2019年8月31

京都から美濃太田へ1時間57分。

わたしの45年を遡り中。


中学高校時代、そして短大時代も。

わたしには「美濃へ行く」という発想はなかった。

いわゆる追っかけはしてなくて、ひとりで(時に友人と)勝手にファンでいて、勝手に聴き、観、読み、その思いを絵に描き文章に書き、ひとり勝手に追っていた。



青いリンゴの頃は年上の従姉妹のために五郎さんの切り抜きを集めていました。そうして五郎さんばかりを見てるといつのまにか‥必然的に‥自分が惹かれていました。


それから23年の間に初めて自分で買ったレコード、初めて自分で行ったコンサート‥それが野口五郎でした。


その頃に向けてタイムマシンに乗っているような「特急ひだ25号」。

こんな日が来るなんて。

すべて『楽が来帳』のおかげ。



長良川鉄道美濃駅には11時過ぎに着き、旧名鉄美濃駅と歌碑、うだつの町並み通り、静かで美しい佇まいのそこここをじっくり眺めながら同じ通りも何度も往き来し歩く。途中、お昼ご飯にお蕎麦をいただいて。


ぐるぐる回りながらまだ時間もある、足を休めたいし、コーヒーも飲みたい。


外から見て、店なのかそうでないのか、店として、開いているのか閉まっているのか、開いているとして、喫茶店なのか美容院なのか‥


通り過ぎたあと、後ろで中から二人のおかあさんが出てきて「お茶の時間終わり」という会話が聞こえ、あ、喫茶店や、コーヒー飲める☕️と後戻り。


中に入ると、今出たおかあさんの席をお店のおかあさんがかたづけていて、その席以外を埋め尽くすおかあさんたちが、みんなわたしを見ている。ドア横のお客のおかあさんは「いらっしゃいませ」なんて言っていて、開けたドアの手を止めかたまっていると、テーブルをかたづけていた小柄でふくよか目のおかあさんがゆっくり振り返る。「すぐに振り返れんで」と。


あ、良かったですか?

と、安堵と戸惑いの合間で席についた。


埋め尽くしたおかあさんたちの地元言葉のイントネーションを心地よく聞きながら本を読んでいた。


コーヒーには他の席の方と同じように、袋詰めの丸いスポンジケーキのお菓子が添えられ、ごゆっくりの言葉に甘えてゆっくり過ごしていると、お店のおかあさんが、他の席の方に配り出した昆布茶と別の袋菓子をまたわたしのテーブルにも置いていった。


その時、お隣のテーブルのお二人が「あなたは観光?」と、話しかけてきた。

お二人とも80代後半、でもとてもお若く元気な話し声。店内平均年齢は80を超えていそう。

ここは10時半ごろから15時半ごろまで、コーヒー一杯でも過ごせる彼女たちの憩いの場。大切な席(4人テーブル)を取ってしまって少し申し訳ない。


質問責めで京都からひとりで来たことを知り、お二人の京都の思い出の数々、城下町美濃、美濃言葉‥途切れることなく向けられる話題。


わたしからはそれまで歩いた美濃の街のお話だけで、言うつもりはなかったのだけど自分の中で黙っているのも変な感じになってきて、実は旧名鉄美濃駅の野口五郎さんの歌碑‥石碑を見に来たんです、と伝えると「五郎くんの?」と、また話題が吹き出す。


(お二人互いに)石碑見た? どこか押したら音楽流れる、流れない‥、歌とバイオリンがこう(手振り)‥、それなりのが出来てる(笑)‥


思わず、吹き出しました。


88歳のおかあさんは、ご主人が美濃中学にお勤めだったとのことで、「五郎くんが中二までいて(東京に)出て行くときに送り出しの会をしたって」と話されていた。

もうひとりのおかあさんからは、テレビ番組「あいつ今何してる?」に集まった同級生さんのお一人とお知り合いとのことで、その時の裏話をされていました。

たぶん五郎さんも知らないこと‥?

他愛もないようなことだけど、お披露目はできない。ウワサはこうして広まる?

わたしも聞いてないことにします(-_-)

五郎さんとは関係ない話だよ。


そしてまたお話は‥

昔京都には日帰りで往復できるバスが出ていたとのことで、よく来られていたらしく、いろんな場所をご存知で、次々と飛び出す地名やエピソード。楽しいことには笑顔で声高く、京大に通っておられたお知り合いの学生さんの山岳事故の悲劇には辛そうなお顔で。


そしてさらに今度はふたたび美濃のお勧めをお二人して考え始めて‥


関に予約したホテルに向かう前に立ち寄った喫茶店だったけど、「行っておいで」と教えてくださったので、あかりアート館と、五郎さんの生家あたり(なんだかごめんなさい)をもうひと巡り、自分的には最後にもう一度旧名鉄美濃駅。


そして美濃市を後にしました。

まぁまたあした、明日の目的地への移動のためと京都への復路の基点のために美濃駅には降り立ちますが(^-^)



9月1日

美濃市駅前にて朝8時台にたった一本だけの美濃和紙の里会館へ向かうバス待ち。

美濃市の空気を胸いっぱいに吸って、和紙の里へ向かいます。


(今日このバスにはたくさんの方が乗られるのかと思っていたらほかにひとりの乗客。和紙の里‥へ向かうのはわたしひとり。貸し切り和紙の里会館行き?)



途中割愛😌


五郎さんの洞察力、表現力、そして寛容力‥優しさ、全てに感服いたしました。


普段は訪れる方も少ないのでしょう。バスも僅かで帰りの交通も時間が読めず、事前の京都への帰り電車に余裕を持たせたものだから、予定より1時間早く急遽入れていただいた関係者ギャラリートークもあり、あとに時間がいっぱい余った。

(ネット予約のJRは一回だけの変更可を余裕持たせるためにすでに使ってしまっていた)

美濃市駅に着いてからあとの3時間ほどどう過ごすか‥結構疲れている足としばし相談。。

美濃太田に早々向かうより、やっぱりもう少し美濃市ですごそう。



昨日一日でほぼ覚えてしまった道を少しでも時間持たすためにゆっくりテンポで歩きだした。


途中、サイフォンコーヒーのお店で

やはりゆっくりと☕️をいただく。

昨日とは違ってカウンターにいらした先客お一人が出ていかれたあと、たったひとりの静かな時間。


きのうの賑やかなおかあさんたちに囲まれたコーヒーとこのひとり静かなコーヒー。

どちらもとても美味しい美濃の町の大切な思い出となりました。


夕方になり、歩く人もまばらになったうだつの町並み通り。

まだ時間もあるけれど、そろそろお別れを。


ありがとう、城下町美濃市。


いつかまた。