僕が P社で仕事をしていた頃、毎年11月中旬になると千葉の幕張メッセで InterBEE という国内最大の展示会が行なわれていた。

 

※ 展示会の例

 

新製品や新機能などの展示や紹介をメインとしていたが、ある年の展示でアライアンスとして P社の DVCPRO HD VTR(当時はDVCPRO HD テープに記録されたデータを 1394 ケーブルで Mac などに読み込んでいた)に対応した MacPro の展示も行なっていた。

逆に、A社の展示ブースにも P社の DVCPRO HD の VTR を同様の内容で展示してもらっていた。

 

 

その時に起こったある出来事が印象に残っているので紹介したい。

 

僕は当時アライアンスチームに所属しており、日々進化する機能を追いかけながら、対応してもらっている各社の機器を使って、正しくデータが読み込んでもらえるかなどを検証していた。

そのスピードは早く、バージョンも細かく上がっていた。

その内容はユーザーが困らないように、 P社ビデオカメラで収録したデータが VTR を介して滞りなく読み込めて、支障なく編集作業ができることを目指したため、数百の項目にわたって確認する必要があり、読み込めないとか編集に支障をきたす場合にはすぐさま対応したバージョンを提供していた。

 

InterBEE の会場で設営していた時に新しいバージョンのデータが送られてきて、それを入れないと読み込み時にエラーが出る可能性があるとのことで、A社の日本人担当者に了解をとってバージョンを上げて動作確認をすることにした。

当然、P社では Let's Note(Windows ノートパソコン)を使用しており、送られてきたバージョンアップのデータを Let's Note を使って、A社のブースの展示台に置かれた DVCPRO HD VTR と MacPro のバージョン確認とバージョンアップ作業を行なっていた。

 

 

A社のブース責任者 Bさん(この文章がわかりやすいように、あえて外人と書きます)が烈火のごとく大声で怒りだした。

 

僕はいったい何が起こったのか理解できずに、状況を見守っていたが、ほどなく日本人担当者が来てあわてて次のように言った。

「『ブースの展示台に Windows マシンを置かないでください』と言ってます」

冷静にどう聞いても、

「ここのブースに Windows マシンを置くな!」だったが。

 

日本人担当者に、メールに添付して送れられてきたアップデータを入れる必要があると説明したが、あとで落ち着いた頃にやってくださいとのことだった。

展示会の本番は明日からで、今日は搬入と設置および機器確認にあてるのが通例で、この段階で「 Windows を置くなはやり過ぎだ」と思った。

 

しかし、あらためて A社のブース内を見渡すとデザイン性に溢れ、カラーや展示アイデアはさすがと思える内容だった。

 

※ 展示ブースの例

 

僕もこのこだわりを支持してきたわけで、不条理とは思ったが、いったん作業をやめて P社ブースに戻った。

 

当時 A社は FinalCutPro 7 というとても使いやすく良くできた編集ソフトをリリースしていた時だった。

ハードウェアも良く出来ていて、MacBookPro でも本格的に編集できた。

 

それにしても、こだわりが凄いこの「事件」は僕の頭にしっかり残っている。