この半分くらいです。アルコールを飛ばしたワインゼリーを下に敷いて、その上にリンゴのシャーベット、実は隠し味でほんの少しアニス系のリキュールが加えてあり、なんとも言えない風味があります。そして、一番上に季節の果物のコンポート、このときはリンゴでしたが、イチジクなどの時もありました。


 オープンキッチンなので、仕込みをしている様子も目の前で見られます。フォアグラ丼に入れるきのこ類のカット。


 フォアグラは、フランスで取れたてのものをすぐに急速冷凍した鮮度の良いものだそうです。これを目の前でフォアグラ丼一人分ずつ切り分けます。


 仕込みをしているのは、この店4代目のKシェフ。写真掲載の許可をいただきましたので、紹介します。


 フォアグラ丼については、次のブログで紹介します。

~つづく~


 まもなく2011年が終わります。
東京タワーでは、クリスマスの後くらいから、こんな電飾になっています。東京Tower

 年末の今日、早稲田に行ってきました。
本屋も、美容院も、ファーストフード店も、まだ営業しています。
美容院

 早稲田にある名所の一つ、穴八幡宮であれこれお願いしました。
いっぱいお願いしたので、どれだけ聞いてもらえる事やら…。穴八幡

 お参りの後は、今年最後の食事。これにしました。
穴八幡宮の目の前にある「三朝庵」。カレー南蛮やカツ丼の発祥の店です。
三

 年末は、年越しのメニューになっており、丼ものはなく、蕎麦のみです。
頼んだのは、冷たいおそば。これで、たったの500円。さすが学生街です。
そばをざるに載せたり、蕎麦湯を湯桶に入れたり、そういう無駄を省いて
行きついた値段。蛮カラな早稲田らしいと思いました。美味しかったので、
実はもう一枚追加してしまいました。これで年越し蕎麦はおしまいです。
そば

そば湯
ちなみに、カツ丼などは、年が明けてしばらくしたら、再開するそうです。

 ところで、お店で見つけたあるもの。
「受験生ガンバレ!! 早稲田大明神」の色紙。
早稲田大明神って誰かと思ったら、サンプラザ中野さんのことらしい。
早稲田大明神
 ブログを通じて知り合った大阪のYさんが、今受験勉強中なので、
励ましの気持ちを込めて、載せます。おそらく、大学受験ではないと
思いますが、無事に合格するといいなと思います。

 来年は良い年になりますように。
流鏑馬
 穴八幡宮の流鏑馬像です。 


 この日は、東京・乃木坂にある国立新美術館にやってきました。
来た目的は二つあり、一つは絵を観ること、そしてもう一つは
食べることです。
  国立新美術館は、 2007年(平成19年)1月に開館した比較的
新しい美術館で、建築家の黒川紀章氏が設計しました。
正面

 また、美術館の赤いロゴは、ユニクロのロゴなど手がけている
佐藤可士和氏の作品なんだそうです。ロゴ

 今回観に来た展示は、「モダン・アート,アメリカン ―珠玉の
フィリップス・コレクション―」展という19世紀後半から戦後に
かけてのアメリカの画家の絵を紹介した展示です。展示案内
 案内で紹介されている絵は、エドワード・ホッパーという画家が、
1929年の世界恐慌の3年前に描いた作品ですが、やがて来る
不況を暗示するような暗さがあります。ホッパーの作品は、
アシュカン派と呼ばれる日常を題材にして絵を描くスタイルで、
「ナイト・ホークス」という有名な作品があります。 

 絵を観た後は、美術館の建物の中にある「ブラッスリー 
ポール・ボキューズ ミュゼ」で食事をしました。
フランス料理界の重鎮、ポール・ボキューズ氏のお店です。
 このお店は、美術展の展示に合わせた特別コースを
用意していて、他のポール・ボキューズのお店では
食べられないので、展示を観に来た時は、毎回のように
食べに行きます。
 今回は、アメリカがテーマなので、下記のようなメニューに
なっていました。(写真は、メニューの順)

◆“シーザー”サラダ フォアグラのソテーと共に 
 (レタス・鴨胸肉の燻製・クルトン・ポーチ・ド・エッグ・
 パルメザンのコポー・フォアグラのソテー)
◆ポットに入れた小海老とアサリのスープ パイ包み焼き 
 クラムチャウダー風
◆柔らかく煮込んだスペアリブのグリエ マッシュポテト添え
 ソース・ディアーブル
◆キャラメルとナッツのブラウニー 洋梨のコンポートと
 ヴァニラアイスクリーム添え
前菜
スープ1
メイン
デザート
 どれもアメリカ料理なのですが、フォアグラなんかが使われている
ところがフランス風で、面白いです。
 スペアリブは、煮込んであるためか、ナイフをスッといれたら
肉と骨がきれいに分かれました。手を使わずに食べられます。
肉が柔らかく、焼汁の香りが香ばしかったです。

