「冬の運動会」が終わって、数日経ちましたが、この喪失感は何でしょう?


ふと、思ったのは、今の時代が亡くしたものが、このドラマには、たくさん描かれていたことです。


何せ今から半世紀も前のドラマです。この放送から数年後、私も上京して大学生活を送りますので、当時の東京、まして渋谷など嫌というほど見ております。


携帯やパソコンなどは勿論ないのですが、例えば北沢家の男たちは、帰宅すると必ずチャイムを押すのです。玄関を開けるのは、主婦や娘の役割だったので、鍵を持つ必要がなかったのです。


加代の床上げの日に、近所の魚屋が、尾頭付きの鯛を、塩焼きにして配達してくれました。今も魚屋はいくらかは残っているでしょうが、調理して出前をしてくれるところは、そうはありません。


靴屋夫婦は、店舗兼住宅でしたが、恐らく渋谷のガード下でしょう。繁華街から、少し外れると、まだそういう小さな昔からの店はありました。そういったところも、今は全て小洒落たショップに変わってしまいました。


その頃、私の地元には、まだセブンイレブンはありませんでした。東京でも、広がりつつあるところでした。私のアパートの近所の店は、名前のとおり、7時から23時までの営業でした。


それが次第に24時間営業になり、世の中はどんどん便利になりました。私もしょっちゅう利用します。ほとんどのことは、コンビニとドラッグストアーで用が足ります。


その代わり、まちから様々な業種のお店が消えました。個人営業の飲食店もそうです。ドラマに出てくる、寿司やうなぎ、そばなどの出前をしてくれるお店も、ほとんどありません。ウーバーならあるのかもしれませんが、出前に割高のお金を払うという感覚が、そもそも私の世代にはありません。


色々、不便ではありましたが、当時はいい時代だったと、しみじみ思います。タバコはどこでも吸えました。ちょうどバブルの数年前です。だからこそ、余計に喪失感が強かったのかもしれません。


いま、過去を描くドラマが増えておりますが、このようなクオリティの作品が、作られることはまずないでしょう。本当に、よく再放送してくれました。


※根津甚八と大滝秀治が、ふたりで座頭市の真似をするシーンがありました(大滝さんが絶品でした)が、ふたりとも勝新太郎と共演しております。そして何より、本来であれば、「影武者」で、三人は共演するはずだったのです。


これも、幻に終わってしまいました。