WOWOWで放送された、「もう頬づえはつかない」を、ようやく見終えました。初めて見ます。


この作品で、桃井かおりは、その年の賞を、ほぼ総なめにいたしました。当時、桃井かおりのような女優は、ほかにはおらず、あのような気だるそうな話し方をする女性は、たくさん現れました。勿論、みなさん、タバコを吸いました。


早稲田に通う女子大生、マリコが、彼女の役なのですが、全共闘崩れの森本レオ扮する恒雄と、学生の奥田瑛二扮する橋本の、ふたりの男と付き合いがあります。


この頃、森本レオは、こういうキャラクターを演じさせれば、天下一品でした。マリコは、恒雄のほうに惹かれており、橋本とは、仕方なく付き合っているのですが、押しが強いのは、橋本のほうで、恒雄は、都合のいいときだけ現れます。


もう、全編、桃井かおりワンマンショーです。ザ、桃井かおりといった感じで、しぐさ、しゃべり方、何もかもが、世間一般が求める、桃井かおりでした。


対して、奥田瑛二(当時は、英二でした)の、まあヘタなこと。今でこそ、大ベテランの名優ですが、この頃はまだ新人ですので、酷いものでした。


逆に、マリコのバイト先の旦那を演じる、伊丹十三の存在感は、抜群です。いわゆる髪結いの亭主で、浮気がばれて、奥さんに刺されるのですが、飄々とした感じが、伊丹さんらしく、この後、彼は監督業に本腰を入れます。


お話自体は、どうということはありません。今見ると、かったるいところも多々あります。ちょうど映画が公開されたころ、私も大学生ですが、当時の大学生のほとんどが、こんな感じかといえば、それは違います。


ただ、女優、桃井かおりを見るには、これ以上のものはありません。それくらい、彼女は輝いております。