 この美術館は、建物自体も好きで、毎回ぼんやりと建物の中を
歩きながら、空間そのものを楽しんでいます。主な特徴は、外装
には鉄筋が使われていながら、内装の壁には木材が使われていて、
ところどころに和風のテイストを感じることです。そして、曲線が多く、
光と影が美しいことです。
PB遠景
内部
館内2
横から光と影
館内1

 何度もここに来ているのに、この空間にいること自体を楽しんでしまい、
ふと気付くと、数時間経っていることが珍しくありません。
 この日も、昼前に来たのに、帰る頃には夕方になっていました。
夕方1
夕方2

 普段と違う空間で、普段に巡り合わないような芸術と出会い、
普段しないような食事をする。
 たまには、そういう贅沢な時間の使い方もお勧めです。


 子どもの頃の話ですが、今でも覚えていることがあります。
桜が咲いていたから、4月ごろだと思うのですが、親と一緒に
北の丸公園の桜が見えるオープン・カフェ(と思われる)に
いた時のことです。
 軽食を取っていたら、隣に座っていた初老の外国人が、
私の時計を見て、自分の時計と交換しようと言ってきました。
私がしていたのは、スヌーピーのおもちゃ時計、彼が腕に
していたのは高級な金時計。その結果は…?
 もちろん、断わりました。その外国人のおじさんも
本気ではなく、小さな子供が大事にしている時計を見て、
遊んでみたかったのかもしれません。
 おじさんが帰った後、親が言うには、良い時計だったとのこと。
しかし、小学校に行く前の子どもにとって、大事なことは
その時計が好きかどうかであり、何十万円しようが、他の
時計には興味がありません。
 もっとも、今だったら、交換しているかもしれませんが…。

 少し前に、経済の基本は物々交換だと教わって、なるほどと
思ったことがありました。そして、その基本は「私」が、
それをどれだけ必要としているかです。
 街中でペットボトルの水が300円で売られていたら高いと
思うでしょうが、砂漠のど真ん中で四方を見まわしても
オアシス1つない状況で、同じペットボトルの水が1,000円で
売られていたら安いと思うかもしれません。
 ピカソの絵が好きな人にとっては、なんてことない彼の
デッザンに何百万円を払うと思いますが、絵に興味がない人
にとってはただの落書きでしかありません。
 価値は人によって異なり、同じ人でも状況によっても変動します。

 誰かと一緒に食事に行く時によく思うことは、料理に対しての
価値観も千差万別であるということです。
 お店によっては、一皿の料理が数千円するところがありますが、
その値段だけを聞いて、高いので嫌だと言う人がいます。
一方で、それを頼んでみようと言う人がいます。
どちらが正しくて、どちらが間違っているということではなく、
それはそれぞれの価値観なんだと思います。

 魚を焼いてソースをかけただけが数千円と言えば高いと
思うかもしれません。しかし、その魚の焼きかたが芸術的であり
外はパリッと焼きあがり、口に含むと、中のほうの身は
今にも溶けるようなとろけ具合で、火が通っていながら、
通り過ぎていない。ソースは、バターに、季節の野菜を
濾したものを合わせてあり、魚の味を殺さないのに、
その風味に斬新的な風味を与えている。この焼きかたを
マスターするのにシェフが修行した年月は?このソースに
辿り着くまで試行錯誤した日々は?その時間の結晶を
数千円で手に入れられるなら安いのではないだろうか、
私はそう考えます。
 もし、自分が同じ料理を作るために、食材を買い付け、
ソースを作り、同じクオリティで魚を焼く、この作業を
数千円で引き受けるかと言えば、絶対に引き受けません。
 しかし、それをお店で数千円で手に入れられる。
それは私の価値観では安いと思うことなのです。

 以前、あるシェフと話していて、「価格がちょっと高いと
よく言われるんです」と言われたことがありました。
その時「私は高いと思わない。別に食材にお金を払って
いるんじゃなくて、作ってくれたシェフの技術や料理に
お金を払っているんだから」と答えたことがあります。
 シェフもそういう思いがあるのか「皆さんがそう思って
いただけるといいんですけどね」とさみしそうに
笑っていたのが印象的でした。

 我々は何にお金を払っているでしょうか?
食材に?料理に?技術に?アイデアに?満足感に?
それは人にとって違うでしょう。
 しかし、もしその料理を食べて、作った人の修行の
年月か感じられたなら、その人が何日も寝ずに
思考錯誤した日々が感じられたなら、感謝の気持ちを
込めて、一皿に数千円を払ってほしいと思うのです。
 それが、彼らの努力に対する賛辞なのだから。

 そんな素敵な修行と試行錯誤の結晶の1つ。
溜池山王の大好きなイタリアン・レストランのティラミス。
実は、フローズン・ティラミスです。(写真左奥)

このお店のことは、またいつか書こうと思います。

 料理を愛する全ての人へ。
そして、料理を作ることを愛する全ての人へ。