前回はメキシコの古代歴史について語らさせていただきましたが今回からは現代に移りまして現在活躍されているメキシコ人についてお話させていただければと思います。

早速みなさんに質問ですが世界でビル・ゲイツについで最もお金持ちは誰でしょうか?
答えはメキシコ人のカルロス・スリム・ヘル氏です。

今回はメキシコでけでなく世界の富豪、カルロス・スリム・ヘル氏についてお話させていただきますね。

日本ではあまり知られていませんが2013年までビル・ゲイツを抜いて4年連続で世界の富豪のナンバーワンの人です。
(2014年は僅かの差でビル・ゲイツがトップ)
この富豪のレベルになると雲の上の数字になるのですが彼の純資産で720億米ドルと発表されています。 ちなみに日本のトップがソフトバンクの孫正義さんの184億ドルですのであの孫さんの4倍です。またメキシコのGDPの7%の財産家でもあります。
これだけの人ですから、もちろん、メキシコでも英雄の一人です。
しかしながら、カルロス氏は事業の主体が中南米であり日本との関わりが薄いため、世界一の大富豪であるにも関わらず日本での認知度は低いと言えますのでカルロス氏とは一体何者なのか振り返っていきたいと思います。

カルロス氏は1940年1月28日に、メキシコシティの実業家の三男として生まれました。
彼の両親は共にレバノンからの移民で、彼の父は一代で莫大な財産を築いた実業家で子どもたちに小さい頃から運用に関する英才教育を授けました。なんとカルロス氏は12歳にして株取引を始めていたそうです。

やがて大学生となったカルロス氏は、ラテンアメリカのトップ大学とも言われる名門校、メキシコ国立自治大学に進学します。そこでは土木工学(むしろ日本で言う建築構造に近い)を専攻していました。カルロス氏はゼネコンのオーナーでもありますが建築に興味を常に抱いており、今でも建築設計のプロジェクトに参加してくるそうです。
ちなみに同校からは、歴代のメキシコ大統領や3人のノーベル賞受賞者も輩出しています。

大学では数学の教師もしていたそうで26歳で卒業をしていますが大学時代は同時に不動産などに投資をして財をなしており(不動産投資会社グループカルソを設立)卒業時には37億円を稼ぎだしていたといいます。やはり幼いころから投資家の英才教育をされているだけあって普通の人とは違いますね。
ちなみには彼の会社グループカルソはニューヨークなどでも不動産投資をする他、国内でも20近くのショッピングモールのオーナーでもあります。

グループカルソはその後タバコ・自動車部品・飲食雑貨チェーンと多岐に渡って企業買収を繰り返し規模を拡大しました。特に買収しタバコ会社はグルーポ・カルソにとって豊富な資金源となり安定を築き上げます。


そこで1982年のメキシコ経済債務危機が起きます。
石油に依存したメキシコ経済は累積債務がかさんで国家破綻寸前にまで転がり落ち、国債信用力も地に落ちて通貨は下落していきメキシコはもうだめと世の中は絶望の感に陥っていました。
経済的な政府の無策や汚職はその後も続いたので、こういった弱点を見透かされて1994年にはヘッジファンドに狙われてメキシコ発の通貨危機、いわゆるテキーラ・ショックさえも起きています。

メキシコが債務危機に陥って、メキシコを代表する企業が次々と破綻の危機に追いやられていったとき、ほとんどメキシコは国として「終わっていた」状態のでようでした。

メキシコ・ペソは切り下げられて、もはやメキシコには将来がないと多くの資産家が国外に逃げていったようです。


この時期の様子をメキシコ人に聞いてみますと凄まじったようです。 なにせ通貨が4分の1まで突然下落し、一般市民は生活に困窮します。 想像してみてください。銀行の預金がいきなり4分の1になってしまうのです。またアメリカのクレジットに頼っていた企業は支払い不能になり毎日のように国内大企業の倒産のニュースが流れていたそうです。

生き残った企業もお先真っ暗で生き延びるの精一杯だった時期です。企業は次々と潰れていき、金持ちはアメリカに逃げていき、貧困層が街に溢れ、株式市場は壊滅的な大暴落に陥ってしまっていました。


しかし、そのメキシコが史上最悪の国難にさらされているそのときに、カルロス・スリムはチャンスをつかんでいました。

その経済危機の時期に、カルロス・スリムは倒産寸前の大企業の株を捨て値同然の価格で買い集めていました。

その後メキシコがようやく立ち直ったとき、底値で買った株を持っていたカルロス・スリムが、メキシコはおろか、世界でも有数の資産家になっていきました。


また1990年代に入るとメキシコには国営企業の民営化の波が押し寄せます。これは絶えず買収を繰り返して会社を大きくしてきたカルロス氏にとって、絶好のチャンスが来た事になりました。

