冬になると、美味しい食べ物が出てまいります。私の地方にも、冬ならではの美味しいものがありますが、今でも記憶に残るふたつの絶品をご紹介いたします。


遥か昔、福岡に行った時のことです。冬の福岡といえば、それはふぐです。dancyuに載っていた、航空会社の支社長が推薦していたお店があり、友人8人くらいで訪れました。まだ、ネットなどが普及していない時代のことです。


ふぐのコースでお願いしたのですが、仲居さん曰く、ふぐはあくまで刺身がメインで、残りを美味しく食べるために、唐揚げとふぐちり、そして雑炊があるとのことでした。


ふぐは、例のお皿の柄が透けて見えるようなものではなく、厚みがあり、これは本当に美味しかった。地元で食べるふぐとは、まるで別物で、締めの雑炊まで全て絶品だったのですが、追加でオーダーした白子焼きが別格で、後輩が値段も知らずに、ひとり五つずつとオーダーし、仲居さんから「よろしいのですか?」と聞かれ、「そんな、ひとつ何千円もするわけないでしょ?」と答えたところ、「そんなものだですけど」と返され、慌ててひとりひとつに変更いたしました。


たらの白子しか知らない私は、これにまいりました。くせがまるでないのと、生クリームのようと例えられますが、まさにそのとおりでした。もっとも、あれは五つは食べられません。


私は、お酒を飲まないのですが、連れはヒレ酒をバカバカお代わりし、いよいよお支払となり、幹事が私のところに、すっとんでまいりました。


22万8千円。まあ、そんなものだろうと思いましたが、幹事は真っ青になっておりました。


ひとり三万弱ですから、東京ならば、このレベルのふぐは、倍近く取られても不思議ではありません。もっとも、私の外食では、未だに最高価格ではありますが。


もうひとつは、上海蟹です。これは、なんと本場上海で。


実は私は、甲殻類アレルギーなのですが、これはどうしても一度食べて見たかったのです。叔父が上海に赴任しており、予約もとってくれ、上海蟹のコースをオーダーいたしました。


甲殻類アレルギーは、実はみそが一番ヤバいと言われており、私自身、一度シャコを食べてアナフィラキシーショックを起こして、救急病院に担ぎ込まれたことがあります。


命がけですが、何かあれば中国語が話せる叔父が、なんとかしてくれるだろうと思い、茹でたものからスープ、カニチャーハンなどを食べましたが、これまた本当に美味しかった。みそが美味しいというのも、よくわかりました。


幸い、何事もなく、会計となりましたが、こちらはひとり八千円程度でした。この料理なら、むしろ安いと思ったのですが、その時叔父に言われたことが忘れられません。


「お前は、いま、この値段なら安いと思っただろ?でもな、いまの上海の人達の初任給は、二万くらいだ。そう、日本の十分の一。てことはな、地元の人達にとっては、お前たちの八万円くらいの感覚ということだ。だから、この店は、日本人で持っているんだ」と。


いまから二十年以上前のお話です。


福岡も上海も、今では夢のまた夢です。