休憩なしで、三時間弱というのは、かなり躊躇しましたが、見たほうがよいとたくさんの方から、コメント、メッセージを頂戴しましたので、昨日「国宝」に行ってまいりました。
極道の、それも組長の息子である喜久雄は、新年会の当日に、父親を抗争で殺されます。その場に、興行の挨拶に来ていたのが、渡辺謙扮する歌舞伎役者、花井半二郎でした。喜久雄は、少年期が黒川想矢、青年期からが吉沢亮です。
新年会で、喜久雄は、余興として女形を演じていたのですが、半二郎は、その姿に喜久雄の才能を見抜いておりました。
喜久雄は、半二郎を頼って、歌舞伎の世界に身を投じます。しかし、歌舞伎の世界こそ、血統が重視される場所だったのです。極道の倅であ紀久雄は、横浜流星扮する、半二郎の息子である俊介と歌舞伎の芸を競うのでした。
ハンデを背負っているため、必死で芸を磨く喜久雄と、半二郎の直系で、坊っちゃんである俊介。ともすれぱ、俊介を悪役で描きそうなのなのですが、ふたりはとても仲が良いのです。
そんな時に、半二郎の紹介されるのが、田中泯扮する人間国宝の女形、小野川万菊です。すでに老齢でありながら、その姿、芸は、ふたりを魅了しました。まさにバケモノです。そして、田中泯が絶品です。
おんな言葉で、声質も変え、舞踏家として知られる田中泯は、見事に女形になりきっておりました。田中泯だからこそ、演じきれたのでしょう。歌舞伎を演じるシーンがある、人間国宝の女形を、ほかに誰が演じられるというのでしょう?
そして、何といっても吉沢亮と横浜流星です。
このての作品で、普通の俳優が歌舞伎役者を演じると、ともすれば芸能人隠し芸大会レベルになってしまいます。
私は、歌舞伎には疎いですが、相当修練を重ねたことくらいはわかります。何せこの映画においては、ふたりの歌舞伎のシーンは、まさにバックボーンなのです。吉沢亮が、死ぬほど練習したというのもわかります。
喜久雄は、一度堕ちるところまで堕ちます。それを仕組んだのは、やはり実の息子可愛さからでしょう。真夜中、歌舞伎のメイクのまま、絶望する喜久雄は、まるでバットマンのジョーカーのようでした。
様々な人達と出会いと別れを繰り返し、喜久雄は成長します。このあたりは、さすがに書けません。そして、この作品は、映画館で見るべきです。
ある方が、なるべく前の席で見ることを薦めてくれましたが、実際に歌舞伎座などで見ているような臨場感があります。万雷の拍手、カメラワーク、圧倒的です。
「フラガール」のときもそうでしたが、こういう舞台をとらせると、李相日監督は、本当に巧い。私もお薦めいたします。
※遠い昔、学生のころ、デートしていたとき、女の子が、「わたし、タカオが昔から好きなのです」と言われ、タカオって誰だ?と、思ったのですが、片岡孝夫、いまの仁左衛門のことでした。
彼女は、いいところのお嬢さんで、こういう人達が歌舞伎を支えていたことを思いだしました。贔屓筋というやつです。