カルロス氏はメキシコ国営の固定電話会社テルメックス(TELMEX)を公開入札によって買収します。そしてテルメックスは彼らにとってまさにドル箱となりました。

テルメックスはメキシコ国内全域をカバーする一大企業であり(現在メキシコでの国内シェア90%)、また、アメリカなどの北米圏への出稼ぎ労働者たちがメキシコ国内に国際電話を掛けるときに必ずテルメックスを経由します。国際電話では発信国の通信会社から受信国の通信会社に対して「接続料金」を支払う仕組みになっており、海外に多くの労働者がいるメキシコの状況はテルメックスにとって圧倒的に有利となります。この事により何もせずともメキシコへの国際電話がある度に、接続料金による収入が入りますので凄まじい利益となりました。

ちなみにメキシコの収入源トップ3は1位:石油 2位:観光 3位:アメリカへの出稼ぎ労働者からの仕送りと言われてぐらい、アメリカに住んでメキシコの家族のために仕送りしている人達が多いので当然家族との密な連絡に欠かせない国際電話は巨大な需要です。

カルロス氏の将来性を見る洞察力と決断力はすごいと思います。携帯電話の将来がすごいと見るや1989年には携帯電話会社テルセルを立ち上げ、固定電話、携帯電話の国内のほとんどのシェアを占めています。

ちなみにメキシコの携帯電話はとっても高く請求書が来るたびにびっくりします。メキシコの電話料金はOECD加盟国の中で最も高いようです。

それは国内をカルロス氏の会社で独占しているためで海外の通信事業の利益率11%に対し国内では65%と言われていますのでいかに儲けているかがわかると思います。
(個人的にはもっと他の企業に頑張って値段を下げてもらいたいです。)


このドル箱の通信事業とカルロス氏が若いころに設立したグルーポ・カルソも国際的なコングロマリットに成長し、製造業や販売業に限らず、太陽光発電・石油開発・水利施設・鉄道などの大規模インフラも手掛け、財閥としての地位を確固たるものにしています。

2008年には経営不振に陥ったニューヨークタイムズ紙に対して225億円の支援をし、その後少しずつ出資比率7.5%にまで増やし2012年には筆頭株主にとなります。他にも2012年には業績不振に陥っていたアルゼンチンの石油・ガス最大手YPFの株式を6.6%取得しました。


このようにカルロス氏は企業買収、大規模投資を繰り返し現在の世界トップのミリオネアの地位を築きました。

カルロス氏のすごいところはメキシコの債務危機の時に積極的に投資を行ったことから分かるように、不振に陥った状況をチャンスとして捉える力の強い人物だということです。

現在、カルロスはビジネスの第一線を三人の息子たちに任せ、第一の関心をメキシコ・ラテンアメリカにおける教育・保健や社会福祉・雇用対策への慈善事業に向けています。


例えば教育面では、2008年に彼が慈善事業のために設立したテルメックス財団とカルロススリム財団から、メキシコ国内の1400の公立学校に10万台以上のコンピュータが寄贈されました。他にもメキシコやラテンアメリカを中心に奨学金や学費補助・自転車の寄贈などの支援を続けています。個人的な寄付も含めて、約16万人の若者の大学進学を支援しました。


2011年には、複合都市開発の一部として、メキシコ、ヨーロッパなの美術品を中心に6万6000点を所蔵する入館料無料の「ソウマヤ美術館」を建設します。美術館の名前はなくなった夫人の名にちなんで名づけられ、愛妻家としての一面を覗かせています。


この美術館、建築的にも非常にユニークですのでメキシコにお越しの際は是非お立ち寄りいただければと思います。 非常に有機的な形状で美しい美術館です。建築に興味を持っているカルロス氏の意見が幅広く取り入れられた設計となっています。



健康に関する慈善事業では、2007年にラテンアメリカ周辺地域の健康問題の対策のために、カルロス・スリム・ヘル研究所を設立しました。更に2010年にはハーバード大学とMITの共同で行っているガンと肝臓病・糖尿病に関するゲノム研究に対して約58億円を出資しています。


また雇用では、その所有する事業によってラテンアメリカ全体で20万人以上の雇用を創出しているようです。


以上カルロス・スリム・ヘル氏のこれまでの生い立ちについて紹介してきました。

メキシコが誇る位世界一の大富豪の実像を少しでも掴んで頂ければ幸いです。


今回は建築からかなり話がずれましたので次回からまた建築のテーマについて語らさせていただきたいと思います。 どうぞお楽しみに!